国際NGO『コンサベーション・インターナショナル・ジャパン』代表理事|日比保史さんが選ぶ、SDGsと地球環境に触れる本5冊

国際NGO『コンサベーション・インターナショナル・ジャパン』代表理事|日比保史さんが選ぶ、SDGsと地球環境に触れる本5冊

気候変動や自然保護の分野で政策提言や企業との連携、途上国での持続可能な開発事業を実施している国際NGO『CIジャパン』の代表理事、日比保史さん。宇宙少年だったという日比さんが、地球や生き物を広い視野で捉えるための本を紹介。

日比保史さんが選ぶ、SDGsと地球環境に触れる本5冊

(左上から時計回りに)1.『文明の崩壊 ─滅亡と存続の運命を分けるもの(上・下巻)』/2.『シャーマンの弟子になった植物分類学者の話(上・下巻)』/3.『COSMOS(上・下巻)』/4.『学んでみると生態学はおもしろい』/5.『苔の話 ─小さな植物の知られざる生態』 

 南太平洋上に浮かぶイースター島。草地の丘陵に謎の石像、モアイ像が立ち並んでいます。モアイ像は10世紀頃から17世紀頃までの間、島民によって盛んにつくられたとされていますが、今、その島民の子孫は暮らしていません。滅んでしまったからです。なぜ滅んだのか。

 諸説あるようですが、『文明崩壊』の著者、ジャレド・ダイアモンドはこう記しています。イースター島は、もともと豊かな森に覆われた島だった。ただ、複数の部族が自分たちの権威を示すようになり、その象徴としてモアイをつくるようになった。モアイは1体が高さ数メートル、重さ数十トンにもなる巨大な像だから、何体もつくろうとすれば多くの人的資源が必要になる。多くの労働者を養うには農地も必要で、モアイを運ぶには木材も不可欠。人々は森を伐採し、農地や住む場所を広げていった結果、人口も急増。島の森はやがて切り尽くされ、農地開拓も限界に達した。森に大きな木がないため舟をつくることもできず、魚を獲ることもできなくなり、深刻な食料不足に陥った。その揚げ句に部族間の争いが激しくなり、ついには滅んでしまったと。つまり、森という自然を破壊したことでイースター島の文明は崩壊してしまったのです。

 イースター島をはじめ、中米のマヤ文明やルワンダ大虐殺など、文明が滅んだり、激しい争いが起こるなど、数々の実例を環境の視点から検証し、解き明かしているのが『文明崩壊』です。自然環境に大きな影響を与えたために、築き上げた文明を維持できなくなり、滅んでしまう。私たち現代人の自然環境との向き合い方を考えさせられる一冊です。

 もう一冊は、『シャーマンの弟子になった民族植物学者の話』。アマゾンの熱帯雨林は生物多様性の宝庫ですが、その現場で何が起こっているのか、さまざまなエピソードが書かれています。たとえば、先住民族が日々どんな生活を送り、病気や怪我はどんな薬草を使って治すのか、さらには文明人との滑稽なやり取り、次第に深まっていく絆など、著者のマーク・プロトキンは植物学者でありながら人類学的な考察も交えて描いていて、ヒューマンストーリー的な紀行文として楽しく読めます。

 2冊とも、一見すると生物多様性や生態学とは距離がある本に思われますが、そうではありません。生物多様性や生態学は、生き物や自然だけを相手にするのではなく、実は人間を対象にした学問であるということ。特に、日本ではその視点が抜け落ちがちですが、とても重要なポイントであると教えてくれます。

日比保史(ひび・やすし)●『野村総合研究所』、『国連開発計画』を経て、2003年より国際NGO『CIジャパン』代表理事。気候変動、生物多様性、持続可能な開発などで、政府や企業と連携し政策提言を行う。国際機関や政府委員、企業の環境/CSRアドバイザーも兼務。

photographs by Yuichi Maruya text by Kohei Tokoi

記事は雑誌ソトコト2021年9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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