おにぎりから始まるお米特集。『ロフト』が出会ったのは『旅するおむすび屋』菅本香菜さん。日本各地を訪れ、その魅力を伝える彼女だからこそ知る、おいしい米、塩、海苔。
菅本香菜(すがもと・かな)さん
目次
改めて味わいたい、お米のおいしさ。
簡単に作って食べられる おにぎりをきっかけに。
自前の青い割烹着を身にまとい、笑顔で三角形のおにぎりを優しくにぎる。そして手際よく海苔を巻く。完成したおにぎりには菅本さんの愛情がたっぷり。全国を訪れ、出合った人々を虜とりこにしてきたおにぎりだ。
食への関心がそれほど高くない人にも興味を持ってもらうきっかけになればと、菅本さんは『旅するおむすび屋』を2017年に立ち上げた。食べ物が生まれる“背景”について生産者に話してもらい、みんなでその土地の食材を使い、おにぎりを作って食べるワークショップを全国各地で開いている。「作って食べるハードルが、他の料理と比べて比較的低い。普段はお米が嫌いな子どもでも、自分でつくるとその場でたくさん食べてくれたりするんです」
大学生になってから拒食症を乗り越えた経験がある菅本さんだからこそ、食べ物の命に支えられて自分の命が存在していることに気づいた時の衝撃が大きかったという。「生産者さんのことや食べ物が作られる風土を知ると、それらはただの食べ物ではないと思うようになってくる。食べ物に対してただお腹を満たすもの、栄養素を摂るものと思っている人にも、おむすびを通じて食の大切さを伝えたいです」。全国の人や地域を„むすぶ"『旅するおむすび屋』。そんな彼女が選んだ「ロフコト雑貨店」で出品される米、塩、海苔をご紹介。
米/RICE
ニワトリとアイガモと 棚田が育む有機栽培米。
富山県富山市の里山で、ニワトリを平飼いしながら米や野菜を栽培するほか、農産物の加工も手がけている『土遊野』。富山県のブランド米「てんたかく」とコシヒカリを農薬も化学肥料も使わずに育てている。鶏舎から出た糞を発酵させた肥料を施し、除草のためにアイガモを田に放つ。「粘土質である棚田で育つお米は甘みが強くなり、山の冷たい水はゆっくりとではありますが、米の一粒一粒をしっかりとした味わいにしてくれます」と代表・河上めぐみさん。「種蒔きから食べるところまでが、農業」ということを大切に、限界集落とされる地域で、ある資源を循環させながら命をつなぐ農業に挑戦している。
KANA’S SELECTION
棚田を守りながら栽培される農薬不使用米。玄米もおすすめ!
土遊野:https://doyuuno.net
富山県の里山をフィールドに有機農業を営む。120枚ほどの棚田と、棚田の麓の田んぼで農薬や化学肥料を一切使用せず、お米づくりをしている。会社名の『土遊野』は、「土と遊ぶ野原のように」という意味を込めて付けられた。
富山県の里山をフィールドに有機農業を営む。120枚ほどの棚田と、棚田の麓の田んぼで農薬や化学肥料を一切使用せず、お米づくりをしている。会社名の『土遊野』は、「土と遊ぶ野原のように」という意味を込めて付けられた。
塩/SALT
海と森のミネラルを含む、 季節の移ろいを感じる塩。
『百姓庵』の井上雄然さんは塩づくりに適した場所を全国に探し求め、山口県北西部の油谷湾に行き着いたという。そこは、2本の川から流れる水と海水とが混じり合う汽水域。海と森のミネラルを含む旨みのある塩を、2007年からつくり始めた。立体式塩田法で汲み上げた海水を太陽と風の力で濃縮して、4日間の予備炊きの後に10時間をかけて炊き上げる。さらに、塩の結晶をつくる工程で生じたミネラル分の偏りを混ぜ合わせる„天地返し"という技法で、ミネラルバランスを整えるというこだわりだ。「季節ごとに海水の状態が変化するので、できる塩も季節によって当然異なります。そのため、春夏秋冬の4種類の塩を製造しています」と井上さん。ていねいにつくられた塩は、お米の甘みをより引き立ててくれる。
KANA’S SELECTION
味に深みがあって初めておいしいと思った塩。四季を感じます。
百姓庵:https://hyakusho-an.com
山口県にある油谷湾を拠点に自然の中からあらゆる糧を生み出す“Life Artist”として、2007年から塩づくりを開始。塩の製造のみならず、有機野菜の栽培、農場、レストランの経営まで自然を大切に幅広く活動している。
山口県にある油谷湾を拠点に自然の中からあらゆる糧を生み出す“Life Artist”として、2007年から塩づくりを開始。塩の製造のみならず、有機野菜の栽培、農場、レストランの経営まで自然を大切に幅広く活動している。
海苔/SEAWEED
“やんちゃ”に育ててありのままの自然を表現。
「食べものから今の自然を感じて欲しいので、海苔でリアルな自然を表現するようにしています」と宮城県東松島市の『アイザワ水産』の相澤太さんは話す。海苔の芽を育てる育苗の段階で、病気に気をつけながら“やんちゃ”に育てるのが相澤流。顕微鏡で海苔の細胞を確認し、風向きや海水の塩濃度を考慮しながら、海の中から網を出す干出と呼ばれる作業を行うことで、細胞が生き生きして野性味が増すという。「厳選 寒風一番摘み 焼き海苔」には、その芽を冷凍保存して冬のより冷たい海水で育てた最初の海苔を使用。加工段階で熟成させることで、柔らかい口どけのよい海苔に仕上げている。「4、5回噛んだ時に、一番旨みを感じる海苔。米の旨みも合わさって口の中に広がります」。
KANA’S SELECTION
よく噛むごとにお米と海苔の旨みで口が満たされていきます。
アイザワ水産:www.aizawasuisan.com
祖父から父へと海苔漁師を代々受け継ぎ、現在は相澤太さんが三代目を務める。酸化防止剤、調味料を一切使わず、今の自然をそのまま表現する海苔づくりを行う。奉献乾海苔品評会で、太さんは史上最年少28歳で優賞。
祖父から父へと海苔漁師を代々受け継ぎ、現在は相澤太さんが三代目を務める。酸化防止剤、調味料を一切使わず、今の自然をそのまま表現する海苔づくりを行う。奉献乾海苔品評会で、太さんは史上最年少28歳で優賞。
photographs by Saori Tao text by Mari Kubota