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サスティナビリティ

特集 | SDGs入門~買い物から地球環境を考える!~

エシカルな商品を「買いたい」と思ってもらえるお店と商品のつくり方

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多くの物やサービスがあふれている今、みんながエシカルな商品を選べば社会が変わるのではないだろうか。そんな思いから『エシカルな暮らしオンラインストア』を運営している山内萌斗さんに、「買いたい」と思ってもらえる店や商品づくりについて伺いました。

TOP写真:『有楽町マルイ』6階にある『エシカルな暮らしLAB』の店舗で。食品や衣類、雑貨、本など多様なエシカル商品が揃う。
目次

「 “ありがとう量” を最大化」できるビジネスを模索。

『エシカルな暮らしオンラインストア』は、人や動物、地球に優しい暮らしを送るためのエシカル商品を集めたECサイトとして2021年にスタート。現在、160近いブランドを扱っています。人や社会の役に立つ、自分の言葉にすれば「“ありがとう量”の最大化」を実現したいと考え、大学時代には多くのビジネスコンテストに応募しました。そのなかで、東京都の渋谷駅周辺のゴミ問題を解決するプランが採用され、起業しました。
コロナ禍でプランは頓挫しましたが、生産から販売、消費まで一貫して人や動物、地球に負荷をかけないエシカルな商品を選ぶ人が増えれば、物への意識が変わり、ゴミ問題の根本的な解決にもつながると考えました。そこで、弊社副代表北川晴也とSDGsへの取り組みやエシカル商品を紹介するアカウント『エシカルな暮らし』をInstagramにつくり、フォロワーが1万人を超えた時点で、紹介した商品が購入できるECサイトを立ち上げました。同様のビジネスモデルで成功している友人がいたこともあり、ある程度商品は売れると思っていたのですが、あまり売り上げは伸びませんでした。エシカルな商品に興味・関心がある人は一定数いるのに、それが実際の購買には結び付かなかったのです。

エシカルである価値を、納得してもらうために。

そんな時に『三井不動産』の方から声をかけていただき、同社が運営する東京都渋谷区の複合商業施設『MIYASHITA PARK』に期間限定ポップアップストア『NEO〜消費が変わる、未来が変わる〜』を出店しました。店舗には私たちのInstagramのフォロワーを中心に多くの方が足を運んでくださり、売り上げはECサイトの10倍以上になりました。さらに東京都内をはじめ静岡市、名古屋市、大阪市、福岡市などでも出店。私たちのファンが来てくださることを立証したくて、あえて駅から遠い場所を選んで出店したのですが、それでも足を運んでもらえたんです。
この経験からの気づきは、エシカル商品ならではの特性です。リサイクル樹脂を使った腕時計や、廃棄される備前焼から生まれたマグカップなど、扱う商品の多くは、新素材を使っていたり、ユニークなアイデアが元になっていたりして、それほど知られていません。商品についてはECサイトでも紹介していますが、実際に手に取り、その品質や質感、使い勝手、エシカルなポイントなどを確かめなければ、「これは買いたい」「買ってもいいかな」と思ってはもらえないことに気づきました。逆に、「いい!」とさえ思ってもらえれば、購入につながり、リピーターも増えます。実際、ポップアップストアの出店に連動して、ECサイトの売り上げも伸びました。
この手応えからブランドの魅力をしっかり伝えるためには、商品やブランドについてよく知っている人がスタッフになって接客するほうがいいと考え、Instagramで販売スタッフの募集をかけて採用。お客様との間にコミュニケーションが生まれやすくなり、エシカルであることの商品価値を知っていただきやすくなりました。
また購入を見送った率直な意見も聞き取ることもできました。品質に納得がいかないのか、価格が問題なのか、デザインがよくないのか、それともエシカルであるポイントがわかりにくいのか……。「今は買わない」という声は、つくり手にとっては貴重な意見です。そこで、ポップアップストアでは各ブランドから出店料を頂き、その代わりにお客様の生の声をフィードバックする、という仕組みで運営することにしました。ブランドのなかには、お客様の声からカラーバリエーションを増やしたり、ポップを工夫したりして売り上げを伸ばしたところもあります。
2022年9月には『有楽町マルイ』6階に常設店舗『エシカルな暮らしLAB』をオープンしました。私たちは、売り上げデータを持っているので、これからはブランド側に対してお客様の声を届けるだけではなく、それをどう商品に反映させてよい商品にしていくのか、一緒に考えていくことにも挑戦していきます。その先にあるのは、エシカルな商品が当たり前にある世界。日本ではエシカルに関心があるのは圧倒的に30代から40代の女性ですが、より多くの人に向けて買い物という「楽しい行為」を通して、社会課題を自然に知ることができる仕組みをつくっていきたいと考えています。
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ヴィーガン食品を専門に扱う『ブイクックスーパー』の冷凍食品コーナー。
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量り売りをしている「米ぬか酵素洗顔クレンジング」。必要な分だけ買うことができる。

『エシカルな暮らしオンラインストア』・山内萌斗さんの、 買い物にまつわるコンテンツ。

SNS:Twitter
https://twitter.com
日々の情報収集はもっぱらTwitterです。アプリを開けば、フォローしている方々がおすすめしている情報が次々に流れてきて、そのスピード感が好きです。自分が知らないものもありますし、みんなが何に注目しているのかがわかります。
Book:起業の科学
田所雅之著、日経BP社刊
起業に必要なノウハウや実務的な知識がすべて詰まっていると言っても過言ではない本なので、起業を考えている人にはおすすめしたい一冊です。『起業のファイナンス』(礒崎哲也著、日本実業出版社刊)とセットで読んでみてください。
Movie:シン・仮面ライダー
2023年日本、庵野秀明監督
この映画のメイキング映像で、庵野監督は、人間にしか表現できない肉体感や生っぽさにこだわり、俳優やスタッフたちを追い詰めていっていて、ものづくりに携わる人のクリエイティビティを感じました。私にとって理想の仕事の現場だと思っています。
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やまうち・もえと●2000年静岡県生まれ。静岡大学在学中に東京大学起業家育成プログラムで選ばれ、シリコンバレーの研修に参加。その後、静岡大学を休学し、『Gab』を立ち上げる。「正しさよりも、まず楽しさ!」をモットーに、『エシカルな暮らし』やSDGs領域に特化したInstagramの運用支援、ゲーム感覚でゴミ拾いができるイベント「清走中」などを展開している。
photographs by Hiroshi Takaoka text by Reiko Hisashima
記事は雑誌ソトコト2023年8月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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