「思い込み力」からはじまった人生、再生と希望の物語。|出前館創業者・花蜜幸伸

「思い込み力」からはじまった人生、再生と希望の物語。|出前館創業者・花蜜幸伸

2022.03.02

この度、書籍『僕は夢のような街をみんなで創ると決め、世界初の出前サイト「出前館」を起業した。』(発行:ソトコト・プラネット、発売:総合法令出版、定価:本体1800円+税)を出版した花蜜幸伸(はなみつ・こうしん)氏。今では国内最大級と言われるフードデリバリーサイト「出前館」の創業者である花蜜氏に、これまでの半生と今の想いについて伺った。

発売後、即重版が決定した花蜜氏の著作『僕は夢のような街をみんなで創ると決め、世界初の出前サイト「出前館」を起業した。』

著者プロフィール:花蜜幸伸

1969年和歌山県海南市に生まれる。21歳でバイク便事業を行う有限会社アンビシャスを設立。1999年夢の街創造委員会株式会社(現社名:株式会社出前館)を創業し、2回目の起業家人生をスタート。2006年完全招待制の経営者団体「日本元気丸」を設立。各業界の経営者たちが集う月1回の会合「元気会」は、過去16年で139回の開催数を誇る。2013年特別顧問として株式会社出前館に復帰。その後、出前館株価大暴落事件により、金融商品取引法違反の容疑がかかりすべてを失う。借金10億円を抱えるなか、犬猫の殺処分ゼロの実現を目指す保護施設「ペットの里」に全精力を傾注して運営。現在、2022年9月までは執行猶予中の身ながら、さらに新しい事業を起こすべく日々奮闘している。出前館特別顧問時代に高野山真言宗にて得度。僧名を授かり、「伸行(のぶゆき)」から「幸伸(こうしん)」に改名した。

世界初の出前サイト「出前館」創業

1991年にCD-ROMや書類といったデータや品物を運ぶバイク便の会社を興し、時流に乗って従業員100人にまで成長させた花蜜氏。ところが1999年ごろになるとインターネットの普及で、データがメール添付でやり取りされるようになり、仕事が減ることが予測された。 

「そうか、これからはインターネットだ!」そう思いながら新規事業を考えあぐねていると、ふと以前見た映画のワンシーンで、主人公がパソコンでピザを頼んでいたのを思い出した。映画に登場しているのだから、当然どこかで事業化されているのだろうなと思いながら調べると、世界中どこを見渡しても料理をネットで注文する仕組みはなかった。

「誰も気付いてないんだ。ツイてる!」

なぜ誰もやらなかったのか、ろくに調べもせずにスタートしたのが「株式会社出前館」の前身である「夢の街創造委員会株式会社」。花蜜氏にとって、2度目の起業だった。

思い込んだら突っ走る「思い込み力」

事業をはじめてまもなく、なぜ誰もやらなかったのかが明らかになった。

まず、圧倒的に早すぎた。今でこそUber Eatsも当たり前の世の中だが、当時はネットにつながるまで何分もかかる時代。当然、スマホなどない。明らかに、時代を先取りしすぎだった。

そのうえ当時の飲食業界は、インターネットにまったく馴染まなかった。蕎麦屋の親父さんがインターネットのイの字も知らない状況では、加盟してもらうのは非常に難しかった。

さらに、出前という業態はネットとの相性が悪かった。たとえば中華屋の商圏はラーメンが伸びる前に届く、半径何キロのごく狭い範囲だけ。だから、たとえ1000店舗の飲食店を新規開拓したとしても、日本地図上に落とし込むと、配達対象圏はほんの小さな点にしかならず、閲覧した99.9%の人にとって関係のないサイトとなってしまうのだ。

「実際、サービスをはじめた当初は、サイト閲覧者のほとんどが配達対象圏外在住で、注文が全然入らなくて大変でした」

それでも突き進んだのは、先の映画シーンという理想に支えられ、絶対そういう未来が来るという「思い込み」の力が強かったおかげだ。

「僕は、これはイケる! という思い込みが強くて。点だって、たくさん集まれば面になると、開拓への決意を固めました」

その後、「必ず将来、こういう世界になる。そんな世界を一緒に作っていきましょうよ」「一生懸命チラシを作ってポスティングしても見向きもされずゴミ箱に捨てられる。そんな不毛な時代を終わりにしませんか?」と店舗営業に行った先々で、新しい時代の到来について力説。

この手法で、2000年には20店舗だった加盟店が、翌年には2200店舗に急増した。

株価大暴落事件勃発

2013年、出前館の社長の座を譲り完全に経営から離れ、朝からシャンパンを飲む暮らしをしていた花蜜氏だが、経営陣間で揉めごとが起きたのをきっかけに、特別顧問として復帰することに。

その後、当時の社長と冷静な議論ができる立場になる必要を感じ、また主体性を持ってこの会社と関わっていきたいと思うようになる。

そこで当時の社長と同数ぐらいの株を買い集めたところ、出前館の株を次々と売り始める人が現れた。感情的になって対抗買いをはじめた花蜜氏。「当時の僕は元気ありすぎだった」と振り返る。

だがいくら買っても売りはやまず、ついに資金が尽きてしまい、全財産を失う。

詳しくは本書ですべて明らかにされているが、結果的に歴史的な株価大暴落が起こり、花蜜氏はすべてを失った。残ったのは友人知人、証券会社に対する10億円を超える借金だけ。突然、住所不定・無職となった。

話はここで終わらない。およそ半年後、証券取引等監視委員会が金融商品取引法違反(相場操縦)の容疑で花蜜氏を捜査。続いて東京地検特捜部が在宅起訴。弁護団を結成し戦うも、執行猶予4年、罰金2000万円、追徴金約1億3000万円の有罪判決となる。

「事件としては犯罪的な要素を持ってないと自分は今でも思っており、裁判でも無罪主張を貫いたんですけど、それにしてもあまりにも派手な買い方をしたという点に関しては、引くべきところだったなと思っています」

岩手の犬猫保護施設「ペットの里」でテント暮らし

花蜜氏は現在、冬季には1日に1メートルも雪が積もる岩手の大自然下で、テント暮らしをしている。東京ドーム9個分、12万坪の敷地に2014年、自身が創設した世界最大級の犬猫保護施設「ペットの里」。キャンプ場、窯焼きピザ屋を併設した人気施設だが、そこにテントを張っているのだ。

「全部オープンにしています。大自然に囲まれて暮らすことに魅力を感じてもらえるようになればいいなと思って。テントでも過ごせるんだよっていうことを実証実験で成功させて、気軽に来てもらえる人を増やしたい」という。

「ペットの里」に寄せられる犬猫の引き取り要請に多いのが、高齢者やその身内からの相談だそう。主な理由は、高齢の飼い主が「施設に入ることになった」「亡くなった」というもの。こうした引き取りの依頼は増加傾向だというが、それでも飼い主にとってペットは家族同然。

「飼えなくなったからといって殺処分だなんて、飼い主さんからしても、あってはならないことのはず」と花蜜氏。かといって、ペットの里でどんどん保護できるかというと、費用面でそれも難しい。

そこで考えついたのが、その「元ペット」を飼育するのにかかる費用を「元飼い主」側に持参してもらえれば、人件費を充てて育てられるのではないか、というアイディアだった。そうして生命保険会社と協議を重ね、この想いを形にした保険、「ペットのための信託」が誕生した。

高齢者とペットの関係

飼い主を失ったことで、それまでの幸せな暮らしから一転、殺処分という過酷な現実を突きつけられる「元ペット」たちがいる。

その一方で、本当はペットを飼いたいけれど、面倒を見きれるかが不安で我慢している高齢者も多い。

だから、「ご年配の方に、万が一に備えた上でペットを飼っていただきたい」という花蜜氏。保護犬・保護猫の業界では、ご年配の方には譲渡しないのが決まりごとのようになっているが、「万が一に備えることができたシニアには譲渡していい」という新たな仕組みを構築した。目下の目標は、ペットを飼っていないシニア3000万人を里親にすることだ。

ペットを飼うことで、「この子のためにも寝込んでる場合じゃない!」と元気になる。生きる楽しみが増えれば、体も心も健康になる。高齢者がペットと暮らすことで元気になれば、国の医療費も介護費も削減される。まさに、いいこと尽くめだ。

ピース乾杯プロジェクト

もうひとつ、花蜜氏がはじめたプロジェクトに「ピース乾杯プロジェクト」がある。「乾杯!」「Cheers!」など各国様々な掛け声を、世界共通で「peace(平和)!」にする運動だ。

花蜜氏がピース乾杯を思いついたのは、先の取調べを受け、精神的にボロボロだったころのこと。突然ひらめき、「神が降りてきた!」と感じたそう。

みんな世界平和を望んでいるのに、世界平和に向けた第一歩目に踏み切れていないのではないか。それならまずはその第一歩として、世界平和の〝機運〟を高めることをしたいと考えた。

では二歩目は何かというと、そこはいろいろな意見がある。「まず子どもの教育が大事だ」「地球環境が大事だ」「いや、シリアの子どもたちを救うのが最優先だ」など、優先順位に関して意見の分かれるところだろう。けれども、すべてに共通して言えることがある。それは「お金さえあれば改善できることがたくさんある」ということ。

世界平和へ機運を高めて、お金がたくさん生み出せるプロジェクトができれば、ゴールまでは見通せなかったとしても、少なくとも一歩、二歩とみんなで世界平和への階段を昇りはじめることができる。「ピース乾杯プロジェクト」はこうした考えのもと、活動している。

活動が次第に大きくなってきたころ、SDGs(持続可能な開発目標)と出会った。

SDGsの17項目の説明を見ていた花蜜氏は驚いた。最後の項目にある「17.パートナーシップで目標を達成しよう」につづく説明に、「地球規模の協力関係を築き、世界平和のために提携すること」といったことが書かれていたのだ。

ピース(平和)の機運を高め、世界の様々な問題を解決しながら世界平和の実現を目指す我がピース乾杯プロジェクト以外、何が当てはまるのか。まさにこのプロジェクトにぴったりだ。今後、得た資金はこのために使おうと決めた。

光を見出だして生きていきたい

「今回、本を出版して改めて思うのは、本当にいろんな方に迷惑をかけてきたし、多くの方に助けられてきた。だから、ここからはもうちょっと恩返しをしていける人生にしていきたい。そして、もし今、どうやって生きていったら分からないという人がいたら、一回全部捨てて、岩手に来てくださいと言いたい。大自然の中で暮らしていると、きっと、今後の生きる道も見つかる。起業家にとって一番大事なのは、どん底でも普通に生きていける感覚。岩手のテント暮らしには、それが全部揃っている。そうして夢に向かって進む起業家が増えていけば、もっと活力のある日本になると思う」
 
今後、この自叙伝を映画化したいと語る花蜜氏。そこから全世界の人に世界平和の可能性について「ひょっとしたら実現できるんじゃないか」と感じてもらいたいという。花蜜氏の構想はどんどん膨らむ。

写真:増尾峰明 文:上村雅代

※上記の書籍は全国の書店、ネット書店で絶賛発売中です。
https://amzn.to/3Iw6znS