山形県・鮭川村で鮭の魅力を発信する松並三男さん。これらの本を読み、働き方、趣味、環境への課題をつなげて考えられたとき、「今はウェルビーイングな状態」だと意識できたという。自分の向かう方向は間違っていないという自信と、充足感を感じられる日々を支えてくれる本だ。
山形県・鮭川村地域おこし協力隊隊員|松並三男さんが選んだ、ウェルビーイングを感じる5冊
ウェルビーイングとは定義の難しい概念ですが、僕は「今、自分はその状態だ」と思えています。正確には昔から「環境を丸ごと楽しめるアウトドアのある暮らしは、豊かで楽しい」、つまりウェルビーイングだと感じていました。今回選書したのは、僕がなぜそう感じて、次は何が課題なのか、つなげて考えさせてくれた本です。
『社員をサーフィンに行かせよう』は、大学時代に『Patagonia』のことを知り、「みんな、なんて格好いい働き方をしているんだろう」と感動して読んだ本です。僕は今、地域おこし協力隊として働いていますが、『Patagonia』の働き方は今でも指針になっていて、この本にはそのエッセンスが詰まっています。その中でとくに今も意識しているのが「ワークシェアリング」の考え方。サーフィンのシーズンにはサーフィン好き以外が少し多めに働いて、サーフィンしたい人を気持ちよく遊びに送り出す。逆もまたり。「遊びに行く分、しっかり提供する」という考え方は、場所が変わっても大切にしています。チームで何かに取り組むのに大事な視点の持ち方を学んだ本で、働き方に閉塞感を感じている人に読んでほしいですね。
『漁師が山に木を植える理由』は、海の荒廃を食い止めるには森の腐植土が大事なのだと、漁師と研究者が対談で語る本です。初めて読んだのは高校時代ですが、僕が今、鮭を通して伝えたいことと同じ内容が書かれています。海を豊かにして次の世代に残すためには、陸まで包括して考える視点が必要ということです。
『プラスチックスープの海』は、アウトドアで遊んでいるうちに抱いた疑問、「なぜ自然の中にこれほどゴミがあふれているのか」に答えてくれました。学術的ではありますが、もう一歩踏み込んで自然を見たい、自然とつき合いたいと思ったときが「読みどき」です。すっと頭の中に入ってきます。
アウトドアそのものの魅力を存分に感じるなら『LONG DISTANCE HIKING』と『オーパ、オーパ!! アラスカ至上篇 コスタリカ篇』を。前者には人里も含めた自然全般との付き合い方がとても魅力的に書かれています。HOW TOではなく、歩くことへの考え方を語った本で、「現場感」がある。アウトドアってこうやって楽しむのだということがわかります。後者はアウトドア、とくに釣りマニアの頭の中が理解できます(笑)。釣り師にとっては染みる本です。
▶ 山形県・鮭川村地域おこし協力隊隊員|松並三男さんの選書 1〜2
▶ 山形県・鮭川村地域おこし協力隊隊員|松並三男さんの選書 3〜5