ローカルメディア編集者|影山裕樹さんが選ぶ「地域を編集する本」を紹介

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 今、注目されているローカルメディアの楽しさや、つくる目的はどんなところにあるのだろう? 全国のローカルメディアを取材し、自身もさまざまな形態で制作している影山裕樹さんが、ローカルメディアをつくりたい人に向けて、その意義を問いかける本を紹介します。


影山裕樹さんが選んだ、地域を編集する本5冊


影山さん選書まとめ
(左上から時計回りに)1.『小さな雑誌で町づくりー「谷根千」の冒険』/2.『中島のてっちゃ』/3.『新エディターシップ』/4.『メディアの法則』/5.『ビールでブルックリンを変えた男ーブルックリン・ブルワリー起業物語』

 『小さな雑誌で町づくり「谷根千」の冒険』は、1984年に創刊した元祖・地域雑誌『谷中・根津・千駄木』の制作風景を描いた奮闘記です。東京都台東区の谷中と文京区の根津、千駄木は隣り合った地域で、その頭文字を取って「谷根千」と呼ばれて親しまれていますが、まちの読者が雑誌名を『谷根千』と略して呼んでいたことから生まれた言葉です。


『谷根千』は著者の森まゆみさんと仰木ひろみさん、山崎範子さんの3人の女性が地元の市民目線で、町工場やゆかりのある文人、銭湯など多岐にわたるテーマで取材し、地域を紹介していました。雑誌づくりにとどまらず、歴史ある建物を保存し、「谷根千」の町並みを守ろうという運動にまで発展しました。「谷根千」を愛する彼女たちの意思は世代を超え、例えば複合施設『HAGISO』を運営する宮崎晃吉さんにも受け継がれ、今の「谷根千」の風景がつくられています。「メディアは一方通行ではなく、双方向であるべき」という『谷根千』の目指すあり方が、つくり手と読者を一つにし、地域の運動へと広がるパワーになっていったのだと思います。


 もう一つ、元祖を。あんばいこうさんの『中島のてっちゃ』です。今でこそローカルメディアやひとり出版社が脚光を浴びていますが、それを50年近く前から秋田県で実践されてきたのがあんばいさんです。『無明舎出版』というひとり出版社を立ち上げ、自身で取材して書いた『中島のてっちゃ』を発行しました。てっちゃは秋田市内の飲み屋街を出入りしていた流しの尺八演奏者で、地元では知らない人はいないほどの有名人です。あんばいさんはてっちゃ本人や周囲の人たちに取材し、その足跡を辿り、『無明舎出版』の最初の一冊として世に出しました。当時は東京に『地方・小出版流通センター』という取次会社が設立され、地方の小さな出版社の本が都会の書店にも並び、「見える化」してきた時代で、あんばいさんもその流れに乗って全国の書店に『無明舎出版』の本を卸してきたそうです。


 たくさん立ち上げられているローカルメディアですが、あくまでも手段だと考えたいです。例えば、若者人口の流出という課題があって、その解決のためには移住した若い人と地域のお年寄りが仲良くすることが必要だから、その手段としてのローカルメディアをつくるとか。そんな目的意識を持ってつくるメディアこそが、「谷根千」のように、地域にダイナミズムを生み出すものと信じています。


▶ ローカルメディア編集者|影山裕樹さんの選書 1~2
ローカルメディア編集者|影山裕樹さんの選書 3~5

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