断熱材はもみ殻断熱、半間(約91cm)拡張した縁側の基礎は、解体した友だちの小屋からもらってきた廃材を利用し、木戸の代わりに入れるガラスのサッシももらいもの。誰かにとっての不用品がわが家を変身させた古民家縁側改修の様子を、この家に住むローカルライターがお届けする。
機能不全だった縁側を拡張してサッシを入れて
築100年以上の古民家に引っ越したのが2016年。少しずつ気長に改修をしているため、いまだに完成していない。たとえば、わが家の縁側。木戸は開けられないようにクギで打ち付けられ、真っ暗で隙間風の多い空間だったので、ずっと何とか改善できないかと思っていたところ、思いがけない提案が舞い込んできた。
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わが家の改修を進めてくれるDIYのボスは、改修中の拠点を持っているDIY仲間のなかでも“ボス”と呼ばれている人だ。ボス宅のサッシを入れ替えたときに出たサッシを、わが家の縁側に使おうとボスが提案してくれたのだ。サッシのサイズに合せて出窓風に窓枠をつくって、サッシを入れるという。
さらに、「どうせ出すなら、縁側を半間出して広くしたら?」とのボスの言葉に、私の妄想は膨らんだ。暗くて狭くて隙間風で寒い縁側が、西日が差し込んで暖かくて明るい縁側に変身するかもしれない。ひなたぼっこをしながらお茶を飲んだり、ハンモックをつるして昼寝をしたり、悪天候でも洗濯物を干せる空間になるだろう。
一度試してみたかったもみ殻断熱も、この狭さなら試しやすいだろう。そう思ったときから、時間を見つけてはライスセンターにもみ殻をもらいに行き、せっせと庭でもみ殻燻炭をつくるようになった。
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まだ使える建築材を、右から左へ循環させるボス
半間拡張した床を支えるために束石(つかいし)を設置し、そこに束柱(つかばしら)を乗せる。この束柱は、小屋の解体をボスが手伝いに行き、その現場から使えそうな材を貰ってきたもの。ボスはいくつかの現場に関わっているので、それぞれの現場から出る不要品をほかの現場へ運び、再生させる「リジェネラティブ(再生させる)」な取り組みを率先して行っている。役割を失いかけた窓や扉、囲炉裏や棚が、それを必要とする人の家で生まれ変わって活用されるのは、不用品を出さざる負えない現場の人からも、それを活用する人からも喜ばれ、廃材の削減にもつながっている。
わが家の縁側改修では、防湿透水シート、屋根に入れた断熱材、もみ殻を入れるための床板などはこうしたもらいものを利用した。屋根のトタンは、母屋の屋根をふき替えたあとに台風で飛ばされ、廃材となってしまったトタンを再利用している。
木戸の上にあった壁はそのまま残してもいいが、土壁を落として見える竹小舞にした。壁に使われていたこの土も、土壁を塗るときにまた使えるので大切にとっておく。
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時間と労力とお金のバランス
お金に余裕がないわが家の改修は、できるところは自分で、できないところは業者ではなくDIY仲間にお願いするようにしている。材料や必要なものは、購入する前にまず聞いてみる。するとどこからか「うちにあるよ」「これ持ってっていいよ」と声が挙がることも。声が挙がらなかったときはリサイクルショップに行って確認。それでも手に入らないときは、お店で購入する。
いつまでに改修を終えなければいけないという期日はないし、材料がそろったとき、重い腰が上がったときがそのときなので、床下断熱もただで手に入るもみ殻を使い、時間と労力をかけてもみ殻燻炭にして入れた。残念ながらもみ殻燻炭の量が足りなくなったが、そこはもらいものの断熱材で臨機応変に対応。
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もらいものの床材もあるが無垢材にこだわったため、カフェ板(国産杉の無垢材)を購入。軽トラを持っていない私は出かけたついでにホームセンターへ立ち寄り、ごく一般的な軽自動車にカフェ板を少しずつ積んで運び、必要なカフェ板を用意した。
理想的空間に生まれ変わったわが家の縁側
サッシが入ると、舞台のように見えていた縁側が急に家らしく見える。
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床を張り終えると、暗くて狭くて寒い「陰」の縁側が、明るくて快適な「陽」の縁側になっていた。
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以前、庭にある渋柿で柿渋をつくって放置していたものがあったので、それを床に塗ってみる。
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木炭を入れて使う昔のコタツに木製のお皿を乗せてテーブルにし、椅子を設置。ソファーやハンモックを配置すると、ゴキゲンな空間が完成した。

ちなみにこれらの家具やハンモックは、全てもらいもの。地元の宿で長年使われていた椅子のセットや、誰かの家で不用品となったものたちなのに、ここでの昼寝は最高に気持ちいい。ソファーで読書をしたり、お茶を入れて休憩したりと大活躍だ。そして、古民家の縁側にはやはり猫が似合う。猫のワラワラも、この場所を気に入ってくれたようだ。
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写真・文:鍋田ゆかり