「海なし県」なのに、なぜかマグロ消費量が全国トップクラスの山梨県。その謎を解く鍵が、実は「物流」にあったことをご存知ですか? 先日、甲斐市と笛吹市の小学生たちが、そんな意外な歴史と現代の物流を学ぶユニークな授業に参加しました。昔は馬、今は冷凍トラック。時代を超えて、私たちの食卓と海をつなぐ知られざるドラマが、子供たちの目の前で動き出しました。
「海なし県」の食卓に、なぜ新鮮な魚が?
山梨県といえば、四方を山に囲まれた「海なし県」。それなのに、甲府市はマグロの消費量が全国2位(※)という驚きのデータがあります。
12月9日、この不思議な関係を紐解く特別授業「海と陸の流通教室」が、甲斐市立竜王小学校と笛吹市立石和西小学校で開催されました(主催:一般社団法人海と日本プロジェクトinやまなし)。子供たちは、ただ座って聞くだけでなく、実際のトラックに乗り込み、海と山をつなぐ「見えない糸」の正体に迫りました。
馬からトラックへ。先人たちの知恵と努力
授業の前半では、山梨県埋蔵文化財センターの森原明廣所長が登壇。かつて駿河湾で獲れたマグロは、馬の背に揺られ、富士山の西側を通って甲府まで運ばれていたそう。「標高が高いルートを通ることで、鮮度を保っていた」という先人の知恵に子ども達も興味津々。「甲斐国では、マグロが流通する環境の中にあるものの、貴重な魚で、お祝いの席などでおもてなしの食材として提供されていた」として、現在の山梨県の食文化と関連が深いと話しました。
また山梨県の特産である「鮑の煮貝」についても、醤油樽に漬けられて運ばれることで、輸送中に味が染みて美味しくなったというエピソードが紹介されました。まさに物流が生んだ食文化の奇跡です。

マイナス10℃の世界を体験!現代の物流
後半は、校庭に集結したトラックを使っての実地体験へ。山梨県トラック協会青年部の協力のもと、子供たちは巨大なウイング車の荷台や、冷凍車の内部を見学しました。

特に盛り上がったのは、マイナス10℃の冷凍車体験。「うわっ、寒い!」「これなら魚も腐らないね!」と歓声を上げる子ども達。私たちの食卓に新鮮な魚が届く背景に、高度な技術とドライバーさんの努力があることを肌で感じていました。
海を知り、未来へつなぐ
「山梨からゴミを出すと、海に流れて美味しい魚が食べられなくなるかもしれない」。授業後の感想からは、自分達の生活が海と直結していることへの気づきが伺えます。

海から遠い場所に住んでいるからこそ、海を想う。物流という視点から見えてきたのは、単なるモノの移動ではなく、人と人、山と海をつなぐ温かい絆の物語でした。
※総務省統計局「家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(令和4年~6年)平均)」


















