低用量ピルと聞くと、副作用が心配という方もいらっしゃることでしょう。しかし、実際には副作用のリスクはそれほど高くありません。避妊を女性自身がコントロールできたり、つらい生理痛を軽減したりとメリットの多い低用量ピルの副作用について、前回に引き続き、産婦人科医の柴田綾子先生にお伺いしました。
心配のない副作用は様子見を。血栓症はすぐに服用中止
「低用量ピルの副作用はいくつかありますが、飲み始めによくあるものとしては、不正出血や頭痛、吐き気、眠気といった症状。これらの症状はマイナートラブルとも言われる軽度の症状で、ほとんどの場合、飲み続けるうちに軽減します。ただ、これは続けられないなと思った場合は、別の薬に変えることもできるので、がまんせずに医師に相談してください」と柴田綾子先生。
そのほかの副作用として注意が必要なものに、血が固まってしまう血栓症があります。血栓症は、血栓と呼ばれる血の塊が血管をふさいでしまうことで起こる病気です。詰まる箇所によって肺塞栓症、脳梗塞、心筋梗塞などの重篤な病気につながることも。それではなぜ、低用量ピルを服用することで血栓症のリスクが上がってしまうのでしょう?
「低用量ピルを飲むと、血液を固める成分が増えることにより、血栓症リスクを高めてしまうことがあります。血栓症は、低用量ピルの服用開始から4カ月以内に起こりやすいため、片脚が急にむくむようになった、強い頭痛がする、胸が痛い・苦しいといった症状が出たらすぐに病院を受診してください。
病院では血液中に血の塊(血栓)ができていないかを調べます。万が一、血栓ができていたら、すぐに低用量ピルの服用を中止してください。また、ピルは肝臓で分解されるため、肝臓に過度な負担がかかってしまうこともあります。健康診断や人間ドックを受けたときは、肝臓の数値の変化にも注意しておきましょう」(柴田先生・以下同)
低用量ピルの服用を中止せざるを得ない場合は、漢方薬やミレーナ(子宮内避妊リング)、ディナゲスト(黄体ホルモン剤)のような血栓症のリスクがない方法で月経困難症を改善することができますので、産婦人科医に相談してみましょう。
低用量ピルの適切な飲み方。万が一、飲み忘れてしまったら?
「低用量ピルは、1日1錠、毎日決まった時間に服用することで、排卵を抑制して高い避妊効果を得られる他、ホルモンバランスを整え、生理痛の軽減や月経前症候群(PMS)の緩和、にきびや肌荒れの改善、生理日の調整など多くの効果を得ることができます」
万が一、飲み忘れてしまった場合、1日(1錠)であれば気づいた時点で飲み忘れた分を服用し、その日の服用時間に再度1錠服用します。もしも飲み忘れに気づいたのがいつもの時刻に近ければ、2錠を一緒に服用しても問題ありません。
「2日(2錠)連続で飲み忘れてしまった場合、避妊効果が若干下がることが懸念されます。次の2つの方法があります」
①気づいたときに2錠服用する(1日2錠以上は服用できません)。翌日から1日1錠の服用を継続しますが、7日間連続で服用するまではコンドームなどの避妊法を併用する。
②次の生理(出血)がくるまではピルの服用を中止し、次の出血がきたら低用量ピルの服用を再開する方法。
医師によって判断が異なることもあるので、迷ったらかかりつけ医に相談してください。
低用量ピルの休薬期間って?
「休薬期間には生理のような出血が起こりますが、ほとんどの方はもともとの生理よりも痛みや出血が少なくなります。ピルを飲み忘れなく服用を続けていれば、休薬期間も避妊効果は続いています。この期間はストレスをためないように心がけ、ゆったりとリラックスして過ごしてください」
最近のLEP(月経困難症の治療用ピル)では、120日や77日連続でピルを服用し、生理(出血)の回数を2~3ヶ月に1回に減らすものもでてきています。休薬期間は、低用量ピルの種類によって変わってきます。効果を妨げないためにも、処方された低用量ピルの休薬期間をしっかりと理解しておきましょう。
服用期間のお酒はOK。喫煙や他の薬との相性は?
「お酒を飲み過ぎて嘔吐や下痢をした場合は、薬の成分が十分に体に吸収されず、効果が薄れてしまいます。また、お酒を飲み過ぎることでピルを飲み忘れることも。お酒は適量を心がけて下さい」
一方、喫煙には注意が必要です。「低用量ピルの副作用の一つに血栓症があるとお話しました。喫煙は、特に血栓症のリスクを高めるため、習慣的に喫煙をしている方においては、処方を慎重に検討する必要があります」
喫煙は血栓症のリスクを高めるため、低用量ピルの服用中は禁煙することを強くおすすめします。
持病などで長期にわたって他の薬を飲んでいる場合、低用量ピルと飲み合わせが悪いものもあります。
「抗てんかん薬やうつ病の薬などは、低用量ピルの分解を早めたり、成分の吸収を抑えたりすることで、低用量ピルの効果を弱めてしまう可能性があります。また、熱を下げたり、痛みを和らげるアセトアミノフェンと併用すると、低用量ピルの作用が強くなり、副作用が出やすくなります。サプリメントでは、精神安定に効果のあるセントジョーンズワート(西洋オトギリソウ)も注意が必要。併用することで低用量ピルの効果が弱まることがあります」
薬によっては、併用することで低用量ピルの効果が変わったり、併用した薬の効果が変化してしまうことがあります。そのため、低用量ピルと他の薬を併用する場合は、受診時に必ず医師に相談しましょう。
将来、不妊症になるリスクは?
「低用量ピルの服用を中止すると、3か月以内には自然な月経周期を回復し、排卵が起こるようになります。そのため、低用量ピルを服用したからといって不妊になるという心配は必要ありません。万が一、しばらく経っても生理や排卵が元に戻らない場合は、産婦人科医に相談してください。
低用量ピルは、女性の生理の悩みを改善できる一つの手段です。もしも生理のことで困っていることがあったら、一度トライしてみるといいでしょう。産婦人科に行ったことがないという人は、話を聞くだけでもいいのでお近くの産婦人科で相談してみましょう」
低用量ピルの処方は産婦人科や婦人科が一般的ですが、内科やオンライン診療で処方してもらうことも可能です。オンライン診療によるピルの処方を希望する場合は、定期的な婦人科検診を受けた上で活用しましょう。
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寳田真由美(たからだ・まゆみ)●編集者、ライター。大学卒業後、出版社や編集プロダクションに勤務。情報誌や女性誌、旅行誌などの編集を経て、2000年よりフリーランスで活動。現在は、主に女性のライフスタイルや健康、医療記事の編集・執筆などを行う。いま一番はまっているのは、愛犬と旅するためにはじめたキャンプ。