今回対談させていただいたのは、オランダ・アムステルダム在住の桑原真理子さん&果林さん姉妹。日本人の父とオランダ人の母から生まれたお二人は、東京で暮らしたのち渡蘭。日本とオランダ、2つの国で暮らしたからこそ見えた景色やウェルビーイングの捉え方の違いをお話ししていただきました。
RULE1.人生はアドベンチャーとして捉える
RULE2.何事にも好奇心を持ち続ける
RULE3.愛を持って生きる
桑原真理子(くわはら・まりこ)さん
●桑原姉妹の姉。高校卒業後、19歳の時に渡蘭。2011年、アムステルダムの美術大学、ヘリット・リートフェルト・アカデミー グラフィックデザイン科卒業。過疎地域で出会った人々との対話を元に、ドキュメンタリー形式の出版物、映像作品を制作する。
RULE1.家族を大事にする
RULE2.ゆとりを持つ
RULE3.人に囲まれて生きる
桑原果林(くわはら・かりん)さん
●桑原姉妹の妹。東京都出身。姉の真理子に続き、2010年に渡蘭。レインワードアカデミー美術大学文化遺産学科でミュゼオロジーを学び、在学中に姉・真理子と共に通訳・翻訳事務所So Communicationsをアムステルダムにて設立。メディア・教育・介護・農業・デザイン&アートなど多岐にわたる翻訳・通訳・コーディネート業務を行う。
https://www.socommunications.nl
オランダ人は自己実現、日本人は協調性が求められる
果林:コロナに関しては、もうみんなマスクは着用していませんね。
真理子:コロナ禍が約2年間もあったから、コロナが過ぎ去っても元の生活とは違うんじゃないかなって思ってたんです。でも全然。すぐにコロナ前と変わらない生活になりました。今は、コロナを感じさせるものが、街の中にはありませんね。オランダはマスク文化ではなかったので、みんながマスクをつけていた状況はやはり異様でした。日本のほうが、マスク習慣がありますよね。だからマスクも、率先して外せないんじゃないかな。日本人はルールを守るのが得意。みんなで右向け、右。みたいな。コロナ禍前から、日本は窮屈に感じていました。
フェムテックtv:日本での生活とオランダでの生活は、どのように変わりましたか?
真理子:もう全然違います。日本にいた時は「これもダメ、あれもダメ」、「こうするべき」みたいなことが多かった。日本にいたら、バリバリ働いてプライベートがないか、主婦になるか。私の独断と偏見ですが、感覚としては、女性はそのどちらかの選択肢しかないように思えたんです。就職でみんな同じようなスーツを着て集団で何かをやることは、私の選択肢にはありませんでした。
果林:真理子は学生の頃からそういうルールとか日本社会の在り方にすごく批判的だったので、なんかもうオランダに逃げた感じ(笑)。
真理子:逃げる場所があってよかった(笑)。オランダは誰かに何をやれとは言われないけど「じゃあ何したいんですか?」っていう感じ。別に何をしても誰も驚かないし、自由だからこそ、自己実現っていうのがすごく重要なんです。どういう人間であるか、何をしたいか。そこは日々、悩まされています。
果林:私もそれはすごく思う。日本では協調性が大事じゃないですか。周りと合わせたらOKみたいな。個人の意見とかをそんなに求められないし、それでなんとなくやっていけるみたいなところがあった。オランダは、実力社会っていうのかな。自分から率先的に何かやるとか、イニシアティブを取って発言するとか、自分の意見を言うことがすごく求められたんです。そこは難しいなと思いましたね。
フェムテックtv:お二人はオランダに来て、今年で何年目ですか?
真理子:私は高校卒業してすぐなので、18年目くらい。両親から「高校までは日本で過ごして。そこから先は自由にどこに行ってもいいから」と言われていたので、それまでは我慢しました。きちんと日本語や日本の勉強もできたので、そこは両親に感謝してますけどね。ただ日本の教育って、いろんな可能性が育みにくい教育だから。オランダで教育を受けてたら、どうなってたのかなとは思います。でもそこは後悔してもしょうがない。日本で受けた教育も、あれはあれですごい経験。軍隊みたいな気持ちでした(笑)。
果林:私は高校卒業後、1年間オランダに留学して、他の国にも行って、日本に戻って就職しました。和菓子を作る仕事をしてたんですが、肉体労働で……。将来的に家族や子供が欲しい願望があったので、長い目で見て何か別のプランも考えておいたほうがいいかなって思ったんです。それで母から習っていたオランダ語も改めて勉強しようと思い、再びオランダへ。短期のつもりが、今に至ります。今年で11年目くらいですね。
真理子:私も日本のインテリア会社で、半年ほどインターンシップの経験はあります。素敵なライフスタイルを提案するっていうコンセプトストアだったけど、働いている人たちにライフスタイルがなかった。激務だし、給料も安い。当時は、社内のミーティングが夜22時からのことも。ミーティングと言っても紙に書いてある事をただ淡々と読み上げるだけで、全然ディスカッションにもなってない。始業時間が9時からだったので、9時ちょうどに出社していたら「9時開始なら8時に来るものだ」と上司に言われて。「え、8時に来て何をするんですか?」って。別に歯向かうとかそういうつもりじゃなくて、単純に何をするんだろうと思ったんですよね。そしたら「心の準備から始める」みたいなことを言われたんです。「具体的に何するんですか?」って言ったら「デスクの整理整頓」だと。「私、デスクないんですけど」って言ったら「8時45分でいい」と言われました。そんな感じだったけど、会社の人はみんなすごくいい人だったんですよ。みんな私の素朴な疑問を受け取ってくれて。私は「お世話になります」とかもあんまりしっくりこなくて、初めて連絡する人にとか、全然お世話になってないんですけど!って思ってた。そういう話をすると、笑ってくれてたんです。
オランダ人は「旅行」と「インテリア」に時間を費やす
果林:私たちは自営業なので、オフィスアワーとかはあんまり関係ないんですけど。翻訳の仕事は締め切りに追われるので、もうそのことで頭がいっぱいになっちゃう。家事とか子育てが疎かになる事も多いんですよね。でもそんな時は「今日はもう子どもの時間」、「今日はもう仕事はしない」と無理矢理自分に言い聞かせます。子どもを見ながら仕事をしようとか思うと、結局すごくストレスになる。並行してやらないほうがいいなって思います。
真理子:オランダの人は世界で一番時間に厳しいというか、自分の時間と他の人の時間に対するリスペクトが大きい。みんな仕事が終わったら、そのまますぐ帰ります。同僚と一緒に飲みに行くという文化もない。飲みに行く場合は、就労時間内に会社がセッティングしてくれます。
果林:金曜の午後は、大体みんなで飲む時間だよね。
真理子:居酒屋でワイワイとかじゃなくて、オフィスで飲むみたいな。オランダの人って、プライベートもスケジュールをしっかり管理してるんですよね。だから2~3週間先までスケジュールが詰まってるんです。
果林:オランダに住む親たちは、半年~1年前から休みはここ!って確保して、旅行の予約も全部しておきます。オフィスワークの人は、職種によっては「休む時期は半年前までに言ってください」と言われるみたいですよ。
真理子:オランダの人は、インテリアと旅行にお金を一番使うんじゃないかな。家族と一緒に過ごす時間にお金を費やすんです。元々家族重視のライフスタイルが、コロナになって更に、家族との時間にありがたみを感じる人が増えたのかも。
フェムテックtv:会社の制度として、産休や生理休暇はありますか?
果林:産休や育休はあるけど、生理休暇はないですね。
真理子:育休でキャリアに影響することはないけど、女性の管理職の割合を見るとものすごく低い。それはなんでかって言うと、みんな週3~4日のパートタイムで働いているんです。ただ管理職になる人は毎日働くっていうのが求められるから、女性のニーズと合ってない。そもそも私の感覚で言うと、オランダの女性ってキャリア志向っていうよりかは、趣味も仕事も、友達も家族も、全部の関係性を充実させたい傾向がある。管理職になって、わざわざ忙しくしたくないっていうのがあるのかもしれません。それと同時に、オランダの女性は、金銭的にパートナーに依存している割合が高いんです。家のローンや家賃とかは、男性が払うスタイルが多い。女性が自立してバリバリやるメンタリティーではなく、自分のライフスタイルを充実させて、人生を謳歌したいという意識ですね。
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