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特集 | SDGs入門~買い物から地球環境を考える!~

ゴミの排出量を減らす買い方とは? 豊かな暮らしの新・マインドセット

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京都大学在学時に「京大ゴミ部」を立ち上げた浅利美鈴さん。今は准教授としてゴミを調査し、政策提言を行っています。そんな浅利さんに、ゴミと買い物の関係について伺いました。

目次

買い方を考えれば、ゴミの排出量は減らせる。

京都府京都市では1980年から毎年1回、「家庭ごみの細組成調査」という家庭ゴミを細かく分類することで、ゴミの質や量の実態を把握する調査が続けられています。京都大学と協働で行われ、私も25年前から携わっています。実際に収集された家庭ゴミの袋を開け、どんなゴミがどれくらい捨てられているかを細かく調べます。「ゴミは社会を映す鏡」とも言われますが、例えば、紙オムツやウェットティッシュなど使い捨て製品のゴミは、80年当時は皆無に近かったのですが、今はゴミ全体の2割ほどが使い捨て製品です。高齢化社会が進んでいることもゴミ袋を開けると感じ取れます。

京都市にはゴミに関するこんなデータもあります。1908年から100年以上に及ぶゴミの排出量の推移です。55年から73年までの高度経済成長期には「消費は美徳」のスローガンが掲げられ、市民の消費が増えると同時に、排出されるゴミも増え続けます。大量生産・大量消費・大量廃棄の時代です。ところが、73年と78年の2度のオイルショックでそのムードは反転し、省エネや節約が奨励され、ゴミの排出量も減りますが、バブル景気の到来によって再び生産、消費、廃棄が増加に転じ、ゴミがどんどん増えていきます。ゴミの量は消費の動向と一致する傾向は「家庭ごみの細組成調査」にも表れていました。

京都市のゴミの量は2000年にピークを迎え、その後は減っていきます。「しまつのこころ条例」の施行によって、2R (リデュース、リユース)と、分別とリサイクルが徹底され、排出量の半減に成功しました。国が定めた「容器包装リサイクル法」や「家電リサイクル法」の施行もゴミの減量を促しました。全国の自治体のゴミ処理場のキャパシティが限界を迎え、「分ければ資源」という考え方を生活者も受け入れるようになり、ものの買い方にも変化が表れてきたのです。

食品の買い方に配慮すれば、ゴミの量は大きく変わります。配慮の方法は3つ。一つは、フードロスを減らす買い方。必要なものを、必要な分だけ買うようにします。もう一つは、容器包装を減らす買い方。個包装が少ない商品を選び、エコバッグを携行し、なじみの豆腐屋さんなら入れ物を持って買いに行くのもいいですね。最後は、輸送のCO₂を減らす買い方。地球温暖化の原因となるCO₂も「一種のゴミ」ととらえ、地産地消と旬を心がけ、少なくとも国産品を選びましょう。食品以外なら、長く使えるかどうか、リサイクルされてつくられたものかどうかも購入の判断基準になります。

若者の声に耳を傾け、ゴミ削減への取り組みを。

家庭ゴミを削減するには、流通業や小売業が変わることも不可欠です。そのためには、若い消費者の存在も力を発揮しそうです。意外に思うかもしれませんが、流通業の中心にあるコンビニエンスストアで、若者離れが進んでいると言われています。今やコンビニを多く利用しているのはけっして若者だけではないということです。その理由は、「値段が高い」「どこでも同じような商品を売っている」「ファッショナブルなイメージがない」というもの。売り方についても、プラスチック包装が多いなど、「環境に配慮した商品が少ない」との声もあります。3年前には、菓子メーカーを相手に過剰包装をやめてほしいと高校生がインターネットで署名を集めて訴えたように、若者たちのなかには環境に配慮した買い物がしたい人も少なくないのです。過剰包装しかり、プラスチックバッグしかり、ストローしかり、流通業や小売業が「ゴミをつくるきっかけになってしまっている」と言われかねない現代、改善できるところから改善を進めてゴミを減らし、環境負荷を減らせる買い物ができるような社会にしていくことを若者たちも求めているのです。SDGsの「つくる責任つかう責任」の達成に向けて、企業と消費者が一緒に努力することが必要です。

署名を集めた高校生のような「アーリーアダプター」は消費者の1割に満たないかもしれませんが、2割、3割と増えていくと、社会はガラッと変わるはず。商品製造の段階から、ゴミとしてではなく、資源化しやすい商品や仕組みづくりに今以上に努めるようになるに違いありません。炊飯器などの製造メーカーが、開発過程で不要になったご飯などからつくったエタノールを使い、除菌ウェットティッシュを製造して販売しているのも、そうした取り組みの一つでしょう。

過剰包装が豊かさの象徴なのではなく、ゴミを減らしつつも、出したゴミは資源ととらえて、循環させていく。それが豊かな暮らしだと「マインドセット」を変えることで、ものの買い方は変わっていくはずです。

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あさり・みすず●京都府出身。京都大学大学院工学研究科修了。工学博士。京都大学大学院地球環境学堂准教授。研究テーマは、ごみ、環境教育、SDGs/持続可能なコミュニティ創出など。「びっくり!エコ100選」「エコ〜るど京大」「京都超SDGsコンソーシアム」「京都里山SDGsラボ(ことす)」などを立ち上げ、環境問題の実践・啓発活動や情報発信にも力を注いでいる。

京都大学大学院地球環境学堂准教授・浅利美鈴さんの、 買い物にまつわるコンテンツ。

Radio:マイあさ!
NHK-FM、NHKラジオ第1
毎朝、ラジオ体操は欠かしません。その後、朝食の準備をしたり、身支度をしたり、朝のあれこれをする間、必ず聴いています。その日の天気や、紹介される旬の食材をチェックしたりして、買い物の参考にしています。
Radio:笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ
KBS京都ラジオ
朝、ひと仕事する間に、BGMのように流して聴いています。MCの落語家さんたちの関西らしい会話には反応してしまいます(笑)。地元のお買い得情報や、注目のお店などが自然と耳に入り、足を運んだりもしています。
Newspaper:朝日新聞
www.asahi.com
父が取っている朝日新聞を拝借し、週末などにまとめて流し読みしています。特に関心のある記事は切り取ってスキャンし、関係者にも情報をシェアしています。新商品から開発動向まで、社会の動きをチェックしています。
photographs by Katsu Nagai text by Kentaro Matsui
記事は雑誌ソトコト2023年8月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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