「近水園」は、岡山駅から車を走らせること40分ほど、岡山市北区足守にあります。足守藩主木下家の居館である屋形構の奥手に設けられた大名庭園で、小堀遠州流と伝えられる池泉回遊式庭園の好例として知られています。築庭時期は18世紀初め、6代藩主の木下㒶定（きんさだ）の時だと推定されていて、県下では岡山の後楽園・津山の衆楽園と並ぶ大名庭園です。

紅葉スポットとしても見どころが多く、庭園に植えられた木々と数寄屋造りの吟風閣、池に映る紅葉の美しさはため息ものです。

庭園まで続く「利玄通り」は、まるでアーチのように木々が生い茂る並木道。紅葉と青空のコントラストに、心が洗われます。

「利玄通り」には木下利玄生家があります。利玄は足守藩最後の藩主を父にもつ歌人で、白樺派の中心作家として活躍し、明治大正の文学史に大きな足跡を残しました。

「近水園」の紅葉とあわせて楽しみたいのが、陣屋町の風情が残る足守の町歩きです。

足守藩の藩主・木下家の初代家定は、「ねね様」として知られる豊臣秀吉の正室・北政所の実兄。木下家は明治維新まで13代にわたり藩主として、足守陣屋町の整備に尽力しました。

陣屋町のうち町人町にあたるエリアは、県の町並み保存地区として指定されています。良好に保存された千本格子や切子格子の民家が並び、静かで落ち着いた雰囲気です。

町歩きの休憩やランチ、文化体験などを楽しむなら、陣屋町の中ほどにある「足守プラザ」へ。町の雰囲気に溶け込む、格子窓にしっくいの壁や瓦屋根の建物です。

館内には地元食材を楽しめるレストラン「洪庵茶屋」や情報コーナーがあり、陶芸・木工芸などの体験もできます。各種体験イベントなども企画されているので、公式インスタグラムをチェックして出かけてみては。

「足守プラザ」の一角にある「洪庵茶屋」は、ランチや休憩にぴったりです。足守の食材をふんだんに使ったメニューが多彩に揃うなか、特にライターがおすすめしたいのは「足守メロンジュース」。岡山が誇る数々の美味しいフルーツの中でも、高級品として知られる「足守メロン」を100％使用した贅沢な1杯です。さわやかな甘さで、町歩きの疲れを癒してくれます。

気候もよく過ごしやすい秋。岡山をドライブするなら、ぜひ足守へ訪れてみてはいかがでしょうか。「近水園」の美しい紅葉や歴史情緒あふれる足守の町並みが、日常の忙しさを忘れさせてくれるかもしれません。

●近水園 公式ホームページ
●足守プラザ 公式インスタグラム
●洪庵茶屋 公式ホームページ

写真・文：西 紀子
写真提供：岡山県観光連盟、洪庵茶屋
取材協力：岡山市、足守プラザ、洪庵茶屋

■ライタープロフィール
西紀子：福岡市出身。大学卒業後、フリーペーパー編集部や企画制作プロダクションにて編集・ライティング業務に従事。2017年よりフリーランス。2018年より岡山市在住。 2020年よりソトコトオンライン・ローカルライターとして記事執筆。現在に至る。