『陽と人』代表|小林味愛さんが選ぶ、「農度」を高める本5冊
『社会派化粧品 social cosmetics』は、「明日 わたしは柿の木にのぼる」と同じように、地域で生まれた全国各地のコスメブランドを紹介している一冊。どのブランドも農家さんや地元の人と信頼関係性を築き、地域に根ざした活動をしてきたからこそ生まれたものだということがわかります。滋賀県東近江市の『MURASAKIno』や、愛媛県西予市『yaetoco』など自分たちで原料を生産しているブランドも紹介されています。
私はプロダクトをつくるときや自分自身のあり方として、感性と論理性の両方を大切にしたいと思っているのですが、感性を磨くための本としておすすめしたいのがアーティスト・鈴木康弘さんの作品集『近所の地球』です。ものの見方が人によって違うことや、身近なものからさまざまな価値を見出せること、そして自分の見えている世界がいかに狭くてちっぽけなのかを思い出させてくれます。
特に衝撃を受けたのは「水の切り株」という作品。雨の日に、雨水でいっぱいになったバケツの水面の波紋が「年輪」に見えることを発見したことがきっかけでつくられたそうなのですが、私はそんなことを考えたり、感じたりしたことはなく、そもそも雨水が貯まったバケツに関心を向けたことすらありませんでした。無意識に私たちはさまざまなことを見過ごしているのだと気づき、ハッとしました。こうした視点は、私がブランドやプロダクトをつくる際にも生かされていますし、これからも大切にしていきたいと思っています。