『フェムテックtv』と、未来を作るSDGsマガジン『ソトコト』が新たに女性のウェルビーイング向上を目的として立ち上げた、対談コンテンツ『フェムコト』。第7回目となる今回は、2021年の人気記事TOP5にもなった『快感を得るための臓器、クリトリスについて知ろう』など、フェムテックtvにも何度もご登場いただいている、鍼灸師の栗本夏帆さんとお話しします。
鍼灸師・温活士 栗本夏帆(くりもと・かほ)さん
グラン治療院の統括院長。国家資格を保有する鍼灸師として活動しながら、「一般社団法人 日本温活協会」の温活士としても活躍。女性限定の腟サロンを立ち上げるなど、勉強会や啓もう活動にも励んでいる。4月22日には自身初となる著書『うるおいの腟レッチ』(光文社)を刊行予定。
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インスタでもバズッた、人生最大級の肌荒れ
栗本さん:人生最大級の肌荒れです。すごいなんてもんではなくて、本当にひどかったんです。インスタで当時の写真と改善後のビフォーアフター写真を載せたら、とても反響がありました。
肌荒れがひどかったのは約5年前で、3回目の国家試験に向けて勉強している頃です。高校生の頃もニキビができやすくて、もともと肌荒れが起こりやすかったというのもあります。その荒れやすかった肌が、国家試験のプレッシャーやストレスで爆発した感じ。その時に、スキンケアやメイクアイテムを見直して、オーガニックプロダクトに出会い、デリケートゾーンをケアするアイテムがあることを知りました。鍼灸では身体のことも学ぶので、女性ホルモンが肌荒れに関係しているという知識はあったものの、そこからさらに植物療法士の森田敦子さんの本を読んだりして、腟やデリケートゾーンのケアを意識するようになりました。
フェムテックtv:今の肌状態からは想像がつきませんね。フェムテックにまつわることには以前から興味は持っていたんですか?
栗本さん:はい。小学生の時には、子宮の構造とかを図書館で調べて、メモしていました。母親には、「お父さんとどこではじめてエッチしたの?」とか聞くような子どもで(笑)。大学生になると、友達に「こうやってセックスするんだよ」と、講義をしたり、すごく近場で発信をしていたんです。
フェムテックtv:そんな頃から!それが、鍼灸師になる動機でもありましたか?
栗本さん:そうですね。もともと叔父が鍼灸師だったこともありました。大学はバスケで選びAO入試で入学したのですが、バスケで食べていけるとも思っていなかったので、手に職を持ったほうがいいと思い、行きたい大学に鍼灸学科があったのも決め手でした。
大学生の時にカリキュラムの一環で中国に行ったのですが、鍼灸が当たり前の国。皮膚科、眼科のように、鍼灸科があって、現地の人は当たり前のように受診していたんです。そういった生活を実際に見たことで、日本でももっと鍼灸が当たり前になるといいなとより思うようになり、どんどん発信していきたい考えを持っていたので、メディア発信をしている『グラン治療院』に入社しました。
生理中でもプールには入らないといけなかった学生時代
栗本さん:私はきちんと周期通りではあったんですけど、多嚢胞性卵巣症候群(卵胞が育たず、定期的に排卵が起こらないことで生理周期異常が現れる)気味になったことがありました。また、同級生は試合中のユニフォームに経血が付いてしまったりと、今振り返ってみると気になることは起きていました。ただ、当時はとりあえず婦人科に行くだけという感じで……。
今はピルを飲んでいるのですが、学生の頃にもピルについて知っていたら、生理のタイミングも分かりますし、服用する選択も考えられたのに……と思うことはあります。あと、生理用品に関しても吸水ショーツや月経カップが、その頃にあったらよかったと。そろそろ生理というタイミングでは吸水ショーツを履いておけば安心できますし、試合中もナプキンがずれて漏れてくることもなかったかなと。
フェムテックtv:スポーツしている人はタンポンを使っているイメージがあります。
栗本さん:私の周りはそうでもなかったです。ナプキンが多かったかな。
ただ、高校がとても厳しかったので、生理中でもプールには入らないといけなくて。バスケ部の顧問が体育の教師だったこともあり、なおさら休めないから、その時はタンポンでした。
フェムテックtv:生理中にプールや体育を休めないというのは衝撃的です。
栗本さん:生理は病気ではないっていう……。
フェムテックtv:例えば、お腹が痛いなど、症状がある時はどうしていたんですか?
栗本さん:そういうことは言えない状況です。だから、市販の痛み止めを飲んでいました。
私自身、生理痛はけっこう重たかったほうだと思います。でも、痛くなりたくないから、痛み止めは先に飲んでいました。今思うと、ピルを服用していたら楽でしたよね。
生理は我慢しないといけないと思っていた
栗本さん:約3年前からです。その間、1回やめたことがあるんです。そうしたらすごく辛くなって、再開しました。ピルをやめていた時は、排卵の時の子宮がきゅーとなる感じがすごく分かりました。経血量も多くなったり、急に生理が始まったりして、私の場合はピルを服用していないと、こういうことが起こるのかと再認識しました。
フェムテックtv:どこまでコントロールするべきか、というのはあると思いますが、スポーツをやっている方にはサポートになる選択ですよね。
栗本さん:本当にそう思います。私は生理痛が重かったのと、肌荒れもあって服用し始めましたが、いろいろ勉強していく中で“My婦人科”も必要だなと思うようになって。ピルを服用していると定期的に通うので、そういった面でも安心できますよね。
フェムテックtv:10代は生理が安定しない時期でもあると思うのですが、部活の中で生理についての対処法を教えてもらうことはありましたか?
栗本さん:部活の中で教えてもらうことはなかったです。いわゆる性教育も、男女で分かれて、ナプキンの使い方、捨て方を教わるくらい。初潮を迎えるための心構えや準備、生理が起こるメカニズムなどは教えてもらっていないです。
周りには生理は恥ずかしい、隠さないと思っている子も多かった印象で。今の10代はどんなことを教えてもらっているのか気になります。最近では、フェムテックにまつわることに興味のある人も増えていると思うので、学校だけではなくて、家庭でも教えられる環境だといいなと思うんですけど。
クリトリスやセルフプレジャーについても話したセミナーに反響
栗本さん:きっかけは鍼灸師向けに行ったセミナーでした。まだフェムテックという言葉は、日本では出てきていない頃でした。
そのセミナーを受けた鍼灸師の先生たちから、「感銘を受けました」という声が届き、思っていた以上に反響があって、多くの人が興味あることなんだなと。後日、セミナーを聞いていた先生と「一緒に何かやりませんか?」という話になって、「私は腟サロンがやりたいんです!」と話して、そこから始まりました。
フェムテックtv:そのセミナーでどんな話をしたのか興味があります!
栗本さん:なぜ腟ケアをしないといけないのかという話から、私が使っているデリケートゾーンのソープやオイルなどのアイテム紹介。さらには、クリトリスやセルフプレジャーについても話しました。
あと、鍼灸には、これからなる病気を防ぐ予防医学=未病治の考え方が根付いているのですが、腟ケアをすることは未病治の考えからも必要なことという話をしたところ、「はじめて聞いた」という先生もいれば、「奥さんが会陰切開せずに出産できた」という先生もいたりして。
栗本さん:そうですね、ありました。男性の先生の中には、クリトリスも海綿体で男性と同じ構造だから「知ってるよ」っていう温度感の方もいて。でも、その知識は世間の当たり前ではない。鍼灸師は職人気質の人も多いので、自分は知ってる、自分はこんなに技術が炊けているというベクトルに考えが向く方もいたり。だから、情報として発信する人が多くないんです。施術を行う時も患者さん自身について深堀り出来ているかというとそうでもない。施術ができればいいと思いがちで、コミュニケーションを取らない鍼灸師もいたりします。
フェムテックtv:そのような現状を知って何かアクションを起こしたのでしょうか?
栗本さん:鍼灸師向けのセミナーを開催している協会があるので、フェムテックについて話した動画の提供を始めました。
第一弾では、フェムテックの市場と世の中の認識について。第二弾はどのように施術に導入するかといった具体的なことを話しています。それに伴って、鍼灸師として意識すること、持っておく必要がある知識なども。男性鍼灸師の場合は、自分事のように相談に乗れるかというのも大切ですよね。
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