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ソトコトペンクラブ

音楽家の子育て歳時記。陽だまりの記憶と実りの秋、八ヶ岳(山梨県北杜市)

横田美穂

横田美穂

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このたびの令和8年熊本地震や各地の台風・豪雨により被災された皆さまに、心よりお見舞いを申し上げます。一日も早く穏やかな日常が戻りますよう深くお祈り申し上げます。

秋の気配がふと風に混ざる、白露(はくろ)の季節がやってきました。旧暦の暦をめくるように季節が移ろうこの時期は、音楽で言えば楽曲の調性がそっと変わる瞬間のよう。吹く風の優しさや光の角度の中に、豊かな実りの予感が満ちていきます。

日照時間日本一の光を浴びる大輪のひまわり/山梨県北杜市・明野にて

明野のひまわり畑

お盆が過ぎた頃、我が家は息子の祖母が暮らす山梨県北杜市を訪ねました。八ヶ岳の雄大な裾野に抱かれたこの地は、日照時間日本一を誇る、太陽の恵みに満ちた場所です。今回の旅で何より胸を打たれたのは、明野(あけの)のひまわり畑でした。見渡す限りの黄金色の景色はまさに圧巻の一言。3歳9か月になった息子は自分の背丈よりも遥かに高く伸びたひまわりの迷路をどこまでも駆け抜けていきます。眩しい陽光のなか、どんどん遠ざかっていく小さな背中。その眩しさに目を細めながら、ふと「いつまでもこうして見守っていたいけれど、それが叶わない日がいつか来るのだな」と、愛おしさと切なさが交差する感情に包まれました。季節が巡っても変わらず毎年同じ場所で咲き続けるひまわりは、いつの時代も変わらない「命のつながり」そのものを象徴しているかのようでした。

「いつか、おばあちゃんも、私たち両親も、先にいなくなる日がくる。だけどね、ここに来ればいつでも会えるから。そのときは、このひまわりみたいな元気な笑顔で笑っているからね。会いたくなったら、ここで会おうね」。駆け寄ってきた息子にそう伝えると、彼は少し不服そうな顔をして「ママ、いなくなるなんて言わないで」とつぶやきました。
まだ「今」という眩しい光だけを懸命に追いかける健気な息子。歳月を重ねるなかでお世話になった方々を見送り、命には移ろいと順番があるのだと知っているからこそ、胸が締めつけられるような愛おしさを覚えるのかもしれません。圧倒的な生命の営みは、時を超えて巡り続ける愛を私たちにそっと教えてくれます。

眩しい陽光と息子の笑顔を全身で抱きしめて。/山梨県北杜市・明野にて
ひまわりの大輪。息子の顔より大きい。

直売所の温もりと、東京へ持ち帰った「夏の大冒険」

山梨の旅の楽しみは、こうした豊かな土地の恵みや人との触れ合いにもあります。農産物直売施設「おいしい市場」に立ち寄ると、みずみずしい夏野菜がずらりと並んでいました。店員さんが「この農家さんのスイカ、本当に甘くておいしかったですよ。私も食べました!」と、とびきりの笑顔で教えてくださり胸が温かくなります。旬の野菜に出会えることと、生産者の熱量をダイレクトに感じられるのは直売所ならではの素晴らしい体験です。都内のスーパーではなかなか出会えない立派な丸ごとスイカ。東京へ大切に持ち帰り、我が家では賑やかなスイカ割り大会が始まりました。また、嬉しい再会もありました。我が家が毎年お取り寄せをして大切な方々へ贈っている「もりもりファーム」さんの葡萄。その甘く実った房が、直売所の棚にも誇らしげに並んでいたのです。作り手の顔が見える品を味わう贅沢は、日々の暮らしをとても豊かに彩ってくれます。

市場に並ぶ、旬の果物。

実りの色彩を数えながら、フルートの音色に乗せて

旬の巨峰を味わいながら「葡萄の粒、何個食べた? お皿にはあと何個残っているかな?」と、息子と小さな算数ごっこ。少し教育ママでしょうか。けれど、五感で触れる旬の味覚と数の世界は、子どもにとって一番自然な学びの扉なのかもしれません。子どもの無垢な目線を通すと、見慣れた世界がこんなにも美しく、愛おしい発見に満ちていることに気づかされます。一粒の果実、一輪の花から溢れ出る生命の調和。その感動を私はこれからもフルートの音色に乗せて、音楽として皆さまにお届けしていきたいと思います。

秋の夜長、皆さまの元へも豊かな実りと心地よい調べが届きますように。

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