作家や地域の方々とともに、「大地の芸術祭」を支えるサポーター「こへび隊」。彼らの活動をアシストする『越後妻有里山協働機構』の佐藤あゆさんに、芸術祭のサポーターを受け入れる際の心構えをつくる本を紹介してもらいました。
選者 category:アート
「こへび隊」に参加する方々は小学1年生から80歳代まで、地元だけでなく、大都市圏や海外からの参加もあります。人によって1日だけの参加もあれば、短期的に住み込むなどライフスタイルに合わせて関わる時間もさまざま。会期ごとに新規の参加者が加わったり、中心的に動いてくださる方もライフステージの変化に伴い、2、3年で入れ替わる流動性も特徴です。
このように「こへび隊」への参加者が新旧入れ替わる中で、変わらず伝えていかなければいけないことは何か。それを考えさせるのが、「大地の芸術祭」の総合ディレクター・北川フラムさんが、アートによる地域づくりとなる芸術祭がいかに構想され、実施してきたのかを書いた『美術は地域をひらく』です。開催年によって新作も設置されますが、開催当初から地域に残り守られている恒久作品も200点以上あります。それは、芸術祭のコアやコンセプトが23年間変わらないからです。芸術祭が長く続く中で、何が変わり、変わらないのか、そして主催者が何を考え、なぜこの地で芸術祭を実施しているのか、そういったことを掘り下げて知ることができます。
国内外から大勢の人が「こへび隊」として、「大地の芸術祭」に携わっています。「こへび隊」をサポートする『越後妻有里山協働機構』のスタッフは、「こへび隊」のみなさんが活動しやすい環境をつくる必要があります。そのうえで参考になるのが、書籍『サードプレイス』です。第一の家、第二の職場、そして見知らぬ者同士が気楽に混交する第三の場所が「サードプレイス」で、この「サードプレイス」では、居心地のよい新しいコミュニティが形成されます。「こへび隊」には、バックグラウンドも価値観もさまざまな人が集まっています。彼らがどこに住んでいて、どんな職業なのかにとらわれることなく、彼らが一人の人間として活動しやすい環境もコミュニティの一つだと考え、それを設定して整えるのも、私たちの役割だと考えています。
原 広司著、彰国社刊
松村圭一郎著、ミシマ社刊
─コミュニケーション能力とは何か
平田オリザ著、講談社刊
世界に類例のない、壮大な地域づくりプロジェクト「大地の芸術祭」の核心にある、協働の実践と全貌がまとめられた本。地域と人々が、芸術祭とどう関わるのかをしっかり理解し、説明するための教科書的な一冊です。
サードプレイス─コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」/レイ・オルデンバーグ著、忠平美幸訳、みすず書房刊
情報・意見交換の場、地域活動の拠点として機能する「サードプレイス」の概念を、社会学の知見から論じています。芸術祭自体が、「サードプレイス」になる可能性があるととらえて、環境づくりの参考としています。