MENU

Contents

日本のローカルを楽しむ、つなげる、守る。

Follow US

SDGs

「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」(第12回選定)選定者決定【特別賞‐前編】

  • URLをコピーしました!

「強い農林水産業」と「美しく活力ある農山漁村」の実現に向け、農山漁村の地域資源を引き出すことで地域の活性化や所得向上を目的にした取組が日本各地でおこなわれています。農林水産省では、その優良な事例を「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」として選定し、全国へ発信しながら他地域への展開を図っています。第12回となる令和7年度は、「全国454件」の応募の中から「30件(27団体と3名)」が選定されました。その中から、今回紹介する特別賞は審査にあたった9名の有識者懇談会委員がそれぞれ選出し、命名した賞です。ソトコトオンラインでは、各受賞者を取材し、取組の内容やこれからの目標について伺いました。

目次

未来を紡ぐ共創の環賞
(あん・まくどなるど委員―上智大学アイランドサスティナビリティ研究所所長)
『NPO法人愛のまちエコ倶楽部』

環境活動から新規就農支援、生業づくりへと発展

菜の花エコプロジェクトは、廃食油を回収してつくるリサイクルせっけんやバイオディーゼル燃料の活用、地域で栽培された菜種から搾る菜たね油の地産地消など、暮らしの中で誰もが参加できる循環型の仕組みを築いてきた取り組みです。環境活動を出発点として、農業の担い手不足や地域経済といった課題解決への挑戦へ発展し、新規就農支援や生業づくりへ広がっていきました。私たちは人と資源、お金が地域内で循環する、持続可能な地域づくりを実践しています。

地域課題の解決を目指して生まれた菜たね油「菜ばかり」

菜の花エコプロジェクトは、びわ湖の水質問題をきっかけに環境活動として始まった取り組みですが、これまでに地域の課題に応じて変化し、拡大してきました。たとえば廃食油を活用したバイオディーゼル燃料の製造が進むなかで、「食用油から地域でつくれないか?」という声が上がり、菜種栽培が本格化した…という経緯も。その菜たね油「菜ばかり」はふるさと納税の返礼品にもなり、多くの場所で愛され手にとっていただいています。「菜ばかり」をきっかけにこのプロジェクトのことを知ってもらえるようにもなってきました。

NPOならではの柔軟性を活かしながら、20年もの年月、行政や地域の人たちとの協働でこの循環を動かしてきました。菜種農家や刈取りオペレーターさんとも、密にコミュニケーションを取っています。当初100万ほどだった菜種油の売上は現在700万ほどとなりました。その売上は農家にしっかりと種子代として還元することを意識しています。地域の人々との地道な関係性構築と、ただの環境活動ではなくコミュニティビジネスとして、お金も回る仕組みづくりを意識してきた結果、事業を推進することが出来ていると思っています。

次なる目標は「地域に生業を生み出すこと」

愛のまちエコ倶楽部の次なる挑戦は、「地域に生業を生み出す」ことです。その一つとして、地域と暮らしの拠点「だれんち」では、都市部からの移住希望者や新規就農希望者などの玄関口となるようなゲストハウス運営をおこなっています。ここから地域の新たな担い手を増やしていきたいと思っています。また「だれんち」の隣に新たに設置される農産物加工所の新規プロジェクトでは、地域の農産物を活かした食品加工を行い、地元で働く場を創出するとともに、地産地消の仕組みを強化します。今後も、誰もが具体的に持続可能な暮らしを実践できる場づくりをしていきます。

「ICTが山林を救う」で賞(今村司委員―広島テレビ放送(株)代表取締役社長)
『庄内赤川土地改良区』

子どもたちへの農村環境教育と新たな技術「ICT」の導入

庄内赤川土地改良区では、地元の小学生らを対象とした「農業水利施設探訪」、「田植え稲刈り体験」、農業用調整池に迷い込んだ魚を川へ帰す「お魚引っ越し作戦」などのイベントを開催しています。農村環境教育の場として町の広報誌に取り上げられるなど、地元の皆様からご好評を得ています。他にも、私たちの活動や地域農業を未来へつなげるために、近年話題となっているICTを活用し、GPSによる所有林野の3D図化や、国営ICTモデル事業により農業水利施設とスマート農業の連動を実践するなど、新たな技術を積極的に導入しています。

暮らす人でさえ気づいていない農山漁村の魅力を発信

活動を通じ、土地改良区の役割や農業水利施設の機能について、地域の皆様からの理解が一層深まったことを実感しています。ICTを活用したスマート農業の取り組みは、実施以降、県内外から延べ千人を超える方々が視察に訪れるなど、高い関心を集めており、他地区においても大規模な設置事業が展開されるなど、スマート農業の推進に大きく寄与しております。これらの成果により、関係する組合員や本区職員も、新たな技術を積極的に取り入れる機運が高まり、円滑かつ効果的な土地改良事業の推進にも好影響をもたらしています。

本区は、平成17年に3つの土地改良区が新設合併し設立されました。今年、20周年という節目を迎えます。これを記念し、今までの歩みをまとめた記念映像を制作しましたが、ドローンにより上空から捉えた四季折々の庄内平野の美しい田園風景は、ひときわ印象的で、本地区で農業に携わる方々からも「誇らしい」との声を頂戴するなど、大変ご好評をいただきました。農山漁村には、暮らす人々でさえ気づかない魅力がまだ数多く残されており、そうしたものを目にし、また体験できる機会を今後も提供していきたいと改めて実感しました。

今後はICTスマート農業についてさらに周知できるような取り組みを

今後も本区が行うイベントを通じて、継続して若い世代に土地改良区の役割を教え、広めていきたいと考えています。また、豊かな農山漁村の環境を守るために、電子図化した林班図を活用して行う所有林野の健全な維持管理や、近年深刻化する農業の担い手不足に対する解決策の一つとして注目を集めるICTスマート農業について、さらに周知できるような取り組みを検討しています。

フォトジェニック賞
(織作峰子委員―大阪芸術大学教授、写真家)
『八米(HACHIBEI)』

お花畑に多様な人々が集い、学び、働き、地域の価値を再発見する

八米お花畑プロジェクトは、花を咲かせることだけではなく、咲いた花を起点に地域の自然・人・仕事が循環する仕組みを作っています。耕作放棄地で蜜源植物を育てることで、ミツバチが集まり、そのミツバチや副産物のハチミツが農業や環境を支えています。さらに、福祉作業所や保育園、大学等の教育機関、行政とも連携し、多様な立場の人が関わる場所にもなっています。八米のお花畑は「眺める場所」ではなく、人々が集い、学び、働き、地域の価値を再発見する場所です。農業を閉じた生産の現場から、明るい未来をひらく社会の装置へと変えていく。そのプロセスこそが、このプロジェクトの一番の魅力だと考えています。

特別な資源がなくとも風景や地域の価値は更新できる

私たちが企画するフォトコンテスト等のイベントをきっかけに、これまで作業の場でしかなかった花畑に、県内外から訪れる人が増えています。SNSを通じて「今年はいつごろ花が咲くのか?」「友人を連れて行きたい」と声を掛けてもらえるようになり、風景が“共有される価値”として意識され始めました。また、プロジェクトメンバーも、活動を通じて農作業は一人で完結する仕事ではなく、人や社会とつながることで広がっていくものなのだと実感するようになりました。福祉作業所や子どもたちと共に作業する中で、農地が誇れる場へと変わっていったことは大きな変化です。特別な資源がなくても、人の関わり方次第で風景や価値は更新できるのだとも実感しました。阿賀野市の里山には、未来につながる可能性がまだまだ眠っていると感じています。

誰かの喜びが誰かの力になる、お花畑の笑顔の循環

ありきたりですが、花畑を訪れた人たちの笑顔が活動のモチベーションです。季節ごとに咲く花を前に、立ち止まって喜んでくれる姿や、「来てよかった」という一言は、私たちだけでなく、種まきや他の作業に関わってくれた全員の励みになっています。準備や手入れの大変さがあっても、その笑顔を思い出すと、また次へ進もうと頑張れます。お花畑プロジェクトには、誰かの喜びが別の誰かの力になる、そんな循環を生み出す力があると感じています。プロジェクトに関わる人と訪れる人の想いが重なり合うことで、八米お花畑プロジェクトは地域と共にこれからも生き続けていくのだと思います。

今後は、プロジェクトをただ広げていくのではなく、八米という組織の中核を大切にしながら、地域や外部の人・団体と関わり、育てていく形を目指していきたいです。これまで共に歩んできた農業、福祉、教育、観光との連携を土台に、次の担い手が自然と育つ環境を整えていきたいと考えています。

優秀賞・ビジネスモデル賞
(田中里沙委員―事業構想大学院大学学長)
『株式会社ウミゴー』

テクノロジーと対話で釣り場の減少問題を解決

株式会社ウミゴーは、釣り場が減少し続けている現状に対して、「禁止」ではなく「仕組み」で解決できないかと考え、活動を続けてきました。単に釣り場を「開く」ことを目的にするのではなく、地域・漁協、釣り人が無理なく共存できる状態を目指しています。そのために開発したのがアプリ「UMIGO」です。アプリ内のメインサービスである「海釣りGO」では、利用管理や決済を行い、現場では巡視や対話を重ねることで、運営負担を抑えながら安全と秩序を保つ仕組みを構築してきました。テクノロジーを主役にするのではなく、地域の合意形成や、継続的な運営を支える道具として使用している点が、ウミゴーならではの特徴です。

他団体との相互連携で地域を盛り上げる

取り組みを続ける中で、釣り人に対する地域の見方が少しずつ変化してきました。港が清潔に保たれ、巡視体制が整ったことで、地域住民も安心して歩けるようになったという声をいただいています。また、設備や安全対策への再投資が可能になり、地域にとって実感のある改善が生まれました。漁港や海の風景、漁業者の営みそのものが大きな地域資源であり、捉え方次第で価値が広がっていくことを実感しています。

株式会社ウミゴーの活動は、漁協や町役場の強力なバックアップに支えられています。また、「海釣りGO」だけでなく、「ツッテ西伊豆」や「西伊豆&ANGLER」など、釣りを起点とした取り組みが他団体によって展開されており、相互に連携しながら地域を盛り上げています。地域全体で町の未来を考える。その一員として活動できていることが、活動のモチベーションとなっています。

西伊豆で得た知見を、他地域の海にも展開していきたい

今後は、西伊豆での実践を通じて得られた知見を、他地域にも展開していくことを目指しています。釣り場管理の仕組みを起点に、磯遊びや漁業体験、環境学習など、海と関わる多様な体験へと広げていく構想も進めています。単発のイベントではなく、地域にとって「続いていく事業」として根づく形を模索しながら、各地の実情に合わせた実装を重ねていく予定です。

誰もが輝く賞
(永島敏行委員―俳優、(有)青空市場代表取締役)
『株式会社スタディア』

伝統文化「チャグチャグ馬コ」の保存と継承に深く関わる就労継続支援B型事業所

株式会社スタディアは、農業や伝統文化、福祉の連携による取り組みを地域で進めてまいりました。伝統文化である「チャグチャグ馬コ」の保存・継承のため、農耕馬の管理、装束づくり、代かきイベント主催、新しい馬の受け入れなど、馬と連携した地域貢献活動を行っています。農業、福祉、文化、教育、観光といった一見異なる分野が、「馬」という存在を軸に一体となって動き出していることが最大の魅力だと感じています。地域の課題に対して、行政や企業、障がい者、地域住民、子どもたちがそれぞれの立場で関わりながら、「共に支え合う循環の仕組み」を構築できている点に、魅力と手応えを感じています。

職員も、施設利用者も。地域の多様な人々を巻き込む取り組み

取り組みを始めて以降、地域内外問わず様々な企業やメディア、行政関係者の皆さまから多くの関心と協力をいただくようになりました。これまでは法人内で完結していた活動が、外部からも支援されるようになり、私たち自身もその価値を再認識する機会になりました。職員だけではなく、施設利用者(障がい者)のみなさんも、自分たちのやっていることに今まで以上に誇りと自信を持てるようになりました。また、この取り組みを通じて、これまで見過ごしていた自然や未活用資源の魅力がまだまだあることに改めて気づかされました。

事業推進の一番の秘訣は「みんなを巻き込むこと」だと感じています。例えば馬耕体験や子ども向けのワークショップ、地元食材を活かしたイベントなど、誰もが関われる“入口”を意図的につくることで、地域にいる多様な人たちが“関係人口”になっていきます。それぞれが「自分ごと」として関わることで、事業が自立的に回り始める感覚があります。

障がいのある方々が主役となるような仕組み作り

今後は「チャグチャグ馬コ」の文化を次世代へ継承するため、馬が活躍できる場面をさらに増やしていきたいと考えています。具体的には、観光施設での馬車・馬搬体験、地域資源を活かしたアートとの連携、宿泊者向けアクティビティなど、観光資源としての展開です。

また、馬耕による米づくりや堆肥活用を軸にした「ストーリー性のある農業」を進め、地域農業のブランド化と販路拡大にも取り組みたいと思っています。これらすべてにおいて、障がいのある方々が主役となるような仕組みをつくり、彼らのやりがい、所得向上、一般就労へのステップアップを一体で実現できるモデルを目指します。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね
  • URLをコピーしました!