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潮田登久子写真集『マイハズバンド』。豪徳寺で暮らした家族の物語を堪能するフォトブック

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目次

洋館で暮らした、写真家夫妻と娘の物語。

昨年2月に発表された潮田登久子写真集『マイハズバンド』が、国際写真フェア『Paris Photo』と写真雑誌の出版などを行うニューヨークの『Aperture Foundation』による『Photo book Awards 2022』にて審査員特別賞を受賞した。本作は潮田と夫である写真家の島尾伸三の娘・しまおまほが生まれた1978年から約5年間の家族の日々の暮らしが写し出された写真集だ。6×6のフォーマットで撮られたハードカバーの『Book1』と、35㎜フィルムで撮られた並製本の『Book2』の2冊がセットになっている。
一家は1979年から約7年間、東京都世田谷区豪徳寺にある洋館(旧・尾崎行雄邸)の2階の一室で暮らしていた。『Book1』では、本や服が山積みになった部屋の中で冷静な目線で切りとられる島尾とまほの写真も印象的だが、洋館ならではの美しい階段の手すりや大きな窓、瀟洒なライトや冷蔵庫など、室内の様相にも目がいく。海外のものだろうか、珍しい雑貨や食器などがあり見ていてとても楽しい。『Book2』はタイトルにある夫の存在が強く感じられた。眠る島尾の表紙写真から始まり、食卓の風景や、まほを抱っこしたり、髪を切ったり、日常の物語がより見えてくる。
2冊を通して見た後に思う。約40年前の作品なのにこれらの写真が古びて見えないのはなぜだろう。淡々とモノクロで切りとられている写真を見ていると、自分の“実家”のことを思い出すからだろうか。もちろん家の佇まいはまったく違う。しかし、写真集の風景と実家のリビングに修学旅行のお土産や子どもの頃好きだったキャラクターのコップやぬいぐるみなどが、雑然と置かれている様子が重なり、どこか居心地の良さを感じるのだ。
写真の隅々から感じる、家族が愛した暮らしのディテール。普遍的な家族の物語をじっくりと堪能できる写真集だ。

『マイハズバンド』

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 (178561)

潮田登久子著、torch press刊
text by Nahoko Ando
記事は雑誌ソトコト2023年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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