ソトコトペンクラブ会員番号120、にこるが綴る里山訪問紀行文第1回目。今回は千年の都京都の里山、東山主峰如意ヶ嶽と、その西支峰・大文字山をちょっとだけご紹介。その麓にあるおいしい京湯豆腐のお店に纏わる話も。諸行無常。
はじめまして
ソトコトペンクラブ120番、「にこる」と申します。
大阪生まれ、大阪育ちのコーチ&マーケターです。製造業で企画デザインマーケティングを担当する傍ら、複業で傾聴をメインにインタビュー活動をしています。
(こちら↓は私の共著です)
幼いころから父に連れられて富士山や白馬に登り、山に親しんでいたわたしの心の深い所に『自然』への憧れがありました。というわけで、初回のテーマは「身近な里山 —世代を超えた営みに想いを馳せる—」
つたない文ですが、読んでいただけると喜びます。
町から里山へ

ここ20年ほど、相方と一緒に京都でお正月を過ごすのが年中行事に組み込まれているのですが、年を経るにつれて行動が変化してきました。
最初の頃は洛中の寺社仏閣や庭園など、行く先を決めて車で訪問する旅のスタイルでした。
コロナを経て、自分たちの足で歩くようになり、訪れる先が里山へと変化してきたのですが、ここしばらくお正月は大文字山を中心としたトレッキングがルーティンとなっています。京都は山にぐるっと護られた町。山が水を育んだ水の豊かな千年の都。
人の暮らしと山がとても近くにあるんだなとあらためて気づきます。都に行きつつ、山に登るという楽しみがここしばらく続いています。
今回登ったのは東山の如意ヶ嶽(にょいがたけ)支峰、大文字山。たくさんルートがある中で自分たちの体力にあったコースを選んで山歩きを楽しみます。
大文字送り火筆頭の、大文字の火床からの京都方面の眺望は素晴らしいもので山上から京都市内を一望できて天気が良ければ大阪方面のビル群まで見渡すことができます。

さすがに山の上は風が強くて寒い! 温かい飲み物を持参したり、防寒対策はばっちり。眺望がなによりのごちそうです。低山といえども迷うと大変です。準備はしっかり。
<京都一周トレイル®|【京都市公式】京都観光Navi>

時のうつろいに寄り添う
皆が享受できている物や事には、誰かがそれを維持するために絶えず動いていることに感謝を送らずにはいられません。永遠というものはなく、時とともに少しずつ変化が訪れるということを感じた今年のお正月。

わたしたちが京都に通った20年ほどのあいだ、必ずといっていいほど最後の日の晩餐に訪れていたお店があります。最初は敷居が高く感じていたけれど、相方がせっかくだから……と意を決して入店してから20年くらい通っています。
そこは京湯豆腐のお店。なめらかなお豆腐の味わいと精進揚げや生麩田楽など板前さんの味はずっとかわりません。
1年に数えるほどしか行くことはできてなかったけれど、長年通いつめるとお顔も覚えてもらえて周年記念にあつらえた手拭いをいただいたり。
2年前には親族の方が跡継ぎに立ったことをご紹介くださり、これからもずっとお店が続いて行くことを心から嬉しく思っていました。昨年はお正月しか行けなかったので1年ぶりにお店を訪れると、跡継ぎの方が席にきてくださり
跡継ぎ:女将と仲良くしてくださっておられたと思います。じつは昨年春に他界しまして。
私:……!
思いもかけない事実に衝撃を受けていろんな感情が湧き上がり、女将さんの朗らかな姿が頭の中でいっぱいになって涙が溢れました。

最初に訪れた時、外国人の方に流暢な英語で湯豆腐の食べ方をレクチャーしていたのが忘れられずにいて、あるとき「すごい!」とお伝えすると、「そんなことあらしません」とチャーミングな笑顔で答えてくれたのがついこの間のことのように思い出されます。
女将さんは48年にわたってお店を切り盛りされて見事に次世代に引き継がれました。板前さんのお料理に、お店のすべてに女将さんがいる気がしています。

これからも変化しつつも在り続ける。
時のうつろいに寄り添いながら、おいしい湯豆腐を食べに来れる幸せをかみしめる。
そんなお正月のひと時でした。