澁谷さんの家業は「お米屋さん」。お米に関わる人たちのことを幅広く理解できるお米屋さんでありたいと考える澁谷さんは、お米について科学的に説明する本に助けられたという。食べる人、つくる人の「間の立場」である視点から選んだ5冊。
澁谷梨絵さんが選ぶ、「農度」を高める本5冊

私は家業がお米屋さんで、その三代目を継いだのですが、始めてすぐはお米に関する知識も経験も乏しく、農家さんやお客さんと話すときも戸惑うことばかりでした。そこで「ごはんソムリエ」などの資格を取得したのをきっかけに、もっとお米に詳しくなろうと勉強を始めました。今回紹介するのは知識の基礎をつくってくれたとともに、お米の奥深さを教えてくれた本です。
『ポストハーベスト技術で活かすお米の力』は、一番頼りにしている本です。お客さんに何か尋ねられたとき、わからないことがあるとまずこれで調べています。お米のおいしさについてを詳しく、かつ科学的に説明しているうえ、籾殻や米ぬかの活用法まで書かれていて、お米のよさのすべてが詰まっていると言っていいかもしれません。専門的でありながらわかりやすく、消費者の方が読めば安心してお米を買う・食べることにつなげられるでしょう。
『つや姫 10万分の1の米』は、山形県のブランド米「つや姫」が生まれるまでの実話ドキュメンタリーです。
「つや姫」は温暖な気候に強く倒れにくいことが特長ですが、開発後のブランディングまで含めて戦略的につくられた品種でもあります。お米には農家の方が栽培する、さらに前の段階からストーリーがあるとわかり、もっと心を込めてお米に関わりたいと思うようになりました。
米屋になって最初に買った思い出深い本が、『米屋さんが書いた 米の本』です。米屋をするにあたって知っておきたい基礎知識がついたこともありがたかったですが、特に興味深かったのは、名産地のお米はなぜおいしいとされるのかということが米屋の目線で書いてあった部分。実際には田んぼ一枚隣でも味が違うことがわかり、本当においしい米を見つけるには自分の足で探すことが必要なのだとわかりました。
『シリーズ〈食品の科学〉 米の科学』は、歴史、栄養学、栽培などさまざまな分野の米の研究者が共同で書いています。専門書といってよく、検査結果や研究結果などの実際の数値などもそのまま載っています。一度自分で理解し、噛み砕き、お客さんに伝えるという過程を身につけられた本ですね。
この本の内容をもう少し初歩的に語っているのが、『Q&Aご飯とお米の全疑問』。外国産米と日本米の違いなど、多くの人が疑問に思いそうなことをQ&A方式で簡潔に答えています。大人の素朴な疑問に答えてくれる楽しい本です。

photographs by Yuichi Maruya text by Sumika Hayakawa
記事は雑誌ソトコト2022年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。