【ソトコト×日本ワーケーション協会連載】ソトコトと日本ワーケーション協会がコラボして、各分野、各地域で活躍するワーケーション推進者をゲストに迎えて、毎回対談。ワーケーションにおける現在地や未来の展望を語ります。
前回の第3回目(前編)に続いて、今回は第3回目の中編で、ゲストは、「ワーケーション社労士」こと岩田佑介さん。前回は、なぜワーケーション社労士になったのかのお話でしたが、今回は、企業がワーケションを実施する意義と効能について深く迫ります。
ワーケーションで社員同士が1日中一緒に寝食を過ごす効能
ソトコト 岩田さんは社労士として、クライアントの企業にどのような流れでワーケーションを提案されているのですか?
岩田 クライアントから先に「ワーケーションを導入したい」と相談されることは、ほぼないですね。まず企業からの相談は「社員の離職率を下げたい」「社員の一体感を醸成したい」など、働くモチベーションやエンゲージメント向上の課題の相談が多いです。その解決策としてワーケーションを提案しています。
ソトコト 実際にワーケーションを導入した企業からは、どのような反響がありますか?
岩田 「深いところで社員同士の交流が生まれて、結果お互いがわかり合える良い機会になった」と喜んでいただいています。自己開示するワークショップを取り入れたり、温泉に入ったり、地元の美味しいものを皆で食べに行ったり、夜語らいながらお酒を飲んだり……と、1日の中で仕事仲間とたくさんの時間を共有することで、普段できない会話が自然と生まれます。話は現在、過去、未来と多岐に渡っていき、「この人ってこう考えているんだ!」「こういう人なんだ!」って、会社の中ではわからない部分をお互い知ることができます。「だから、普段、会社でこういうことを厳しく言ってるんだ」と、社員同士の理解が深まっていくんです。

ワークショップの様子。
ワーケーションは、大人の修学旅行!
ソトコト ワーケーションは、社員同士の結束力を上げる研修旅行的な意味合いもあるのですね!
岩田 はい! その結果、日頃の仕事の取り組み方や、社員同士の仕事の頼み方が変わります。その人のことを理解した上で、仕事を依頼できるため、双方にポジティブな関係性が生まれます。私はこの行動変容を「修学旅行効果」と呼んでいます!
ソトコト 修学旅行効果ですか!
岩田 修学旅行の後、親友になることって、すごく多いんです。同じクラスの人っていう薄い関係性だったのに、修学旅行先でたくさん時間を共有する中で、お互いいろいろな部分を知って、距離が近くなる…関係距離が一気に縮まる。実は気が合うことがわかったり、とか。つまりワーケーションは、大人の修学旅行だと!
ソトコト 結果、働くモチベーションが上がる、会社へのエンゲージメントが上がる…素晴らしい!
岩田 企業が最初にワーケーションを実施する時は、遠すぎない距離がおすすめです。東京にある企業なら小田原とか熱海とか。新幹線で30分、40分ですぐ着きますし、温泉もあり、海も山もあって、ちょっとしたリゾート感もありますし。
岩田さんが推奨する「働き方のアップデート」とは⁉
ソトコト 話は変わりますが、岩田さんのクライアント企業では、リモートから出社回帰の意向は多くなっていますか?
岩田 そうですね。私のクライアントで、中小企業やベンチャー企業から「リモートを止めたいです」と相談が多くなりました。リモートを止めている大手企業が多いのも要因です。そんな時、私は「大手はリモートを止めても人を採用できるかも知れるかも知れませんが、貴社は本当に大丈夫ですか?」ときっぱり答えます。つまり、きちんと現実をお伝えした上で、ワーケーションといった違う提案をしています。採用市場では大手より中小が苦戦しやすいのは否めません。より良い人材を採用するにあたり、より一層「働き方の柔軟性」を上げることが重要です。
ソトコト 働き方の柔軟性を上げるには、どんなことが必要なのですか?
岩田 「働き方のアップデート」ですね。私は「所属の自由度という変数、場所と時間の自由という変数…この2つの変数がもっと自由になっていくことが、働き方のアップデートである」と定義しています。ワーケーション社労士として話す機会があれば、必ずこの定義を話しています。この話をここ数年、毎年とある大学でたくさんの学生たちに講義しています。講義初年度は「ワーケーションのような働き方があるなんて、夢のようです」という反応でした。しかし、ここ最近では「ワーケーションはダメという理由が理解できません!」と、学生はリアクションします。「テレワークがOKなのに、ワーケーションがNGなのは論理的におかしい」と…。

いろんな場所で「働き方のアップデート」を提唱。
ソトコト 凄い変化ですね!
岩田 売り手市場というのも、変化の要因の一部かもしれません。副業ができない会社や、男性の育児休業が取れない会社には募集しない、という学生からの声も聞こえてきています。企業は若手が採用できないと嘆く前に、自社の働き方のOSが古くないかを確認して、アップデートしていく努力をしなければ、時代に置いていかれます。例えば、少しデジタル化を取り入れた企業が「うちはiPhoneを取り入れたから大丈夫」と思っていても、初代iPhoneには、Slackのような優秀なアプリは入りません。つまり、古いOSのままでは、若くて優秀な社員は採用できないのです。
ソトコト 非常にわかりやすいです。
岩田 とはいえ、何でもかんでも最新版がいいというわけではありません。最新版をアップデートすると既存のアプリが動かなくなってしまうことがあるように、社員に負担がかかることもありますから。社員の様子を見ながら適切なアップデートをしていきましょう、と伝えています(後編に続く)。
前編
「ワーケーション社労士」登場!否定派だった社労士が、ワーケーション伝道者になるまで…【ローカル×ワーケーション⑧】
後編
士業や管理職こそワーケーション! 「企業の組織作りには時間が大切」を身体で体感!【ローカル×ワーケーション⑩】
【岩田佑介プロフィール】
岩田社会保険労務士事務所。ワーケーション社労士 ®。パソナにて官公庁の地方創生プロジェクトの立ち上げに従事。 2016年よりライフネット生命保険に参画し、人事部長としてテレワークや兼業・副業など働き方改革を統括したのち、独立。2021年より観光庁の「新たな旅のスタイル促進事業」「ワーケーション推進事業」のアドバイザーに就任。著書に「図解労務入門」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、「ベンチャー・スタートアップ企業の労務 50のポイント」(セルバ出版)、「経営戦略としてのワーケーション入門」(金融財政事情研究会)など。
【一般社団法人日本ワーケーション協会プロフィール】
ワーケーションを通した「多様性が許容される社会実現」を目指し、2020年7月に発足。300を超える会員(自治体・企業・個人)とともに、様々な取り組みを行っています。












