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カカオの未活用部位が化粧品に生まれ変わる⁉︎ 『明治』による世界初の試み。

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チョコレートの原料であるカカオ。カカオの実は約3割しか価値に代わっておらず、残りの約7割は未活用のままでした。90年以上にわたりチョコレートづくりを手がける『明治』から、このたびカカオの実の未活用部位を活用した世界初の新素材「カカオセラミド」が発表されました。その内容をレポートします。

目次

フルーツとしてのカカオの可能性を探る。

まず初めに『明治』代表取締役社長・松田克也かつなり氏より、カカオを活用した取り組みについて説明がありました。『明治』では、カカオに関わる全ての人の幸せを目指し、社会課題解決に向けたアクションを実施しています。しかし現在はカカオ豆だけが活用されており、皮の部分であるカカオハスクは有効活用されていないという課題があります。

そこで「ひらけ、カカオ。」をテーマに、カカオを通じたサスティナブルな取り組みが行われてきました。「カカオ豆=チョコレート」としてだけでなく、フルーツとしてのカカオの持つすべての可能性を生かした、『明治』ならではの新たな価値の創造を目指しています。

『明治』代表取締役社長 松田克也氏。

そしてこのたび、カカオそのものの可能性をアップデートする「カカオセラミド」を発見。研究の結果、化粧品などに使われる保湿成分「セラミド」がカカオの未活用部位に多く含まれていることが分かり、世界で初めてカカオからの抽出および素材化に成功しました。カカオは灼熱の太陽のもとで育つため多くの水分を必要としており、これが「カカオセラミド」が生まれる理由の一つと考えられているそうです。『明治』では、この「カカオセラミド」の活用について、今後異業種のパートナーとともに推進していくとのことです。

「合成セラミド」の代わりとなる「カカオセラミド」。

次に帝京大学・古賀仁一郎じんいちろう教授より、「カカオセラミド」についての説明がありました。

「セラミド」は肌の角質層内に含まれる保湿因子のひとつで、健康食品や化粧品などにも使われている機能性素材です。大きく「遊離型セラミド」と「グルコシルセラミド」に分類され、化粧品には「遊離型セラミド」に機能を似せた「合成セラミド」が使われています。この「合成セラミド」の代わりに、植物にわずかしか含まれていないとされている「遊離型セラミド」を使うことができれば、化粧品として新しい価値を提供できるのではという発想のもと、「遊離型セラミド」の抽出に関する研究が進められてきました。

カカオの未活用部位には、他の植物に比べて極めて多い「遊離型セラミド」が含まれている。

研究の結果、「遊離型セラミド」がカカオの未活用部位に多く含まれていることを発見。この「カカオセラミド」の活用を促進することで、カカオ生産国におけるサスティナブルな原料の利用を将来的に促進すると考えられています。

「カカオセラミド」のもつ可能性。

続いて『Zero Gravity』スキンケア成分ハンター・竹岡篤史氏より、化粧品業界における素材のトレンドについてレクチャーがありました。現在、アップサイクル化粧品の注目度は年々高まっており、特にアジア圏では化粧品の製品や成分全体の約23%で「アップサイクル」や「サスティナブル」のキーワードを含むものが活用されているそうです。

「アップサイクル」「サスティナブル」は、世界でも注目されているキーワードだ。

また、長らく肌に良いとされてきたコラーゲンやヒアルロン酸に加え、近年ではセラミドへの注目が高まっているそうです。セラミドの配合量や肌の中からセラミドを誘導するなどの新たな方法を化粧品トップメーカーが模索しているそうで、「カカオセラミド」への期待の高さも窺えます。

カカオ豆の種皮「カカオハスク」が、バイオプラスチックに生まれ変わる。

また、『明治』では「カカオセラミド」とは異なるカカオへのアプローチとして、「CACAO STYLE」というライフスタイルブランドを展開しています。

「CACAO STYLE」では、カカオ豆の種皮であるカカオハスクをアップサイクルして小物や家具、建材の開発を進めていますが、カカオハスクののバイオプラスチックとしての活用可能性について、『ヘミセルロース』代表取締役社長・茄子川じん氏より説明がありました。

バイオプラスチックは植物などの再生可能な有機資源を原料とする「バイオマスプラスチック」と微生物等の働きで最終的に二酸化炭素と水にまで分解する「生分解性プラスチック」の総称です。『ヘミセルロース』が製造する廃棄焼却される植物を活用したバイオプラスチックは、石油由来のプラスチックと比較してCO2を約60%削減でき、さらに海中でも約30日間で90%以上が分解されるとされており、海洋プラスチックの課題解決にもつながる素材として期待されています。

バイオプラスチックの活用で、CO2排出量を削減できる。

研究の結果、カカオハスクには硬い成分と柔らかい成分がちょうど良いバランスで配合されており、バイオプラスチックの製造に向いていることが判明。2023年に100%植物由来のカカオ樹脂プラスチックが誕生しました。すでにこの素材から「マカダミアチョコ」のトレーや化粧品容器の開発が検討されています。

カカオハスクから生まれたバイオプラスチックは、さまざまな用途で活用されている。

さらに、カカオ樹脂プラスチックから繊維の開発にもチャレンジ。Tシャツの制作を目指しています。

茄子川氏は「現在のバイオプラスチック産業では可食部分や遺伝子組み換え素材が使われているが、廃棄・未活用、非可食、完全天然物がスタンダードになればと考えている。『カカオハスク』はまさにそのポテンシャルを持っている」と話しました。

「メイジ・カカオ・サポート」の取り組み。

続いて『明治』マーケティング部 CXSグループ長・木原純氏より、「メイジ・カカオ・サポート」についての説明がありました。2006年から今に至るまで、トレーサビリティ・児童労働への対応・森林減少への対応について継続した取り組みが行われています。

また「CACAO STYLE」の新たな展開として、「カカオスタイルレザー」の開発も行われています。通常の合成皮革に比べ、石油由来の含有物の低減、自然な色合いやカカオ由来の粒感を実現したそうです。

『DIC』と共同で開発された「カカオスタイルレザー」。

他にも、カカオハスクを使った「和ろうそく」の開発やドキュメンタリー映画『巡る、カカオ』の製作・公開、絵本『ミライチョコレート』の制作など、「ひらけ、カカオ。」の取り組みは業種を超えて広がっています。

「CACAO STYLE Product Design Award 2023」の表彰式。

最後に、「CACAO STYLE Product Design Award 2023」の表彰式が行われました。「CACAO STYLE Product Design Award 2023」は、カカオハスクを使ったアップサイクル素材プロダクトのコンペティションで、今回が初の開催です。グランプリを受賞したのは、金達也氏による「カカオハスクで作った 共存する多様性クレヨン」でした。チョコレート作りにおける世界中のさまざまな人々を象徴した色合いで、国境を越えてつながる多様性が共存するデザイン。子どもはもちろん、大人の遊び心をもくすぐり、全世代に気づきをあたえるクレヨンです。

グランプリを受賞した「カカオハスクで作った 共存する多様性クレヨン」。

他に、カカオプラスチックを使ったライト、普段使いのできるカトラリー、壁掛けフックが優秀賞として表彰されました。

さまざまなプロダクトの応募があったそうだ。人気商品「きのこの山」を模したデザインも。

“美味しい”だけにとどまらない、カカオの持つ新たな可能性の数々──。美容や衣類・インテリア等での展開、そして『明治』のサスティナブルな取り組みに、これからも注目が集まりそうです。

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