新鮮な野菜を良心的な価格で、サクッと買える。そんな、消費者にとってメリットの多い商店の一つに、「ドライブスルー八百屋」がある。運営するのは、野菜の卸売業を営む「株式会社フードサプライ」。同店が生まれるまでの経緯、サービスにかける思いなどを聞いた。
新型コロナウイルスによる影響が各所に及ぶなか、買い物の様式においても新たなトレンドが生まれている。ネット通販や、あらかじめ指定した場所に非対面で荷物を置く「置き配」、テイクアウトのさらなる流行が、代表的な例として挙げられる。また、「ドライブスルー形式」での商品売買も、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに人気を集めた買い物様式だろう。
ここで紹介するのは、「ドライブスルー八百屋」なる商店。「ドライブスルー八百屋」とは、その名のとおり、消費者が車に乗ったまま、野菜を購入できる八百屋だ。人との接触を最低限に抑えられるうえ、新鮮な野菜をお得な価格で購入できることから評判を呼び、じわじわと人気が拡大している。同店を運営するのは、東京都大田区東海を拠点に青果卸売業を営む「株式会社フードサプライ」。同社の代表を務める竹川敦史さんに、「ドライブスルー八百屋」が生まれた経緯などをうかがった。
「当社では、各地域にいる農家さんから野菜を買い取り、一般企業や飲食店などに野菜を卸す事業を展開しています。しかし、新型コロナウイルスの流行に伴い多くの飲食店が休業した結果、売り上げが通常時の3割ほどにまで落ち込んでしまいました。また、農家さんから買い取った野菜も、配送センターに滞留するようになってしまって。売り上げが急激に落ち込んだことに、危機感を感じましたね。また、どの野菜も、農家さんが丹精こめて作った野菜なので、『廃棄するわけにはいかない。どうにかして売らなくては』と思いました」
行動の制限が呼びかけられたことが影響し、一般道も高速道路も空いている。出かけることもできず、自宅で時間を持て余している人も多い。こうした状況を逆手に取れないか……。こう考えたすえ、思いついたのが「ドライブスルー形式」の八百屋だという。
「新鮮で手頃な価格の野菜を、サクッと買えるサービスは、おそらく多くの人が魅力的に感じるはずです。息抜きにドライブを楽しもうと、配送センターまで来てくれる人も多いのでは、と考えました」
こうして生まれた「ドライブスルー八百屋」は、またたく間に大人気に。次第に全国に人気が波及し、野菜を扱うセンターも増加。現在は、全国に合計22のセンターが設けられている。
また、「ドライブスルー八百屋」を利用した人々から、「1分程度の滞在時間で買い物ができるので、安心だしとっても便利」、「コロナが収束しても、ぜひサービスを続けてほしい」、「農家さんや『フードサプライ』の皆さんを応援しています」といった激励の言葉が続々と寄せられているそう。こうした言葉は、「ドライブスルー八百屋」が人々のニーズを反映したサービスである証拠といえるだろう。
「農家さんからも、『売り上げに対して不安があるなか、野菜が売れて助かっている』といった言葉をいただくことが多いです。『ドライブスルー八百屋』は、商売の基本である『五方良し』が成り立っているサービスだと思います。コロナ収束後は、センターの数は減らすものの、サービスを継続していくつもりです」