サスティナブル・ブックガイド SDGs×山藤旅聞さん

特集 | 未来をつくる本 | サスティナブル・ブックガイド SDGs×山藤旅聞さん

 新型コロナウィルスの影響で社会が大きく揺さぶられ、さまざまな分野で大きな変化が起ころうとしています。これからの未来はどうなっていくのでしょうか? 不安定な社会で暮らし、生きていくためのヒントをくれる、そんな“未来をつくる本”を紹介します。


SDGs×山藤旅聞さん


『Think the Earth』と協働し、SDGsを取り入れた出前授業や講演を行っている山藤旅聞さん。ただ、「『SDGsとは?』みたいなSDGsを教える授業はしていませんので」と笑顔で釘を刺します。今回もそれに関する本はありません。よりよい未来をつくるための5冊を選びました。


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左/22世紀を見る君たちへ─これからを生きるための「練習問題」(平田オリザ著、講談社刊)。右/気候変動の時代を生きる─持続可能な未来へ導く教育フロンティア(永田佳之著・編、山川出版社刊)

 SDGs(持続可能な開発目標)は、よりよい未来を見ようとするときの「窓」です。目標地点ではなく、未来へ向かうための入り口であり、手段だと思います。そして、「窓」から未来を見るだけでなく、未来をつくる行動者になることが大切です。世の中の動きはますます速くなり、人々が物事を考えるスパンもどんどん短くなっている今だからこそ、100年レベルの想像力を働かせてほしいです、特に子どもたちには。100年の時間軸で物事を考え、行動するための本を選びました。


 僕らは地球という星に生まれ、自然資本という土台に乗り、ほかの生物たちと共有しなければいけないのに、この100年間ほどは経済を優先し、自然を破壊し続けてきました。破壊された自然を復活させるには、大量生産・大量消費・大量廃棄の時代の価値観や行動様式を見直す必要があります。


 洋服1着をとってみても、原材料はどこで、誰が、どんなふうに採取したものを使って、どんな環境でつくられ、どうやって運ばれてきたかなどを知ることが大事です。けれども、店員さえ知らないようなことを調べるのは大変です。そこで、ものが生まれるところから終わるまでを身をもって体験してみようと、新渡戸文化学園で東京都・にある耕作放棄地を借り、児童・生徒たちと一緒に耕し、オーガニックコットンを育て、収穫。加工して販売するまでを目指して活動しています。完成したTシャツにいくらの値をつけたいか数名の生徒に尋ねると、平気で「5万円!」「10万円!」と。『大量廃棄社会』でレポートされている「恵方巻きの食品ロス」とは真逆の世界を子どもたちは身をもって学んだからこそ、自信を持って高い値段をつけられるのでしょう。新型コロナウィルスの事態が収束したら工場見学にも行きたいです。


 着古されたTシャツはいつかは捨てられますが、オーガニックコットンなので土に還ります。化学繊維のようにマイクロプラスチックにはなりません。そこまで体験すると、ものだけでなく自分の命や人生にさえ責任を持てる大人に育っていくと思います。檜原村での活動はSDGsで言うと「12・つくる責任つかう責任」に該当しますが、該当させることが目標ではありません。責任について、子どもたちが自分なりの答えを見出すこと。それによって、100年後のよりよい未来を想像し、つくることが最大の目標なのです。


山藤さんおすすめの5冊


●22世紀を見る君たちへ─これからを生きるための「練習問題」(平田オリザ著、講談社刊)
22世紀を見据えて生きるとき、本当に必要な力は何か? 変化する大学入試についても述べられているので高校生向けの本とも思われますが、子どもたちが生きる未来の土台をつくる親も、一般の大人も手にすべき一冊です。


●気候変動の時代を生きる─持続可能な未来へ導く教育フロンティア(永田佳之著・編、山川出版社刊)
教育者である著者が気候変動による危機をアカデミックに、かつ、わかりやすい言葉で書いた本。気候変動は観光業や地域医療などあらゆる分野に影響を及ぼすことが理解できます。海外のユニークなアクション事例も紹介。


●大量廃棄社会─アパレルとコンビニの不都合な真実(仲村和代著、藤田さつき著、光文社刊)
朝日新聞の記者がアパレルやコンビニ業界の「不都合な真実」を取材。年間約10億着の服や大量の恵方巻きが廃棄されている実情をレポートしつつ、大量廃棄社会に一石を投じる企業も紹介。そういう企業を応援する消費者になることを呼びかけます。


●経済学が世界を殺す─「成長の限界」を無視した倫理なき資本主義(谷口正次著、扶桑社刊)
経済成長というサイクルのなかに自然資本を維持するサイクルを織り込むことが重要。それは簡単ではなく、木1本を復活させるのも数十年はかかります。ただ、その時間感覚を持って経済活動を行わないと「人類は滅びますよ」と警鐘を鳴らします。


●現代社会はどこに向かうか─高原の見晴らしを切り開くこと(見田宗介著、岩波書店刊)
大量生産・大量消費・大量廃棄の時代を経た今、その価値観は間違いだと僕たちは気づき始めています。未来を生きる子どもたちはより強くそれを感じています。過去から学ぶのではなく、未来からバックキャスティングして今を考えようという本。


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左/大量廃棄社会─アパレルとコンビニの不都合な真実(仲村和代著、藤田さつき著、光文社刊)。中/経済学が世界を殺す─「成長の限界」を無視した倫理なき資本主義(谷口正次著、扶桑社刊)。右/現代社会はどこに向かうか─高原の見晴らしを切り開くこと(見田宗介著、岩波書店刊)

 

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