「世界一チャレンジしやすいまち」の実現をビジョンに掲げる宮崎県新富町。人口1万7,000人の小さなこの町で、なぜ1粒1,000円ライチや企業との連携事例が続々と生まれ、移住者たちが飛びこんできているのか。仕掛け人である地域商社こゆ財団の視点から、その理由と気づきをご紹介します。今回のテーマは「大好き!」を看板にしよう です。
町の広報を変える編集者、求む!
2020年4月、宮崎県新富町の広報紙「広報しんとみ」がリニューアルされました。地域おこし協力隊として移住したフリーランスのデザイナー、増田悠太朗さんがデザインを手掛けた紙面は見やすく、わかりやすいと町民のみなさんからも好評をいただいています。
実はこのリニューアル、小嶋町長の思いからスタートしたプロジェクトでした。「業務としての広報ではなく、本当に町民が必要としている情報がわかりやすく掲載され、さらには町民が町民であることに誇りを持てるような、次号の到着を待ち遠しく思うような、そんな広報紙にしたい」と話す町長。それには、新富町役場で手腕を発揮してくれる、編集者が必要でした。
リニューアルからさかのぼること半年前、2019年9月にその使命を帯びて東京から新富町に移住してきた編集者が、二川智南美さんです。
きっかけは移住イベント
群馬県出身の智南美さんは、新富町に移住する前は東京の編集プロダクションに5年間在籍。歴史をテーマにした出版物の編集を手掛けていました。
移住のきっかけは、宮崎県と鹿児島県の有志が企画し、全12地域が参加した2018年のお移住イベント。智南美さんはこゆ財団メンバーとつながりができ、2018年11月に新富町を初訪問し、それから約1年後に晴れて新富町民となりました。
「初めて新富町に来た時、直感でここに住みたいと思ったんです。人口やアクセスはもちろんですが、人が温かいこと、移住者に対して壁がないことなど、私が憧れていた地方での生活にピッタリ一致したのです。そして、俳句を詠みたくなったというのも理由です」
…俳句??
と、思った方。そうなんです。
卒業制作で300句を詠んだ生粋の俳句女子
実は智南美さん、大学の専攻が俳句で、卒業制作でなんと300句を詠み、現在も俳諧無心の会、都心連句会に所属しているという、生粋の俳句女子なのです。
移住直後の2019年9月には、町制60周年記念イベントとして町内で開かれたNHK「俳句王国がゆく」の収録に抜擢。主宰の夏井いつきさん、女優の壇蜜さん、歌手の米良美一さんとともに出演を果たしています。
おかげで智南美さん、「広報しんとみ」にこんな新コーナーまで生み出しました!
チャレンジは小さくていい
高齢者の方を中心に句会が開かれている新富町。智南美さんは俳句の経験を生かして地域の交流にも役立つ活動をしていきたいと語っています。
智南美さんのような俳句好きの20代は、都市部にはたくさんいるかもしれませんが、新富町には決して多くはいません。
自分の「大好き!」を掲げることは、周囲の興味関心を引き寄せるだけではなく、それをもっと広く伝えるための機会まで手繰り寄せることにもつながります。智南美さんの場合、「広報しんとみ」の新コーナーには、興味を引かれた地元農家らが投稿するようになり、にぎやかな一面も生まれています。
チャレンジというと、ジャンプしないと届かないようなものに手を伸ばすようなイメージもあるかもしれません。
でも大切なのは、自分の「大好き!」を掲げ、小さなことでもピュアにやり続けていくというシンプルなことなのではないかと思います。2021年2月、移住して1年半が経とうとしていますが、智南美さんの俳句熱はますます膨らんでいますよ!