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移住・定住

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重なり合う地域を知って、魅力を再発見。

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東北のことを知り、東北ファンを増やすための取り組み「Fw:東北 Fan Meeting」(フォワード東北ファンミーティング)。この一環として、東北の移住をテーマにした「東北暮らし発見塾」が行われています。

2023年10月末、「釜石・大槌で知る広域の移住生活」と題して、オンラインイベントが開催されました。

目次

移住者や住民の視点からまちを語る。

今回の「東北暮らし発見塾」は、岩手県釜石市と大槌町が舞台。釜石市は近代製鉄の発祥の地として産業が栄えた場所で、一方の大槌町は自然豊かで漁業が盛んなエリアです。釜石市は太平洋に臨む沿岸部に位置し、大槌町はその北部に位置するため、それぞれの住民の生活圏が重なり合い、仕事や日常で行き来があります。

この日のイベントは、釜石市にあるコワーキング・シェアオフィス「co-ba釜石」で開催され、岩城一哉さん(釜石市移住コーディネーター)、佐藤杏子さん(釜石市役所保健師)、伊藤将太さん(大槌町地域おこし協力隊、大槌町移住定住事務局・移住コーディネーター)、黒澤亜美さん(大槌町移住定住事務局・移住コーディネーター)の4人が登壇。弊誌編集長の指出一正は、鹿児島県からオンラインで参加しました。

左から、黒澤亜美さん・伊藤将太さん・岩城一哉さん・佐藤杏子さん・ファシリテーターを務めた『エイチタス』代表の原亮さん。

最初に登壇者それぞれから、自己紹介がありました。

黒澤さんは大槌町出身で、今までもずっと地元で過ごしてきました。2023年4月から移住コーディネーターになり、地元民にしか分からない雰囲気などを住民視点で伝えていきたいと話しました。

また、伊藤さんは同じ岩手県北上市出身。2021年に大槌町の地域おこし協力隊に着任して、大槌町移住定住事務局の立ち上げに関わりました。関係人口を生み出す体験ツアーなどを企画しつつ、個人的には畑で野菜を栽培して販売しています。

釜石市の移住コーディネーターを務める岩城さんは、その日自身で着用していた大漁旗を使ったTシャツについて、2019年に釜石市で行われたラグビーワールドカップを記念して作られたものだと説明。2011年に起きた東日本大震災の震災ボランティアとして8年前に埼玉県から移住し、半年滞在するつもりが現在まで住み続けていると話しました。

釜石市で保健師として働いている佐藤さんも奈良県出身の移住者。岩城さんと同じく震災の半年後にボランティアとして移住し、半年間の滞在のつもりが現在もこの地に暮らし続けて、地域住民の健康面や生活面での困りごとへの対応を仕事としています。

海と山。多様な暮らしと人の温かさが魅力。

釜石市と大槌町は隣り合わせのエリアだけに、似ている側面があります。大槌町について黒澤さんは「海と山の距離が近くて、海辺でもシカが出ることも。近所の方が声を掛けてくれたりして、人の温かさがあります」と話し、また、伊藤さんも「野菜や海産物を近所の人がおすそ分けしてくれる。借りているアパートの大家さんが畑まで貸してくれました」と自然と人の良さを物語るエピソードの紹介がありました。

釜石市について岩城さんも「震災から4年経って移住しましたが、人の温かさに助けられてきました」と発言。佐藤さんも「日頃から人の温かさを感じています。仮設住宅から今の住居に引っ越す時には、周囲の人が助けてくれました」と移住者にも優しいとのことでした。

大槌町について伊藤さんは「内陸よりも海の方が助け合いの文化があるように思います。海の人は“助”の文化を代々受け継いでいると聞きました」、黒澤さんは「漁師さんは活気づいた話し方で、山の方の人はゆっくり話しますね。イントネーションも少し違うような気がします」と話し、同じ地域内でも違いがあるという点で話が盛り上がりました。

また、釜石市と大槌町では海や山の風景が異なり、黒澤さんの「心癒されたい時に釜石の海に行きます。大型船や重機が並んでいて、大槌の海とは雰囲気が違うんです。また、市内の山側には橋野鉄鉱山という世界遺産がすごい山の中にあり、昔の製鉄技術を学びつつ自然豊かな空気を吸ってリフレッシュしています」という発言に対して、釜石市在住の岩城さん、佐藤さんは「鉄鉱山が癒しになるという発見が今日はありました」「保健師として担当している地域のことなので、そう言ってもらえてうれしい」と答えて、隣同士の地域でも持っている印象や感覚の違いに驚く場面もありました。

釜石の海。大型船が接岸する。

関係人口づくりは、地域の解像度を上げること。

今回の「東北暮らし発見塾」では、大槌町移住定住事務局で関係人口を増やす若者向けのプログラムをつくっているという黒澤さんから、「プログラムをつくる際にどこを意識したら良いか。また、イベントが終わっても参加者に町に来てもらうにはどんな工夫が必要かについて教えて欲しい」と弊誌編集長の指出に尋ねました。

「今日の会に参加して、黒澤さんはとても自然体であることが分かりました。コンテンツは黒澤さん自身。小さくても好きなことを伝えるプログラム、参加者が等身大で関われる大槌で出合えるものが見つかるプログラムなどがいいと思います。ぜひ黒澤さんの好きなものでプログラムを組んで、地域の解像度を上げることが大事だと思います」と指出は伝えました。

これに対して黒澤さんは、「浜辺を歩くプログラムをつくってみたい。大槌の浜辺には、歩くと音が鳴る吉里吉里(きりきり)海岸と、石が多くて波がすごく、サーファーが多く集まる浪板海岸があります。二つの海岸の距離はそれほど離れていないんですが、特徴が異なる浜辺があるんです」と回答。早くもプログラムづくりのヒントを見つけて、弾むような声を聞くことができました。指出からは「マイ大槌、マイ釜石がたくさん見つかると良いですね。今日の登壇した4人それぞれから語られるリアルは、今回の参加者にとってもとても有益な情報だったと思います」とコメントしました。

「東北暮らし発見塾」の後半では、移住者と参加者が直接話せるブレイクアウトセッションを実施。釜石市、大槌町の2グループに分かれて、参加者が気になることを質問したり、まちづくりについての意見交換をしたりしました。東北の寒さについては、大槌町の海側になると雪がほぼ積もらずに東北とは思えないほど過ごしやすく、山側になると内陸部から冷気が流れてきて寒いとのこと。その代わり、夏はクーラーが要らないほど涼しく過ごせるそうです。

また、参加者からは「大槌町でジビエのハンターをしている方の腕前を見てみたい」といった声も。これに対して伊藤さんは「ジビエの精肉・販売をしている兼澤幸男さんは、嗅覚が普通のハンターとは違ってどこにシカがいるのかがよく分かる方で、一見いなさそうに見えても撃つと本当に獲物に当たるんです。ジビエツーリズムも開催されています」とユニークな情報も飛び出した。

最後は、復興庁復興知見班参事官の後藤隆昭さんより、閉会のメッセージがありました。「この『東北暮らし発見塾』は、復興政策の一環として取り組んでいるものです。この地域は、12年が経過していますが震災の記憶が残る場所です。全国には地域課題がさまざまある中でこの地域は先取りして課題解決に取り組んでいるという視点で、この地域で活躍されている方がいること、震災を機にまちも人も変わってきていることを知って、応援していきたいと思います」と話して、今回のイベントを締めくくりました。

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photographs by H-tus Co., Ltd.
text by
Mari Kubota

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