地方で働く女性、都心で働く女性、子育てをしながら働く女性、さまざまなライフスタイルを送る女性たちを取り上げ、女性の健康課題や社会課題について考える対談コンテンツです。
鍋田ゆかりさん
1975年生まれ、兵庫県出身。23~33歳までバックパッカーを経験。帰国後モロッコ雑貨などを扱う会社に勤務し、11年に南房総市へ移住、16年に古民家を購入。定額住み放題サービス『ADDress』が所有する同市内・千倉にある物件の家守を務めるほか、ライター業なども行う。
アトピー発症が移住の大きなきっかけになった
鍋田さん:長年のバックパッカー生活を経て、モロッコから帰国後、東京で働き始めたのですが、アトピーが発症してしまいました。病院に行っても「ストレスです」と言われ、悪化するばかり。バックパッカーや季節労働をしている時のように、自然の中で過ごす方がよかったなと改めて思い、田舎に住みたいと考えるようになりました。
フェムテックtv:その後、どのような経緯で移住に至ったんですか?
鍋田さん:千葉県いすみ市にある料理研究家の中島デコさんの宿『ブラウンズフィールド』へ、お手伝いとして10日間ほど滞在しました。その時、アトピーの薬も持っていったんですが、滞在中は全く必要なく体調も良かったんです。環境とか水とか食べ物って、自分の身体にすごく関係しているんだなと思い、「田舎で暮らしたい!」と確信しました。
フェムテックtv:移住地を南房総に決めた理由はなんだったんですか?
鍋田さん:たまたまキャンプ場での結婚式にゲストとして参列した際、「最近、白浜に移住して農業を始めたんだよ」という会話が聞こえてきたんです。興味があって声を掛けたら「すごく良い場所だから遊びにおいでよ」と言われ、その翌週末にすぐに遊びに行きました。そもそも千葉に、白浜という場所があるのも知らなかったのに! それに千葉って、私からしたらディズニーランドがあるところでしょ?って、自然があるなんてイメージしていませんでした。それが行ってみたら、山も海もすごくキレイで。めちゃくちゃ気に入ったわけでもなかったのですが、ここに移住すると決めました。ただ私は、熊本生まれの兵庫育ち。合わなければ、関西・四国方面に行けばいいかなと、とりあえずの気持ちでしたね。
フェムテックtv:それが今では移住歴11年目。安房に、古民家も購入されました。
鍋田さん:うちは本当にボロくて、購入当初は使えるトイレもお風呂もキッチンもない状態でした。ただスタートがどん底だったら、後は良くなる一方ですから。やっぱり私以外の方は「本当にここに住んでるの?」とビックリされました(笑)。でも今は、ちゃんとコンポストトイレと薪で沸かすお風呂と、新品のシンクをもらって、台を取り付けたキッチンも揃ってます。ただ、お金がないので、どこか業者にお願いして一気に改装はできません。それに、楽しみながら改装したい。囲炉裏部屋があるので、将来的にはそこを復活させたいなと思っています。
鍋田さん:子育てするのにもいい環境ですからね。自然の中で思いっきり遊ばせることができる。それにお年寄りの方は、子ども連れの方が移住してきてくれたら「この地区に子どもの声が響き渡るのは何年振りだ!」と喜んで可愛がってくれますから。地域で育てるという意識があるのかもしれません。
移住して環境を変えること以上に、自分の考え方や行動が大事
鍋田さん:東京に住んでいた時は満員電車がツラかったのですが、自転車通勤に変えたことでラクになりました。田舎にくればみんながみんな満たされた生活ができるかといったら、そうじゃない。東京は東京で、緑がいっぱいの公園もあるし、良い場所だと思うんです。自分の考え方とか行動の仕方で、都会でだって“いい暮らし”ってできると思う。田舎に来てもやっぱり合わなくて、出ていく人もいますから。結局は環境も大事ですが、自分がどう考えてどう行動するかの方がすごく大事。アトピーは東京で発症しましたけど、それ以外で特に健康面で支障はなかったですからね。
フェムテックtv:アトピー以外で、女性特有の健康面で悩んだことはありますか?
鍋田さん:昔から生理痛がひどくて、血の量も多かったり期間も長かったりとしんどくて。一時期はピルを服用していました。モロッコでは日本よりも安く購入できるんですよ。でも生理って自分の身体のことだから、付き合っていくしかないですよね。あとはやっぱり精神的な面も影響する気がして。一時期こちらで同居していた時期があったのですが、ストレスだったのか、当時は生理痛もひどかった。今は、一人だから快適です(笑)。
フェムテックtv:人間関係のストレスは大きいですよね。
鍋田さん:安房に住む方たちは、地元の方も移住してくる方も、ユニークな方が多い。自分でやりたい目的があって移住して頑張ってる人たちがいっぱいいる、人間的にもすごく面白い場所です。
鍋田さん:そうだと思います。“受け入れる”っていう、寛容さを持ってる。海の幸や山の幸が豊富すぎて、頑張らなくても生きていけちゃうことから、「房州人はあばら骨が一本足りない」って昔からよく言われてて。あばら骨が一本くらいなくても生きていけちゃう、のんびりしてるっていう意味合いがあるらしいです。
フェムテックtv:鍋田さん自身は、子供の頃からアクティブなタイプでしたか?
鍋田さん:違うと思います。コロナ前に久しぶりに実家に帰って、小学校の同級生と何十年ぶりかに再会したんですよ。そしたら「昔はもっとおとなしかったよね」と言われて。たしかに、言いたいことも言えないし、今以上にもっと人目を気にしてたと思います。どんどんそういうのが削ぎ落とされていきましたね。良いのか悪いのかわからないですけど(笑)。
人や動物、植物と“繋がる”ことで幸福度は高まる
鍋田さん:朝起きたら一番に、まず洗面器に水を入れて庭へ出ます。裸足になって、そこで顔を洗ったり口をゆすいだり。そして、その水を植物たちに声を掛けながらあげるんですよ。自分の健康状態って、足の裏や唾液など、身体からサインが出てる。私は農家ではないので、たくさん取れるように作物を育てるという考え方ではありません。植物に自分の身体の情報を与えて、一個でもいいから自分の身体に合った実を育てたい。植物と情報交換をしているんです。いつも決まったヨガのポーズをしたり、ちょっとしたストレッチをやったり、時間があるときはゴロンと寝転がったりしてから部屋の中に戻ります。それから犬の散歩ですね。散歩は一時期、猫もくっついてきてたけど、今は来なくなって、ヤギとの散歩もすごく楽しかったけど、成長して大きくなってしまったので自由に散歩はなかなかできませんね。
鍋田さん:はじめは私も、千葉県の印象ってピンとこなかった。たまたまこっちに移住した人と知り合ったことで、安房の良さを知れて、移住したので楽しめてますけど。移住まで結びつかなくても、ちょっと足を運んでもらったり交流してもらったりして、安房の良さを知ってほしいです。高齢化が進んでるので、最終的には移住してくれる人が増えたら嬉しいですけどね。
フェムテックtv:今後、鍋田さんがやっていきたいことはありますか?
鍋田さん:自分が旅した時に出会った地元の人たちって「すごい良い所だろ!」とか「世界一の場所だ!」と地元に誇りを持っていて、すごくカッコいいなと思ったんですよね。旅で人と出会うのは、やっぱり楽しい。今は動物もいっぱい飼ってるのでなかなか泊まりで旅をするのは難しいですが、行く行くは田舎暮らしに興味がある友達とかにお試しで、自由に動物の世話をしながら1カ月ほど生活してもらって、その間に私は旅に出るなんてことも出来たらいいなぁと思っています。
鍋田さん:人との繋がりがあること。都会で一人暮らしをしてた時って、震災があっても隣の人のことを知らないし、どこに助けを求めていいのかわかりませんでした。移住してから地域との繋がりもあって仲間もいて、お互いに何かあった時に助け合える環境が整ったんです。どれだけ良い土地に住もうと、人との繋がりやコミュニケーションがなければ、幸せになれないと思っています。
フェムテックtv:「環境も大事ですが、自分がどう考えてどう行動するかの方がすごく大事」という言葉が印象的でした。今度、ぜひ安房に遊びに行かせてください!
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