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サスティナビリティ

特集 | 続・ウェルビーイング入門

太田直樹さんが選ぶ「デジタル田園都市国家構想╳ウェルビーイングを感じるアイデア本5冊」

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デジタル戦略についてコンサルタント業務を行う『New Stories』代表の太田直樹さん。国の重要政策の一つである「デジタル田園都市国家構想」の実現会議に参画しつつも、「デジタルも大事だが、そもそも『田園とは何か』を考える必要がある」と言います。

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(左から)1. モビリティーズ ─移動の社会学 / 2. 「自然」という幻想 ─多自然ガーデニングによる新しい自然保
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(左から)3. わたしは不思議の環 / 4. トレイルズ ─「道」と歩くことの哲学 / 5. ソフトシティ ─人間の街をつくる
岸田文雄首相の肝いりの政策、「デジタル田園都市国家構想」。私はその実現会議の構成員として会合に出席しています。デジタル田園都市国家構想とは、「地方の豊かさをそのままに、利便性と魅力を備えた新たな地方像を提示するもので、地方が抱えている課題をデジタル実装を通じて解決し、すべての人がデジタル化の恩恵を享受できる、『ミニ東京』ではない個性あふれる地域を実現する」というもの。ただ、ここで疑問なのは、「地方は豊かなのか?」ということ。整備されない森林は荒れ、耕作放棄地や空き家が増え、高齢化が進んでコミュニティを維持できない地域も多く見られます。「地方の豊かさ」とは何か、捉え直すためにも手に取りたいのが、『「自然」という幻想』という本。

著者は、「人間の活動が影響していない手つかずの自然はほぼない」と言います。ポジティブな形で自然と関わり、自然をデザインするべきだと述べ、議論を巻き起こしました。
 
日本の田園風景をつくる田んぼは人工的な農地ですが、実は生物多様性の基盤にもなっています。農薬を使わなければ水生生物が現れ、それを餌にする鳥や昆虫もやってくる生態系の場として世界的にも評価されています。その田んぼに、ソーラーシェアリングを導入する動きがあります。田んぼの上に太陽光パネルを張っても光の透過率は7割ほどあるので、稲の生育には問題なく、電源が取れるのでセンサーやポンプを動かして水質・水量管理もできます。

新しい田園都市を築くには、モビリティについても考える必要があります。『モビリティーズ』は、モビリティによって人間社会がどう変わってきたかを論じた名著です。カーナビに象徴されるように、現代の移動は効率が最優先。昔は道に迷い、人に尋ねながら目的地に到達したものですが、今は道草も偶然の出会いもありません。逆に、海外の都市では人が歩くためにデザインされた「ウォーカブルシティ」が注目されていて、歩くことで、人と何かが出合い、事が起こる可能性や、セレンディピティ(幸運な偶然を手に入れる力)も高まるという訳です。

人口が減少すれば、道路の維持も難しくなります。自動運転車が開発され、ドローンも導入されはじめた今、モビリティのあり方も再考が必要です。モビリティが変化すると、人と人との接点が変わり、地域の暮らしや考え方にも影響を与えます。未来の田園都市をよい方向に導くためにも読んでおきたい一冊です。

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おおた・なおき●大阪府生まれ。東京大学文学部卒業。ロンドン大学経営学修士。総務大臣補佐官を経て、『New Stories』を設立。挑戦する地方都市を「生きたラボ」として、行政、企業、大学、ソーシャルビジネスを越境し、「未来をプロトタイピングする」ことを企画・運営。
photographs by Yuichi Maruya text by Kentaro Matsui

記事は雑誌ソトコト2022年7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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