持続可能、そして世界で活躍できる子どもを育てる教育を考える連載「インターナショナル教育とSDGs」、第5回目は「プラスチックごみが環境に及ぼす影響」になります。
2050年までに、海の中のプラスチックのゴミの量が、魚の量を超えるという報告もあります。このような、人間にとって有用な一方、他の生き物や環境にとって有害になり得るプラスチックについて、弊校ローラス・インターナショナルスクール・オブ・サイエンス(以下、ローラス)の生徒たちは、教室の内外で調査や実験を通じて学んでいます。
例えば、幼稚園児から小学生まで、授業でよく行なうアクティビティとして、次のようなものがあります。プラスチックは分解されて細かくはなるけれど、長年経っても完全には自然に還らないことを学んだ後、自然に還るプラスチック(生分解性プラスチック)作りをしています。牛乳に酢やレモン汁を混ぜ、分離してきた凝乳でカゼインプラスチックと呼ばれるプラスチックを作り、整形してプラスチック製品を作ります。それを元に生分解性プラスチックの長所や短所について学んでいます。
例えば、日本近海の海水面1m²辺りのマイクロプラスチックの量は、2-3個という報告がありますが、これついて面積当たりではなく、体積当たりの個数で算出すべきという意見もあります。
また、現在は、収集、分析技術の都合上、マイクロプラスチックを収集する網の目の大きさが、最小で0.3mm四方となっています。つまり、それより小さいものは無視されている状況です。しかし、昨今、技術が進歩し、最小で直径0.1mmの大きさのマイクロプラスチックまで検出、分析できるようになってきています。最小直径0.1mmまでのプラスチックが測れるようになると、水中だけでなく空気中のマイクロプラスチックの現状についても分かってくるようになります。そうなると、今後、現在報告されているものより、より多くの環境中のマイクロプラスチックの存在が知られるようになり、それに伴う環境や健康に関する問題がより深刻になることが予想されています。
プラスチックごみの問題は、当時は良かれと思って進めていった人間の行為が、時間を経てその弊害が顕著になってきた典型的な例の一つです。ローラスの子供たちが、大人になる頃には、このプラスチックごみの問題の他にも、私たち大人が積み残してきた多くの問題に直面するでしょう。
そこで、将来、ローラスの子供たちが、新しいものを開発したり、発明したりする際には、私たち大人の短視眼的な思考が引き起こした問題を反面教師として、目先の有用性だけでなく、将来にわたっての影響まで考えて、世の中に貢献するものを生み出していってほしいと願っています。
サイエンス顧問:村上正剛さん
オーストラリア、マレーシア(ボルネオ島)にて環境教育に従事。東北大学、北海道大学の他、カナダやオーストラリアの大学(院)にて、人と自然との関わりや科学技術コミュニケーション等について研究。現在も引き続き京都大学にて研究中。