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北海道・松前町と東急不動産がタッグを組むからこそ描ける、再生可能エネルギーとともにある未来のビジョン。大逆転の発想から生まれたまちづくり。

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北海道最南端にある松前町では、風という資源を活かしたまちづくりを、東急不動産とタッグを組んで行っています。その背景と思い、未来に描くビジョンとは? 若佐智弘松前町長、東急不動産松前事務所所長、関口冬樹さんに、「ソトコト」編集長指出が話をうかがいました。

目次

再エネを起点に広がる、まちづくり。

北海道最南端に位置する松前町は、道内唯一の城下町で、桜の名所として、春になると多くの人が訪れる場所。郷土の特産品「松前漬」を知らない人はいないはず。そんな松前町は、今再生可能エネルギーを中心としたまちづくりでも注目されています。2019年、東急不動産が12基の大型風車を備える「リエネ松前風力発電所」を運転開始したことをきっかけに、松前町と東急不動産は協働をスタート。同年、再⽣可能エネルギーを活用した地域活性化に関する協定書締結を皮切りに、官民連携をした様々なまちづくりを行っています。

指出一正(以下、指出) 松前町は全国でも珍しい、風を活かした、再生可能エネルギー(以下、再エネ)を活用したまちづくりを行っていらっしゃいます。こうした方向に舵を切られた経緯を教えてください。

若佐智弘(以下、若佐) 北海道の日本海側は冬場の北風が本当に強いところで、風力発電には最高に適した場所といわれています。けれど、松前町の元々の基幹産業は漁業なので風が強いと海に行けない。

元々は厄介者だった強い風がメリットを生むというのが再生可能エネルギー。自分たちの弱点を強みに変えるという転換をしてやっていけないか。再エネを全国で取り組む東急不動産に地域に入ってもらい、一緒にやることは大きなチャンスではないかと、思い切って舵を切りました。

指出 東急不動産といえば、都市型のまちづくりを手掛けているイメージがあります。松前町にどのようなポテンシャルを感じて協働を行うようになったのでしょう。

関口冬樹(以下、関口) 松前町のポテンシャルは、ひとつは再エネ事業にとって全国トップクラスで風の条件がいいこと。特に冬場は安定した季節風が吹いて、事業的に有望な立地です。もうひとつは、城下町や松前漬けなど全国的な知名度があることです。でも、その一方で人口減少など乗り越えないといけない課題もいろいろあります。

松前町にある「リエネ松前風力発電所」は、我々の再エネ事業において、大規模風力発電の第一号です。当社はまちで事業を展開していくにあたり、課題を抱えている自治体と一緒にまちづくりモデルを新しくつくる、というチャレンジをしています。松前町とは2019年に風力発電の運転を開始した後、地域活性化の協定を結ばせていただき、2020年に事務所を開設。その後真に地域に根差した企業となるために土地を購入して、地元の人にもご活用いただける地域共生型拠点「TENOHA松前」を2024年につくりました。

当社が自分たちの土地と建物をもち、事務所を開設しているのは、全国でも東京と大阪、そしてここ松前町だけなんです。

指出 すごい。松前町が2大都市に並んでいます。

関口 松前事務所では地元の方を採用し、活躍してもらっています。当社のこと、再エネのことをご存じない地元の方を雇用し、事業を回すというところは、我々としても大きな挑戦でした。でも、そうした近い関係性で協働することをご評価いただいて、2023年には、まちの将来のビジョンを官民共同でつくらせていただいたり、松前町内の小中高での再エネ教育にも携わらせていただいたりしています。

2025年には松前町と当社の共同出資で「松前再エネ電力株式会社」という地域新電力を立ち上げました。地域内の使用電力を100%再エネでまかなう「RE100まつまえ」(*)の実現に向けて、取り組みを進めているところです。

*「RE100まつまえ」
脱炭素化を通じて松前町が目指す将来の姿を描いた構想。町内で発電した再エネを町内で活用し、エネルギーの地産地消による循環を生み出すことで、地域の経済や日々の暮らしを支え、持続可能な地域社会の形成を目指す。こうした取り組みを通じて、次世代に誇れる脱炭素社会の実現と、将来にわたって暮らし続けられるまちづくりを目指している。

指出 関口さんは松前町に赴任する前は、渋谷という世界を代表するエリアで、まちづくりを行ってきました。そうした経験を踏まえて、都市でのまちづくりと、松前のような中山間地域にある市町村でのまちづくりは同じなのか、それともまったく違うものなのかということに興味があります。

関口 土地の違いはあれども概ね同じだと思っています。土地に関しては権利者がいらっしゃって、共有されたり相続されたりという事情があります。それらを解きほぐし、我々の事業へのご理解をいただきながら、土地を譲っていただいたり貸していただいたり。そのあたりは都市のビルでも、松前の風力用地でも変わりはありません。

さらに、周辺の方々、松前ですと町内外の方々、施工業者さんや役場の方々に対して、この建物ができることによって町全体として影響がどうなるのか、などを事前に丁寧にご説明してご理解いただくということは、大型ビルも風力発電も一緒です。そして建てたら終わり、ではなくて、建ててからも関わること、その中で課題をひとつでも多く解決していくことが、きちんとしたまちづくりだと思います。そのやり方は、渋谷で培ったノウハウも活かされています。

とはいえ、人口減少などの課題をどう解決していくか。我々にとって、松前事務所は単なる再エネ開発拠点にとどまらず、再エネ×まちづくりの実証拠点として事業を拡大しながら町の抱える多くの社会課題を解決する目的を抱えた「最先端のまちづくり拠点」のひとつです。

「リエネ松前風力発電所」の風車の下に広がる「ReENEウインドファーム松前」には、季節の花や植物が植えられる。
「ReENEウインドファーム松前」には、小学生のデザインを地元木材で再現したベンチが並ぶ。「カザグルマプロジェクト」では子どもたちが制作したオリジナルカザグルマが展示され松前にしかない風景がつくられた。

指出 今年に入ってからは、人材育成の連携協定を締結しました。松前高校卒業生を東急コミュニティーの技術職として採用・育成、実務経験を積んだ後、希望する場合は松前町にUターンできるほか、再エネ関連企業の見学やインターンシップなどの就業支援、小中高一貫の教育プログラムを行うというすごいシステムです。当初からこういう計画はあったのでしょうか。

関口 学校の授業で風車見学会を行ったり、我々や招待したゲストが学校に行って出前授業を行ったり、というようなことはやっていましたが、そのなかでだんだんと「もう一歩なにかできないか」を考えるようになりました。

松前町の子どもたちは、町外の人との接触がかぎられてしまうこともあり、我々の展開する再エネ事業で就職の道をつくれないかと考えました。そして、風力事業を一緒に行う「シーメンス・エナジー」さんに、松前高校の卒業生を雇用してほしいとお願いしました。一般的には大学卒が入社条件にありましたが、地元高校生の雇用についてご理解を示していただき、なんとか採用にいたる道ができまして、一昨年度と昨年度一名ずつ社員として雇用していただきました。

若佐 そのニュースは本当に嬉しくて、私も大喜びしました。松前にいて就職できる会社が見つかるのは喜ばしい変化です。

松前高校は今大きな転換期にあって、令和7年度から全国募集を始めました。というのも、北海道の道立高校は、入学者が2年連続で10人を切ると廃校になってしまうのです。何人の応募が来るか心配でしたが、地域の歴史や再エネのことを学ぶ「松前学」という授業プログラムが評価されたのか、定員まで応募がありました。今、次年度に向けて、24人が生活できる寮を計画しているところです。

高校を卒業すると、外に出てしまう方がほとんどでしたから、地元に残っても仕事がある。がんばれば地元に残ることもできるということを広げていきたい。一度はまちの外に出ても、帰ってくることができる地域にしたいと強く思っているところです。

関口 再エネ事業と一口で言っても、エネルギーをつくるところもあれば、メンテナンスも必要だし、送配電のシステム構築などいろいろあります。そういうことを知ることで、興味にもつなげていってほしい。

再エネ事業に親しんでもらい、子どもたちに刺激を与えることで、若い人が松前でも仕事を持ち、暮らしていけるという可能性を見せていきたい。子どもたちの未来に少しでも貢献したいと思っています。

2026年3月12日「再エネ次世代人材育成推進協定」が、松前町、松前町教育委員会、北海道松前高等学校、東急不動産4者で締結された。写真は左から、東急不動産環境エネルギー事業第二部統括部長 加藤佳郎さん、若佐智弘松前町長、北海道松前高等学校 濱名一博校長、松前教育委員会 宮島武司教育長
締結式には5社のパートナー参画企業(清水建設、関電工、三菱電機、シーメンス・エナジー、日本気象協会)も参加。

指出 今僕たちがお話しをさせていただいている「TENOHA松前」はすごくいい施設だと思っています。カフェスペースではコーヒーの香りが漂うなか、まちの人や旅人が居合わせる。そこにバスを待つ機能もある。人やコミュニティを結ぶ「関係案内所」として機能していると感じました。

この場所ができたり、東急不動産と一緒にプロジェクトを進めたりするようになって、まちのみなさんに変化はありましたか?

若佐 「TENOHA松前」は居心地がいいので、多くの人が訪れるのですが、一番利用しているのは小学生です。私が見ていて驚いたのは、たまたま居合わせた旅行者に対して、小学生が「どちらからですか」「お茶いかがですか」と話しかけ、おもてなしをしていたことです。しなくてはいけないという義務感ではなく、純粋な気持ちでその言葉がでてきたのでしょう。この施設で、町の外から来る方々と触れ合うことで、感謝の気持ちを伝える。そのくらい意識が変わったということですよね。

関口 我々も自分たちの事務所だけ建ててもしかたがない、こうやって地域に開いた施設にすることが大事だと思っていて、バスの待合所という大切な機能を託していただいた信頼関係の中、みなさんに使ってもらえる良い意味での「たまり場」にしたかった。最初はコワーキングスペースとしていたけれどまだあまり需要がなかった。そこで、利用者からの声でバスを待つ人や近所の人が気軽に集えるカフェが手薄なことに着目し、コーヒーや手づくりのスイーツを楽しんでもらえるカフェ空間に変えました。すると、昼間はおとなたちに使ってもらって、夕方からは子どもたちで賑わう。一日中賑わうサイクルができて、店に立つこともある僕も「TENOHAのおじさん」と呼ばれるようになったんです。

指出 世界的なまちづくりの潮流として、隣り合う人や地域がどう関係を築き、ともに盛り上げていくかという「ネーバーフッドデザイン」が広がっています。今回の取り組みでは、個人や住民同士にとどまらず、行政と企業のあいだにも、そうした関係性が見て取れました。

かかわり続けることで未来をつくる。

指出 再エネを中心に、ここまで入り込んで協働する官民連携というのは、僕も他であまり見たことがありません。

若佐 北海道はいろいろな地域が再エネ事業に取り組んできています。松前町においても、まだまだできることはあると思っています。将来に向かって、東急不動産のかたがたの思いを受け止め、子どもたちと夢を語り合いながら、いろいろなことにチャレンジしていきたいですね。松前の開発はずっと終わらないと思うので。

指出 すごいですね、サグラダファミリア規模のロングプロジェクト。長くかかわり続けることは、まちづくりにおいて最も大切なこと。その実践をまさにやられています。

この両者の取り組みは、地域創生のお手本のひとつだと僕は考えています。これから数年先、さらに20年、30年後、まちはどのようになったらいいか、企業としてどのようにかかわっていくか。今後のビジョンを教えてください。

若佐 今、取り組んでいることは数年で完結するものではありません。とくに人材育成は、小学生が働くようになるまでだから10〜20年スパンで考えなくてはならない。答えがすぐに出るものではありませんが、再エネの取り組みは、今後絶対に必要なものです。まち単独でやっていくのは難しいですが、地域と企業が協働してひとつの目標に進むことによって、新たな発想も出てくるし、そこに雇用の場も生まれてくるでしょう。

こうした持続可能なまちづくりを行うことが地域を守ることとなり、ここをふるさととして生まれ育った人がいつでも帰ってこられる。この取り組みを、継続して行っていかねばならないという思いを強くしています。

関口 町長がおっしゃっていた持続可能というキーワードのとおり、我々も松前町に根ざした存在として関わり続けることが、ひとつの大きな目標です。再エネ発電所を作って終わり、ではなく、いかに伴走し続けられるか。松前町では来年の春には発電風車を12基稼働させて24基となり、さらに当社の風力発電重要拠点となる予定です。併せて町の悲願である町内消費電力を100%再エネでまかなう「RE100まつまえ」を達成するために当社の総力を結集して、新規の陸上風力発電施設開発から電力小売に至るまでの地発地消のシステム構築を、全国に先駆けてつくっていきたいと考えています。

さらに、松前町で再エネ事業の担い手が育てられる受け皿づくりと教育をがんばっていくこと。同時に、電気は「地発地消」が一番効率が良いので、電気を使う産業誘致や事業創出についても役場の皆さんと取り組みたいと考えています。そうすれば雇用の受け皿が増え、定住人口の増加につながりますので。松前町は再エネの事業環境として非常にいい立地ではあると思うので、その再エネ電気を活かして、いろいろとできることを考えていきたいです。

そして、こうした再エネを中心とした地域での取り組みは、今後必要とされていくもの。官民連携で取り組む再エネ事業や、新たな担い手を育成するためのロールモデルとなるよう、松前という課題最先端の場所でいろいろなチャレンジをしていきたいです。

指出 おふたりの話を聞いて、100年先を見据える長いスパンで未来を考えた取り組みが進んでいると感じました。目の前のことも大事ですけれども、先のことを考える大きなビジョンで協働しているのが松前の魅力のひとつだと思います。

お話を聞いた人

わかさ・ともひろ●北海道松前町長。副町長を9年8カ月務めたのち2024年より現職。再生可能エネルギーを軸としてまちづくりを推進している。松前の好きなところは、歴史、文化、食、自然。「私も一度地元を離れて戻ってきたもので、松前にいるときは当たり前だった目の前の海やまぐろの味、松前の桜など、離れて強く思いました。そうしたものをしっかり守って、後生に伝えていきたいです」。
せきぐち・ふゆき●東急不動産松前事務所所長。渋谷の再開発を手掛けたあと、2022年から松前町でまちづくり事業を担当。TENOHA松前の運営責任者。松前の好きなところは、人と歴史と自然。「すごく温かくて、いい人が多くて、我々と一緒にまちづくりに関与してくださる方が非常に多い。北海道で一番古い歴史をもつところ、海と山の自然がきれいというのも自慢です。でも、やっぱりいちばんは人につきます」。
さしで・かずまさ●『ソトコト』編集長。観光以上・移住未満の新しい地域との関わり方である「関係人口」の第一人者として、ライフワークと取材を通じて訪れた数多くの地域の知見を活かし、地方自治体の関係人口創出講座の総合監修やメイン講師、官公庁の委員などを務める。松前の好きなところは、TENOHA松前の人と人とが出会う時間。まさに関係案内所。「TENOHA松前のコーヒー。輝く津軽海峡を眺めながら浅煎りの“風”をいただきました。美しい透明な川と松前のまちと海の水循環もよく、渓流に釣りをしに訪れたいです」。

東急不動産と松前町の取り組み

ReENE
東急不動産が全国で展開する再生可能エネルギー事業。北海道をはじめとした全国で太陽光発電所や風力発電所を開発・運営し、地域特性を活かした電力供給と地産地消を進める取り組み。
https://tokyu-reene.com

TENOHA松前
2024年5月開業。東急不動産の松前拠点を活用した「まちの駅」で、カフェやバス停機能を備える。再生可能エネルギーの取り組みとともに、地元住民や来訪者をつなぐ交流拠点となっている。
https://tenohamatsumae.com

ReENEウインドファーム松前
「リエネ松前風力発電所」の土地を活用し、農業・花畑・遊歩道を備えた体験型ファームとして2023年9月開園。再エネの学習や地域イベントを通じ、発電とまちづくりをつなぐ交流拠点となっている。
https://windfarmmatsumae.com

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