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サスティナビリティ

熟練工の匠の技を多くの人に届ける。誰もが使いやすいAI検査ソフトを手掛ける「Roxy」の思いとは/プロジェクトSDGs ×「Innovation LAB」第4回

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AIの感じ方を可視化し、AIに不慣れな人でも使いやすい品質検査ソフトウェア「Roxy AI」を提供する株式会社Roxy。不良品の検出はもちろん、異物検出や残留物のチェックなど、これまで熟練の職人の勘と経験に頼っていた検査をAIの眼が正確・迅速に判定します。検査員の新しい働き方を創出し、日本の製造業や一次産業を守るための試みについて、株式会社Roxy 代表取締役社長 石黒貴之氏にソトコトNEWSプロデューサーの飯野がお話を聞きました。

目次

工場で働く5人に1人は検査員 製造業の効率化のためにAI品質検査が果たす役割とは

飯野:本日はお時間いただきありがとうございます。Roxyはどのような会社か教えて下さい。

石黒:一言でいうと、AIを活用した検査製品を作って販売している会社です。製造業の生産性向上や効率化に最適なソリューションを届けるために、製品や技術を開発しています。

飯野:石黒社長はかつて大企業で勤務されていたとのこと。脱サラして名古屋で起業された背景や思いなどをお聞かせください。

石黒:技術が急速に進歩している中で、大企業の中にいると1つの製品を作るにも1〜2年かかってしまい、やりたいことがあってもやれないジレンマがありました。技術革新のスピードに追随するため、自分で会社を立ち上げて、スピード感をもって事業を行いたいと思い決断しました。実は私の叔父が小さな町工場を経営していたため、小さい頃から製造業の現場を見てきました。起業にあたり、現場で働く人々の負担を軽減したいという思いが強くありました。特に日本の自動車業界は世界でもトップクラスの品質を求められ、0.1mmの汚れも許されない厳しい世界です。まずは自動車業界の品質検査業務に認められる技術を開発・展開しようと考え、自動車関連工場がひしめく名古屋での創業に至りました。

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飯野:品質検査にAIを活用することをお考えになった背景はどのようなものでしたか?

石黒:日本の国際競争力が落ちている原因の1つは、品質向上への要望が強すぎるがゆえに、作業の効率性が落ちている点ではないかと考えています。国際競争力を上げるためにも、検査の効率化にチャレンジできたらと思いました。実際に品質検査にかける工数は膨大で、工場の従業員の5人に1人は検査員といわれています。日本全体でみると、なんと140万人もの検査員がいるという話もあります。実際、1つの部屋に数十人の検査員が集まり、労働集約的な検査を行っているような製造現場がたくさんあります。昨今は新型コロナの流行もあり、「密」対策が強く求められるようになりました。「密」を避け感染リスクを低減するためにも、人の代わりにAIが検査を行うことが解決策の1つになるのではと考えています。

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AIの力で様々な方に恩恵を

飯野:高齢化社会の日本を考えたときに、労働集約型で行われている品質検査は今後AIが担っていくのかなと思います。熟練の作業員は色々な知識やノウハウを持っていますが、AI検査を導入すると、どんなことが変わっていくのでしょうか?

石黒:AI検査の場合、導入後も学習を継続していくことでどんどん精度を上げ続けることができます。長期間検査し続けても人間のように休息は必要ありませんし、退職してしまうリスクはありません。少子高齢化の影響で働く人の数が大幅に減少し、新型コロナにより1か所に集まって作業に従事することが難しい状況であるいま、この点はAIの大きなメリットの1つだろうと思っています。

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飯野:ほかにもAI検査が製造業にもたらす恩恵やメリットはありますか?

石黒:品質の安定・向上に役立ちます。例えば海外の工場にジャパンクオリティを展開するときには、従業員を異動させるのではなくAIを持っていけばいいことになります。実際にいくつかお話があり、日本のお客様の海外展開のお手伝いをしています。また、不具合が発生したときには、全数再検査や再発防止策の検討などが発生します。これは大変な工数がかかるため、現場で働く人は日々不具合を出さないよう注意を払われていると思います。検査をAIに置き換えることで、働いている人が心身のプレッシャーから解放されることもメリットかなと考えています。検査員さんの仕事をすべてAIに置き換えられるとは考えていません。現場の検査員の仕事が0になることはないでしょう。といっても、これまでのような単純な繰り返し作業からは解放され、AIを使って効率化を実現することにシフトしていくと思います。AI検査が広がると、一生懸命働きすぎる日本人の働き方改革になるかもしれません。もちろん、生産性が上がれば給料が上がるなど、労働条件の全体的な改善も見込めると思います。

飯野:ちなみに品質検査のAI化が加速すると、一般消費者はどのような恩恵を受けられますか?

石黒:品質の安定ですね。安心安全が保たれるのは消費者にとって大事なことだと思います。

誰もが親しみやすいAIを目指して

飯野:自動車業界のトップ企業は、AIを導入する資本力が十分にあると思います。一方、下請け部品メーカーなどはAIの普及がまだまだ進んでいません。中堅・中小企業がAIを導入するためにはどのような課題があると思われますか?

石黒:1つはAI導入コストが高止まりしているという現状があります。Roxy AIの価格は、ピラミッド型分業構造でいう第2次・3次の下請け部品メーカーさんでも使いやすい設定にしています。AIの知識がなくても簡単に作れて精度がいいものを、使いやすい価格で提供することを目指しているのが我々Roxyです。

トップ企業さんからの受託ビジネスもできると思っています。ただそれだとAIの恩恵がなかなか市場へ広がりません。我々は、AIの恩恵を多くの方々に届けることを目指しています。現場で使うという点では、AIはまだまだなんです。我々が現場にAIを導入するプレイヤーとしてやれれば、面白い未来を作れると思っています。

飯野:AIに触れる機会が少ない現場に向けて、分かりやすくぱっと分かる独自の可視化技術を作る。どうやって、そのような発想を得られたんですか?

石黒:我々の製品は、データの品質をあげることによって高精度なAIを育てていくというコンセプトです。データの品質をあげる作業は、正常品なのか不良品なのかを的確に判断できる検査員の方がやったほうがいい。しかし、検査員はAIに詳しくない方が多いので、どうすれば検査員でも使いこなせていただけそうか考えつくした結果、現在の可視化技術に至りました。データの品質をあげるコンセプトに注力している点では、Roxyはユニークな立ち位置にいるかもしれません。

AIに詳しくなくても使いこなせるRoxy AI

AIに詳しくなくても使いこなせるRoxy AI

AIに詳しくなくても使いこなせるRoxy AI
可視化技術だけでなく、これまでAIに触れたことが無いどんな方でも楽しみながら使えるように様々な工夫をしています。例えば、マウスで不良部分を触ると、マウスがブルブルと震えます。画面を目で見ているだけだと単調な作業なので見落としてしまう可能性がありますが、触覚や聴覚も使うことでミスを減らし、飽きないよう工夫しています。目標は子どもでも簡単に使える楽しいAIです。
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AI検査で一次産業の働き方改革を実現

飯野:AI検査は、生産性やそこで働く労働者、社員スタッフの新しい働き方を作るというお話がありました。自動車業界以外に今後手がけてみたい、未来を変えていける業界として、石黒さんはどのような業界を想定していますか?

石黒:少子高齢化を考えた場合に、農業が1番気になっている分野です。例えばブランド品のプチトマトは傷の有無で等級が変わります。だけど、高齢者にとっては小さなキズを見つけるのは難しいんですよね。そういうところを技術で補完してあげるのは、すごく大事だと思います。

飯野:なるほど、農業は特にそうですよね。農家の二代目は感度が高くて、IoTを導入するなど改革を進めていますね。自動車業界で培った技術が農業に活かされると考えると、明るい未来を感じます。

石黒:日本国内の食糧自給を担う農家さんを支援するために、色々な業界の知恵を集めて取り組まなければならないと考えています。農業を立て直そうと考えている方はほかにも多くいらっしゃるので、弊社が力になれるならばやりがいを感じますね。

カット野菜を検品しているRoxy AI

カット野菜を検品しているRoxy AI

カット野菜を検品しているRoxy AI
飯野:未来の話をもう少しさせていただければと思います。技術伝承が必要なのに、担い手がいなくて終わってしまいそうな地場産業が多くありますよね。AIには世界に向けたジャパンクオリティの進出も含めて未来を感じるのですが、どういう働き方や技術伝承を未来に実現していけるとお考えですか?

石黒:伝統工業の領域なども我々のAIで貢献したいなと考えています。しかし、伝統工芸など芸術に近いところはAIに置き換えてはいけないなと考えています。人が作る魅力もあると思うので、そのあたりの棲み分けを考える時期がいずれくると思います。

Roxy 石黒様

Roxy 石黒様

飯野:石黒さんは想いを実現される方だと感じました。労働集約型の工場が世界中に数多くあると思いますが、生産性が向上すれば世界中がよりハッピーになって、人として色々なことを感じられる世界を作れるんじゃないかなと感じます。本日はありがとうございました。

〜プロジェクトSDGs ✕ Innovation LABとは?〜

NTTPCが運営するAIコラボレーションプログラム「Innovation LAB」にパートナーとして参加しているAIスタートアップ企業各社の社会・産業課題へのアプローチやその原動力となる“想い”、“ビジョン”にフォーカスし、エモーショナルな観点から企業の取り組みを幅広いステークホルダーへ伝える広報活動です。

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