山梨県都留市に住み、大学時代は学生と地域の人が交流するコミュニティカフェの経営を、現在はシェアハウスやウェブのキャリアスクールを運営する、黒澤駿さん。「住む」という概念をときに狭く、ときに広く捉えながら、生き方を学んだ本を紹介。
『cafe sowers』を始めたこともチャレンジだったのですが、続けていくことはもっとチャレンジでした。そのときに読んだのが、『続・ゆっくり、いそげ』です。僕が理想とするカフェは、地域の人々が集い、おしゃべりや、勉強や、仕事をしながらコーヒーを飲み、食事をしている空間です。地域に解け込み、人々の暮らしが垣間見え、まるで「住んでいる」かのように存在できるカフェ。『cafe sowers』もそんなカフェを目指しましたが、持続させるには経営目線が必要に。ところが、著者の影山さんは、「事業計画をつくるのをやめた」と書かれています。店舗を経営するうえで事業計画を立てることは最重要事項です。ただ、経営の目線で計画を立てると、頭の中の9割以上が「しなければならないこと」で埋め尽くされ、それでは地域に求められるカフェの運営は難しいと、事業計画をやめたそうです。その発想の転換に驚かされました。
『売上を、減らそう。』では、地域のコミュニティについて考える前に、カフェ内のコミュニケーションを育むことが重要だと教えられました。「従業員の生活をより輝かしいものにすることで、結果的に私もやりたいことができるようになりました」ということを著者の中村さんが書かれているように、カフェのスタッフや仲間とのつながりを強くすることが、売り上げを向上するよりも大事だという気づきを与えられました。
当然ですが、地域に住むにはお金が必要です。そのためにも僕は、地域の空き家を活用したシェアハウスの運営や、ウェブを使った短期移住型キャリアスクールの運営に従事しています。仕事で出会った住人や受講生も都留市や山梨県に住んだり、関係人口になったりしています。売り上げをアップすることよりも、彼らとの交流の時間や、地域に住む環が広がることを大切にしながら仕事と向き合い、大好きな都留市に住んでいることに喜びを感じています。
外山滋比古著、筑摩書房刊
高橋久美子著、KADOKAWA刊
江國香織ほか著、講談社刊
100食限定の国産牛ステーキ丼専門店『佰食屋』のオーナーが、「売り上げを減らすこと」によってやりがいのある働き方が可能になったことを示した本。売り上げよりも、スタッフや仲間との関係づくりの大切さを学びました。
ゆっくり、いそげ─植物が育つように、いのちの形をした経済・社会をつくる/影山知明著、クルミド出版刊
東京都西国分寺市のカフェ『クルミドコーヒー』の店主・影山知明さんが書かれた『ゆっくり、いそげ』の続編です。地域とともにあるカフェが第一に考えるべきは、業績向上ではないことに改めて気づかされました。