9月8日、株式会社明治によるイベント「カカオ、ひらく。LAB」が開催されました。このイベントではチョコレートの原材料となっているカカオ豆を取りまく問題を再認識しつつ、それを解消するための明治の取り組みの紹介と、そしてカカオ全体の新しい活用方法を考えるワークショップが行なわれました。ここではその模様をお届けします。
目次
環境破壊、児童労働…カカオ産業を取り巻く環境を変える。企業の自己満足で終わらない取り組みを
イベントの第一部では明治のカカオマーケティング部CXSグループ長 木原純氏が登壇。まず、現在のカカオ豆を取り巻く生産構造の問題点について解説を行ないました。
現在、世界で作られているカカオ豆のうち実に77%がアフリカ、17%が中南米産であり、北緯20度から南緯20度までの「カカオベルト」と呼ばれる地域に生産が集中しています。また、これらの生産国では森林破壊や子どもの労働問題が発生しており、さらにはこういった問題を抱えつつ生産されたカカオのうち、チョコレートなどにできているのはカカオの実の約10%にすぎず、多くの部分が積極的に活用されていないという現状があります。
また、かつては主に欧米諸国に輸出されていたカカオ豆ですが、近年アジア圏での需要も高まっています。その一方で、気候変動などによってカカオの栽培ができる地域は縮小傾向にあり、カカオ豆の需給バランスは不安定な状況です。
カカオの生産が「カカオベルト」と呼ばれる地域に集中していることは聞いていましたが、収穫されたものの多くが積極的に活用されていないという事実は衝撃的でした。「カカオ農家の人たちはチョコレートを食べたことがない」というのはよく耳にする皮肉ですが、日常、何気なく口にしているチョコレートの原料となっているカカオ豆の抱える諸問題をあらためて考えさせられました。
こうした問題に対して「100年、カカオの恩恵を受けてきた」という明治は、サスティナブルなカカオ豆の生産を実現するべく、2006年より「メイジ・カカオ・サポート」として各地のカカオ産地に足を運び、生産従事者への支援や技術提供を行なっています。そして、2021年時点で全体の40%をこうした“サスティナブル・カカオ”輸入に切り替えることに成功しています。そして今後もこの取り組みをより充実させ、2026年には100%“サスティナブル・カカオ”にすることを目標としています。
最後に、木原氏より「企業の自己満足ではない、継続的な事業の重要性を感じている」という言葉がありました。長らくカカオ豆と寄り添ってきた企業だからこその責任感とその本気ぶりを感じさせる一言でした。
スローガンは「ひらけ、カカオ。」、カカオ豆の新たな可能性を追求する次のステップ
続いて、フルーツであるカカオ全体に着目し、チョコレートに留まらないかたちでカカオをどう活用していくのかについて、明治が現在開発中のものも含めてさまざまなアイテムが提示され、また、当日来場していた約30名のZ世代の学生・社会人によるカカオ豆の有効活用法を考えるワークショップが行なわれました。
また、食品だけでなくカカオのハスク(皮)を使用した家具・建材なども考案されています。
また、来場者によるワークショップでは、カカオをバイオエタノール燃料として利用する案や、カカオを原料とした石鹸を作るアイデアが出されたほか、学校給食へ転用するのはどうかといった提案もなされました。
現在、主にチョコレートとして幅広い年代に愛されているカカオを、燃料や石鹸として別のかたちで生活に紐づけたり、学校給食という教育の場で活用するなど、フレッシュで意欲的なアイデアが多く、非常に実りの多いワークショップとなりました。
サプライズゲスト登場とグラレコの完成でイベントは閉幕
ワークショップの発表をもってイベントは終了となるかと思いきや、ここでサプライズゲストとしてアーティストの石井竜也さんが登場。石井さんは東日本大震災で被災した茨城県や、火災にあった沖縄県の首里城の復興などにも取り組んでおり、明治の発信する“サスティナブル・カカオ”にも考え方に深く共感したと、ご自身が作曲された、明治の掲げるスローガン「ひらけ、カカオ。」の応援ソングにかける想いを語っていました。
そして、今日ここまでの内容をまとめたグラレコ(グラフィック・レコーディング)がイベントと同時進行で作成されており、それを振り返ってイベントは閉幕となりました。
現在、カカオを取り巻く環境には問題が山積しています。しかし、明治と若い学生・社会人たちによる産学が一体となったこのイベントで、この現状を変える動きが始まっていることがわかり、勇気づけられるような思いを抱きました。同様の問題が世の中にはあふれていますが、それらに対してもきっとこのように変革していくことができる。今回の「カカオ、ひらく。LAB」はそう感じられた発表会でした。