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特集 | 再エネスタート|はじめてみませんか 再エネ活用【環境省】

福岡県・八女地域で誕生した再エネ供給システム「LED’S」が、電気の“地消地産”で、まちの未来を明るく照らす

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2020年に福岡県八女市から始まり、脱炭素や防災だけでなく、持続可能なまちづくりにもつながるとして大きな注目を集めている「LED’S」。地域内で電気をつくり、地域内で消費する――。この新たな取組みは、どのような背景で生まれ、拡大しているのでしょうか。取組みの具体的な内容からメリット、今後の展望まで詳しく紹介します。

目次

LED’Sは、地域で使う電気を地域でまかなう“地消地産”型再エネ供給システム

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「Local Energy Direct Supply」の略である「LED’S」は、文字通り、地域でつくったエネルギーを直接供給する取組みで、福岡県八女市の株式会社アズマと八女地域の中小企業73社の出資で2017年に設立した、地域新電力会社「やめエネルギー株式会社」が連携し、展開しています。
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地域の農産物や水産物などを地域の中で消費することを“地産地消”と言いますが、「LED’S」が目指しているのは“地消地産”。つまり、地域で消費するエネルギーを地域内でつくり出すことで、経済面と防災面の両面で“強い地域”を実現する取組みなのです。

地域の電力会社だけでなく、地元の事業者や一般消費者がひとつになってまちの未来を見通せる点は、これまでの電力供給システムと異なる点といえるでしょう。

LED’Sの仕組みが生まれた背景とその理念

「LED’S」は、世界的な脱炭素の流れの中で、地域経済の活性化を実現していくためのプロジェクトとしてスタートし、PPA (電力販売契約モデル)を地域内で完結させるとともに、災害時の電力確保にも役立つ蓄電池を、消費者の負担がなく提供できるサービスとして考案されました。

そして、実際に八女市で進んでいるプロジェクトでは、電力利用者の所有地に設置された太陽光パネルは株式会社アズマが所有し、施工とメンテナンスを担当。八女市の新電力会社「やめエネルギー」が電力供給の契約を行い、不足電源の手当ても行います。

自宅の電気供給をLED’Sに。月々の電気料金と、設置・維持にかかるコストは?

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LED’Sでは、初期費用なしで太陽光発電設備を設置でき、そこで発電した再生可能エネルギーを利用できます。さらに10年後には、太陽光発電設備一式が無償譲渡されます。
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無償譲渡後は、消費者自らが太陽光発電設備をメンテナンスする必要がありますが、9年目に譲渡を「受ける/受けない」を選択できるので、もしメンテナンスに不安があれば、10年後以降もそのままの利用形態で継続が可能です。

また、LED’S契約期間中は、太陽光発電の運転管理コスト・リスクを消費者が負うことはなく、太陽光発電設備にかかる定期的なメンテナンスや保守費用は、株式会社アズマが負担します。

そして、株式会社アズマによると、月々の電気料金は「一般的な電力会社の料金より若干安い程度」ということです。

コストだけじゃない。我が家にLED’Sを採用するメリットは他にも

メリット1:地域内経済循環で“住み続けられるまちづくり”に貢献

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名産の“お茶”畑越しに眺める八女の街並み。地域内でのエネルギー循環は、美しいまちを未来に残す役割、その一端も担う。
一般的なPPAは、都市部の大手企業が事業者として提供することが多いのですが、LED’Sでは、利用者も事業者も電力会社もすべてが地域内です。電力という生活インフラを地域で維持し、まかなうことで、地域内での経済循環が可能となります。また、経済循環によって地域が活性化することで、子の代、孫の代はもちろん、その先の世代まで安定して暮らせるまちづくりにもつながります。
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LED’S利用者に提供される蓄電池。

メリット2:災害時、地域の電力供給も担うレジリエンスな仕組み

レジリエンスとは、「回復力」「復元力」「弾力性」といった意味があり、外的な刺激に対する柔軟性を表す言葉です。
LED’Sの大きな特長の一つが、蓄電池を活用した災害時の電源確保。LED’Sの利用者は、契約時にプロジェクトの趣旨説明を受け、災害等で停電が発生した際は蓄電池の電力を地域のみなさんへ開放することに同意しています。
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停電時には、自立運転モードに切り替えることで、自立運転コンセントからの電源確保ができ、その電源から蓄電池やスマートフォンへの充電が可能。
蓄電池の開放自体が災害対応に直結するのはもちろん、プロジェクトに参加することで、まちで暮らす一人ひとりの防災意識の向上も期待できます。

メリット3:地産エネルギーだから、事業者との距離が近い安心感

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事業者と消費者の「顔が見える」関係性も、地域電力で再エネを使用するメリットのひとつ。写真はLED’Sを導入した利用者と、株式会社アズマの代表・中島一嘉さん。
LED’Sは利用者、事業者、電力会社の距離が近いため、再エネ初心者でも安心して利用が始められます。
また、LED’Sでは、10年後に太陽光発電設備一式が利用者に無償譲渡されますが、株式会社アズマでは、譲渡後のメンテナンスに不安がある利用者に対して、メンテナンスを請け負うプランを用意するなど、きめ細かいサービスを行っています。

メリット4:利用する人が増えれば、もっと便利になる可能性も秘めている

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一般住宅の屋根に設置したLED’Sの太陽光パネル。
2020年9月に、八女市で110件の事業系利用者から始まったLED’Sは、2021年10月現在で八女市近隣の200件以上にまで拡大し、2021年2月からは一般住宅向けの提供もスタートしています。

今後、LED’Sの事業者や利用者が全国で拡大していけば、太陽光発電設備や蓄電池の購入コストが下がり、より広い地域で、手軽かつお得にLED’Sが利用できる可能性もあります。

八女から広がるLED’Sへの共感。ほかの地域へ波及する仕組み

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八女以外の地域にもLED’Sの仕組みが伝播。2022年1月6日現在、LED'Sを推進するグループには、全国で28の事業者・自治体が参加している。
株式会社アズマでは、こうした取組みをSNSを通じて発信し、LED’Sの理念に共感し、全国の各地域で「LED’Sを提供したい!」という事業者に対して、事業に必要な資料やノウハウなどを無償で提供。今年7月には「LED’S推進グループ」を発足させ、各地の事業者や電力会社、自治体など、約30の団体が参加しています。

すでに、八女市以外でも、熊本市や久留米市、横浜市の一部で、地域の特性に即したLED’Sプロジェクトがスタートしています。

地域の大きな期待を背負うLED’S。今後の展望は?

株式会社アズマでは、地域の方々から「やっぱ、八女がよか」と言ってもらえることをイメージしながら、日々、LED’Sの普及を推進しています。そして今後は、低圧の事業者向け、低圧の家庭用、高圧の事業者向けへとサービスを拡大させるとともに、太陽光カーポートなどの準備も進めています。

脱炭素や持続可能なまちづくりが強く求められている今、LED’Sは「まちの未来を明るく照らす再エネシステム」として、大きな注目を集め、全国に広がろうとしています。

取材:ソトコトオンライン編集部 文:小林ぴじお
画像提供:株式会社アズマ

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