「地域プロジェクトマネージャー」という肩書で、地方自治体の図書館などを監修したり、「コードマーク」という、これからの地域の場づくりの活動を実践している森田秀之さんが、場づくりとその運営について、さまざまな視点からアプローチする本を紹介します。
私自身、風を感じながら大地を耕し、自治とは何かを考えてきたこともあり、まさに『風土自治』という本に共感を覚えています。著者の中村先生のお考えに私の解釈が入りますが、「風土」とは、自然や環境と関わりを持ちながら人間がつくっていくもの。つまり、「人のあり方」だと。その風土をどう守っていくかが「自治」ということです。「風土自治」という「人のあり方」を「守っていく」ための場として、かつてあったのが村の神社ではないでしょうか。神社は神を祀る場であり、日本の神はほぼ自然そのもの。山であり、川であり、「自然=神」に畏れを抱きつつ、五穀豊穣を願い、自然の恵みに感謝する場が村の神社で、事あるごとに村民が集まって相談をし、喜び合ったのも神社でした。神社は人々の社交場であり、生きていくためになくてはならない場だったのです。
ところが、今はその機能は失われつつあり、かろうじて祭りや初詣でのときに人々が訪れる程度でしょうか。もう一度、「自然=神」と関わることで人のあり方をつくり、守っていく「風土自治」という概念が、現代の場づくりとその運営にも必要だと思えます。
神社の機能は欠けたかもしれませんが、「神社的なもの」は今も残されています。図書館もその一つだし、もしかすると、商店街の空き店舗も、耕す人のいなくなった休耕田も「神社的なもの」になり得るのかもしれません。そこに人が集まり、生きていく術を語り合って、記憶や知恵を共有する。そんな場づくりを実践するきっかけになる本でもあります。
私は、図書館とは別の場づくりも行っています。「コードマーク」、つまり「縄文」と名づけた活動で、私が移住して暮らす長野県・御代田町で「コードマーク御代田」と名づけ、気ごころの知れた仲間と米をつくり、山の木を伐って薪にして、気候変動によって訪れるだろう食料難やエネルギー難の時代に備えて生きる力を身につけようというものです。縄文的な生き方や仕事の仕方の参考になるのが『最強の縄文型ビジネス』です。資本主義社会が立ち行かなくなってきた今、どうやって共に生きていくのかという問いかけとしても読める本です。
記事は雑誌ソトコト2022年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。