地方で働く女性、都心で働く女性、子育てをしながら働く女性、さまざまなライフスタイルを送る女性たちを取り上げ、女性の健康課題や社会課題について考える対談コンテンツ『フェムコト』。
今回対談させていただいたのは、柴麻美さん。バレーボール経験者である、4歳上のお姉さんとお母さんの影響から、自身も小学生でインドアのバレーボールを始めることに。10年間の競技生活を経て、大学生になってからはビーチバレーボールに転向しました。今回は、柴さんのこれまでのビーチバレーボール人生や、女性アスリートと生理についてなど、気になる素顔に迫ります。
ー柴さんの3つのルールー
RULE1. ビーチバレーボールはおしゃれして行う
RULE2. 目の前の勝利にこだわる
RULE3. 人に干渉されずにやりたいことをやる
〈Profile〉
ビーチバレーボール選手・柴麻美さん
しば・あさみ 1995年9月18日生まれ。神奈川県出身。川崎市立橘高等学校、産業能率大学を経て、株式会社帝国データバンクに所属。湘南ベルマーレひらつかビーチパークをホームビーチとする。2023シーズンから丸山紗季選手とペアを結成。2024年パリオリンピック、そして2026年、日本で開催されるアジア大会出場を目指す。
Instagram:@_asamishiba
母親に「考えが甘い」と激励され続けたビーチバレーボール
フェムテックtv:インドアのバレーボールからビーチバレーボールに転向して約4年。そのきっかけはなんだったのでしょうか?
柴さん:中学時代に関東(関東中学校バレーボール大会)優勝と全国大会ベスト8という結果を出せて、高校も神奈川県の強豪校で春高バレー(全日本バレーボール高等学校選手権大会)出場やインターハイ(全国高等学校総合体育大会)優勝も経験できました。大学進学の際、そもそもこれから先もバレーボールをやりたいかどうかというところで、まず迷ったんです。大学での競技生活はそんなに甘くはない。結果が出せずに両親に学費を払ってもらうのは、私の性格的に絶対無理! と思ったんです。レギュラーになれなかった時に、続けていく自信もなかった。活躍できないのは、おもしろくないって思っちゃうんですよね(笑)。
フェムテックtv:そこで活躍の可能性があったビーチバレーボールに転向した、と。
柴さん:小学生時代の恩師に相談しに行ったんです。そこで産業能率大学のビーチ(バレーボール)のヘッドコーチとも話す機会があって「ビーチに向いてる」と言われ、決めました。
フェムテックtv:柴さんのどんな面を見て“向いてる”と思ったのでしょうか。
柴さん:私のプレーって「性格が悪い」って言われるんです。相手が嫌がるところを狙っていく。そういうプレーが得意なので、人数が2対2と少ないビーチでは、より活かせると考えたんだと思います。2人だと、どちらも活躍しないと勝てない。“活躍したい”という性格的な面もわかった上で、ビーチを勧めてくれたんだと思います。
フェムテックtv:実際にビーチに転向していかがでしたか?
柴さん:インドアとは違って、レシーブしたりスパイクを打ったりしないといけない。バレーボールとはいえ、インドアとビーチでは同じスポーツと思ったらいけないんですよね。大学入学当初は、正直チョイスを間違えたなと思うくらい何もできなくて。 1年目で挫折を感じました。だからおもしろくもなかったです。
フェムテックtv:それでもやめなかった理由は?
柴さん:やめたいと思いました。ただそれを母に伝えたら「考えが甘い」と厳しい言葉が返ってきて。自分で決めたことは最後までやりなさいという教えだったんです。
フェムテックtv:それから徐々におもしろくなってきた?
柴さん:急激にできることが増えるって今まで経験がなかったんですが、ビーチはある時から急にできることが増えたと感じたんです。別のスポーツとはいったものの、きっとこれまでのインドアのバレーボール経験があるからだとは思います。
生理中の試合や練習ではタンポンの紐は短くカットする
フェムテックtv:インドアとビーチでは、競技服も異なりますよね。肌の露出が多いことに、抵抗はありませんでしたか?
柴さん:そこは意外とありませんでした。確かにビーチ=水着のイメージがあると思うし水着は動きやすいんですが、短パンをはいてプレーしてもいいんですよ。
フェムテックtv:そうなんですね! 知りませんでした。日焼けなど美容面で気を使うことも多そうですよね。
柴さん:紫外線を浴びるので、日焼け止めは必須。ただ、それでも防ぎきれない(笑)。もともと肌は白かったんですよ。あまりこだわるタイプではないので、日焼け後のケアは化粧水と乳液で保湿をするくらいですが、最近はパックにハマってます。
フェムテックtv:健康面での変化はありましたか?
柴さん:インドアのバレー時代より、体調を崩さなくなった気がします。太陽を浴びているからかもしれませんね。
フェムテックtv:やはり日に当たるのは大切なんですね。女性特有の健康課題に直面したことはありますか?
柴さん:私は生理痛がひどいので、練習や試合の日と当たってしまったときは鎮痛剤を飲みます。ただオフの日は、なるべく薬は摂らないようにしています。
フェムテックtv:女性アスリートにとって生理周期は大変なことも多いかと思います。何か対策していることなどはあるのでしょうか?
柴さん:水着からタンポンの紐が見えると困るので、紐は短くカットしてマメに替えるようにしています。それから、(競技の時は)パートナーと水着の柄を同じにしないといけないんですね。なので、どちらかが生理のときは暗い色の水着を選ぶようにはしています。
フェムテックtv:生理の時はメンタルが揺れる方も多いですが、柴さんはいかがですか? 精神面とプレーは大いに関係しますよね。
柴さん:女子選手の生理は、身体的にはもちろん、それ以上にメンタル的な部分への影響が大きいですよね。ビーチは特に2人組での競技なので、お互いの不調はなんとなく気づくんです。私はPMSもそれなりにひどかったんですが、20代後半になると“そろそろ生理だからか”っていうのがわかってきました。理由がわかるだけでだいぶ落ち着いてきましたね。
アスリートだから〇〇しちゃいけないと制限しない
フェムテックtv:インスタも拝見しました。競技服の着こなしが、すごくおしゃれですよね。
柴さん:ありがとうございます! 私はサングラスをたくさん持っているんですけど、遠征に行く前は、どれにしようかな? と2個くらい選んで、それに合わせてレンズをチョイスしています。あとは髪を結ぶヘアゴムとユニフォームの色を合わせていますね。自分のモチベーションを上げる秘訣です。 「アスリートはおしゃれしちゃいけない」と言う人もいますが、私はアクセサリーを身につけてプレーしています。プレーに支障はないし、むしろつけているほうが気分が上がる。プレー中に写真を撮ってもらえる機会も多いので、少しでもおしゃれしていたい気持ちもあります。
フェムテックtv:素敵ですね! 普段は朝から練習やトレーニングなどをこなす日々だと思いますが、お休みの日はどのように過ごされていますか?
柴さん:ベッドでゴロゴロしている時間が大好きで! Netflixを観ています。自炊もしますが、そこまでストイックなことはしません。小麦を摂りすぎると肌荒れしてしまうので、自炊では摂らないけど、外では食べます。基本、食べたいものを食べています。
フェムテックtv:オンとオフがハッキリされているんですね! では、今後描いているライフプランはありますか?
柴さん:自分のパフォーマンス的に100点が出せなくなったなと思ったら、スパッと選手をやめると思います。オリンピックなど大きな大会に出たいという気持ちは、もちろんある。ただ結局は、目の前の大会に勝ってポイントを積み上げていくしかないんです。自分にプレッシャーをかけたからといって、良いパフォーマンスができるわけでもないんですよね。
フェムテックtv:人生は地続きですものね。最後に、柴さんにとってのウェルビーイングな社会とは?
柴さん:個人的には、身体の健康はある程度運動して、外に出て美味しいもの食べていたら保てると思うんです。ただSNSが普及している時代に、メンタルの健康を保つのは難しい。だからこそ、人に干渉されず、あまり他者を意識せず生きていければなって思います。自分がやりたいことをして、会いたい人に会う。そうすることで、私の心の健康は保たれているなと感じます。