目の前にある雄大な自然に感動しながら、水の流れや風の音、土の柔らかさ、そして人々のふれあいの中で優しさを体感し、気づいたらやみつきになっている――。キラキラした目でそんな魅力を語る“前参加者”の話を聞いて、ふと口に出ていた「やってみたいなあ」の一言から、あれよあれよと出場が決まった、環境スポーツイベント「SEA TO SUMMIT 2019」。いくつもある開催地の中から、初心者にも優しい(?)と言う、宮城県加美町大会に編集部タケナカが体験してきました。果たして、無事に完走できたのか……!?
自分に合わせた、楽しめるコースを。
「SEA TO SUMMIT」とは、「人力のみで海・湖・川(パドルスポーツ)から里(自転車)、そして山頂(ハイク)へと進む中で、自然の循環に思いを巡らせ、かけがえのない自然について考えよう」という思いを込めて、アウトドアブランド『mont-bell』と地元自治体が共同開催する開催する環境スポーツイベント。今年で11年目の開催となり、舞台となる地域は北は北海道から、南は沖縄県(初開催!)まで、過去最多の14カ所だ。各開催地には、総距離や標高差などから割り出した「レベル」があり、運動するのが久しぶりの私は、有無を言わさず星1レベルの優しいコースであるという、宮城県加美町の大会へを決めた。
「決めたはよいが、何を用意したらいいんだろう」。登山の経験こそ少しあったものの、カヤックも長時間の自転車も初めで何を用意したらいいのか分からなかったため、とりあえず『mont-bell』のショップへ行き、相談をすることに。
準備の基本のキは、風と雨の対策。
「山に行くのであれば、三種の神器じゃないですけれど、ザック、靴、アウターは確実に持っていかなければいけないもの。『SEA TO SUMMIT』に関しても、その3つは必ず用意してもらいつつ、一番上に着るアウターや靴は、アクティビティに最適なものを持っていくべきですね」そう教えてくれたのは、『mont-bell』広報部の長井洋高さん。「加美町大会が行われるのは10月、そして『SEA TO SUMMIT』は雨が降った時でも開催するので、開催時の気温や風の対策はもちろんのこと、雨の対策としてアウターに防水性と透湿性の高いレインウエアを用意するのは必須です。靴はカヤックの時はサンダル、自転車の時はローカットのシューズで。加美町大会は、低山なのでハイクの部分もローカットのままで全然OKですよ。ただ鳥海山大会や妙高・野尻湖大会などの、長く標高差があるコースは、しっかりした登山靴に履き替えることが重要です」。
そのほかにも、アウターの下に着るものは? ボトムには何を? などなど持ち物の一つひとつまで詳しく教えてもらったのだが、そちらについては本記事の一番下に今回用意した持ちものリストを記載するので、気になる方はそちらをどうぞ!
緊張がほぐれていく、1日目の環境シンポジウム。
大会は全部で2日間。1日目には環境シンポジウムとして、加美町町長の猪股洋文さんや『mont-bell』グループの代表・辰野勇さん、ゲストとして俳優の石丸謙二郎さんと、パラカヌー選手の瀬立モニカさんの講演や対談が開催された。猪股町長は、「今年でプレ開催を含めて3回目。少しずつ参加者も増え今回は138名が参加してくれています。豊かな加美町の自然を体感し、新しい友達をつくってください。」と参加者を激励した。
その日の夜には、ウエルカムパーティーと称した、加美町の特産品であふれる懇親会が行われ、大会関係者や地元の方、そして参加者同士の交流を深めた。「加美町は走りやすいコースであることももちろんだけれど、町の人と交流しながら地元の食を味わえるのも魅力なんだよね。明日は楽しもう!」と声をかけてくれるリピーターの参加者も多く、そしておいしいものを前にして初参加の緊張はいつの間にか消えていた。
スイスイカヤックと、ノロノロバイク。
大会2日目。朝5時起床。「SEA TO SUMMIT」にもう数十回参加したことがあるという心強い先輩・浦川俊幸さんとともに、スタート地点である「鳴瀬川カヌーレーシング競技場」へ。カヤックとバイクをレンタルにしたため、必要最低限の荷物でOK。レンタルが充実している大会もあり、初心者にはありがたいサービスだ。
開会式の後、8時にカヤックからスタート。鳴瀬川に浮かぶ二つのブイの外側を二周するこの全長約3キロのコースは、水の流れも穏やかでスイスイと進める。「本大会は、フィニッシュの時間を競うものではない」という辰野さんの昨夜の言葉を思い出しながら、他の参加者と話しながら、
そして景色をゆっくりと見ながら自分のペースで漕ぎ進める。
あっという間にカヤックパートが終わり、次は陸に上がって自転車へ。このパートの道のりは約13キロ。中盤までは街中から、広大に広がる田んぼを横目に風を切る心地よさを体感していた。が、最後の緩やかに続く上りに息が切れ始め、次第に重くなるペダルを必死に漕ぐこと数十分、「あれ、前評判より少ししんどいぞ……」と思いながらも、なんとかハイクへと変わる『やくらいガーデン』に到着した。
1.5キロ先の薬萊山の山頂へ。
同じタイミングで山頂へ向かう人や、そしてすでにゴールをして戻ってくる人もいる中、一歩ずつ私も標高553メートルの「薬萊山」山頂を目指す。低山とはいえ、日頃の運動不足にカヤックとバイクを終えた体には、恥ずかしくも疲労の色が。
ずっと並走してくれていた浦川さんの「頑張れ、楽しもう!」という声や、ほかの参加者さんとの温かな交流に背中を押されながら、そして合間合間に見える絶景に癒されながら、なんとか頂上に到着。自分で登り切れたという達成感と、パアッとひらけた景色、「お疲れさまー!」という皆さんの笑顔に、この大会の醍醐味を感じ、参加者みなさんが一様に言う、「くせになる感覚」の片鱗を見た気がした。
2019年の開催は、12月14日・15日の沖縄やんばる大会を最後に終了したが、また来年の2020年4月ごろから開催されるとのこと。私のように運動が久しぶりな人が挑戦できる大会や、チーム参加が可能だったり、E-bikeの利用も可能など、誰でも参加できる工夫がされているので、ぜひ気になった方は参加してみては。自然や環境という視点で地域を見つめ、楽しむことができる入口がここにある。
SEA TO SUMMIT URL :https://www.seatosummit.jp/
初心者向け持ち物リスト(カヤックや自転車以外)
▼必須なもの
・レインウエア(アウター)上下/防水性、透湿性に優れているもの
・靴/カヤック用のサンダル、ローカットシューズなど参加する大会に合ったもの
・ザック/できるだけ小さく・軽くて、体にフィットするもの
・中間着/Tシャツとアウターの間に着るもの。羽織れるもの
・Tシャツ/速乾性が高いもの。大会に参加すると当日一枚もらえるのでそれでOK
・ボトム/長ズボンや、短パンにタイツなど、好みや参加する大会に合わせて。
・靴下/10月の加美町大会であれば薄手でOK
・給水/飲み物は必須。量は大会と個人のスキルに合わせて。ハイドレーションは必須ではないが、あると給水がとても楽
・ヘッドランプ/今回使うことはなかったが、登山時には必須
▼出場する大会に合わせて考えるもの・あれば助かるもの
・スポーツ用の下着/あればなおよしというレベル。季節によって速乾性がいいものや保温性があるものをチョイス
・フリースやダウン/参加する大会やコンディションによっては必須。
・帽子/日除けや体温調節も兼ねてあるとよい。9割の人が装着していた印象
・上記の着替え/参加する大会によってや天候によってはあったほうがいいことも
・小物/タオル、手袋、アームカバー、サングラス、カメラ、防水バックなどはあるとよいが必須ではない
宮城県加美郡加美町はこちら!