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フレッシュな生オレンジをまるまる4個も搾った贅沢オレンジジュースが、たった350円。『IJOOZ』の“AI自販機”がつくる、スマートでスイートな社会

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シンガポール発の『IJOOZ』(アイジュース)が、AIと自動販売機(以下自販機)を融合させた革新的なオレンジジュースビジネスを日本で展開しています。フレッシュなオレンジの使用にこだわり、IoTを活用した効率的な運営で、健康的で持続可能なサービスの未来を切り開いています。

目次

AIと融合する新時代の自販機

『IJOOZ』は、2016年にシンガポールで創業されました。創業者のブルース・チャン氏は、エンジニアとしての経験を活かし、大好きなオレンジジュースを手軽に低価格で楽しめる方法を模索していました。同時に彼は、息子に新鮮なオレンジジュースを飲ませることに苦労していたことから、店舗ではなく自販機での販売という方法を選択したのです。

グループCEOのブルース·チャン氏(右)と代表取締役社長のゲヴィン・リ氏(左)

そして現在、『IJOOZ』では購入時に目の前で生のオレンジを搾ったジュースを提供しています。その目新しさと新鮮さが評判を呼び、消費者からも好評を得ています。これは、ブルース・チャン氏がハードウェアとソフトウェアの進化がもたらす可能性を理解し、テクノロジーとイノベーションを駆使することで、小売業界を変革しようという挑戦がもたらした成功例です。『IJOOZ』は、スマートテクノロジーにより、いつでもどこでも手頃な価格で新鮮な食品を楽しむことを可能にしています。

『IJOOZ』が消費者から支持されているのには3つの理由が考えられると、『IJOOZ』代表のゲヴィン・リさんは話してくれました。「1つ目は、目の前でジュースが搾られる“ジュース工場”のような販売機が目新しく、『面白い。買ってみよう!』という気持ちになること。そして2つ目は、生搾りのジュースはとても健康的であること。そして3つ目は、350円という価格が競合と比べても魅力的であることです」。

生のオレンジの日持ちを考慮して新鮮なうちにできるだけ早く消費されるよう、ショッピングモールや駐車場など人が多く集まるような場所を選んで、自販機を設置。その予測が当たって、自販機の前で長い列を作るほど人気を呼んでいる場所もあるそうです。

日本進出は2023年2月。世界でもトップクラスの“自販機文化”が根付いている日本市場に着目し、2年間の綿密な市場調査を経て参入することにしました。現在、関東、関西、九州を中心に約900台の自販機を展開しています。今後は北海道や広島などにも進出して、全国展開を目指していているそうです。

『IJOOZ』の強みは、AIとIoT技術を駆使した効率的な運営にあります。各自販機にはSIMカードが搭載され、オレンジやカップ、ストローの残数はもちろん、温度、故障状況などのデータが各エリアのオペレーターによりリアルタイムで管理されています。AIによって、補充のタイミングや売り切れ予測が可能となり、担当するドライバーがオレンジやカップの補充や、オレンジを搾るユニット部分の交換、故障対応などを的確なタイミングで行って、売り切れで販売機会を失わないようにするなど無駄のない運営を実現しています。

「自販機そのものの状況だけでなく、日本全国のドライバーがどの現場に到着して自販機の操作をしているかなども全て把握できます。このように自販機でのデータ収集がとても重要。オペレーションの改善や今後の計画を立てるためにも、これらのデータを元にしてビジネスを行っています」とリさんは力説します。

健康と環境を考えた持続可能な事業

『IJOOZ』のサービスが支持される理由は、単に新鮮なジュースを提供するだけでなく、健康と環境に配慮している点にあります。同社では、フレッシュなオレンジを使用し、砂糖をはじめとした添加物を加えないジュースづくりにこだわっています。

オレンジの調達には細心の注意を払っており、主にオーストラリアやアメリカから輸入されるバレンシアとネヴァの2種類のオレンジを使用。オレンジは他のフルーツに比べて保存期間が長く、輸送にも適しているため、安定した供給が可能になっています。

日本での販売価格は、1杯350円。これには4個のオレンジを使用して容量が280mlであることを考えると、消費者にとって手を出しやすい価格です。直接運営によるあらゆるプロセスの効率化とデータ分析に基づく適切な価格設定により、このような価格が実現できています。

また、環境への配慮も。シンガポールでは、ジュースを搾った後の皮をジャムやタルトの材料として再利用する取り組みを行っています。日本でも同様の取り組みを模索しており、オレンジの皮を農業や畜産、香水製造などに活用する可能性を探っています。

「日本にはいろんな産業があるので、たくさんの可能性があります。私たちは日本でのビジネスを昨年に始めたばかりで認知度がまだ低く、いろいろな会社との信頼関係を構築中です。さらに、私たちがオレンジの皮などを毎日どのくらいの量を提供できるのかなど具体的なことも提示する必要があり、これから取り組み内容を煮詰めていく段階にあります」とリさんは説明しました。

さらに、地域社会への貢献も視野に入れています。日本国内に複数の工場を設置する計画があり、各地域での雇用創出を目指しています。現在、埼玉県川越市ある倉庫では、オレンジの洗浄などの作業を地域に依頼することで現地での雇用を生み出しているほか、将来的には障害のある方の雇用も検討しています。

このように『IJOOZ』は、消費者に健康的な商品を提供するのはもちろんのこと、環境への配慮や地域社会への貢献をも視野に入れた取り組みも行って、サステナブルな経済活動につなげています。

テクノロジーで小売り販売の未来を大きく変えたい

『IJOOZ』の挑戦は、オレンジジュースの自販機の普及だけではなく、テクノロジーを駆使したスマートリテール(テクノロジーを用いた新しい購買体験ができる小売店)の世界を展開していく夢を持っています。

ここ数年で、現在の約900台から約6万台まで増やすことを目指して、日本国内での自販機展開を加速させようとしています。これにより、より多くの消費者が新鮮で健康的なジュースを手軽に楽しめるようになります。

さらに、オレンジ以外のフルーツを使った飲料も手がける構想があり、また、AIを活用したスマートコーヒー自販機の開発も視野に入れています。単に飲料を提供するだけではなく、消費者の嗜好を学習し、その人にとって最適な飲み物を提案するサービスを新たに生み出す可能性を秘めています。

そして、さらには「スマートコンビニ」の導入を目標にしています。AIとIoT技術を駆使し、在庫管理や販売予測などがAIによって制御され、人手をほとんど介さずに運営されるようになります。消費者にとっては、より便利で自身の嗜好に応じた買い物体験が可能になります。

「このようなテクノロジー主導のビジネスモデルは、人工知能によって業務効率化とコスト削減を可能にします。それは単に企業の利益を増大させるだけでなく、持続可能な形で消費者に便利さなどをはじめあらゆる価値を提供し続けることができるようになります」とリさんは同社のこれからの役割について話しました。

『IJOOZ』の挑戦は、単にオレンジジュースを売るという枠を超え、私たちの日常生活をより便利で豊かなものに変えていきます。それは、私たちの想像をはるかに超えた、便利で楽しい未来かもしれません。

text by Mari Kubota

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