通な食べ方は“うそ中”!?

通な食べ方は“うそ中”!? 愛知のご当地麺「長命うどん」をご紹介

ご当地麺グルメが豊富な名古屋。きしめんや味噌煮込みうどんは“なごやめし”の定番ですが、もっとローカルな地元の味「長命うどん」を知っているでしょうか?

古くからの歴史がある長命うどんは、コアなファンが多い老舗店です。名古屋市中村区に本店を構え、愛知県内でチェーン展開をしています。麺、つゆ、天ぷらにこだわったうどんが自慢。そして、人気の理由のひとつとなっているのが、注文時の自由自在なカスタマイズです。常連さんの注文から聞こえてくるのが、「う中」「うそ」「うそ中」といった不思議なワード…。

他店にはない“通”な食べ方から独自のこだわりまで、じっくり紹介します。

「長命うどん」の歴史は納屋橋とともに始まった!

長命うどんの創業は、大正2年(1913年)にまで遡ります。当時、本店があったのは納屋橋(なやばし)付近でした。

現在の納屋橋の風景
現在の納屋橋の風景(写真ACより)。開通当時の渡り初め式には、5万人もの人が集まったといいます。

市の開発事業の一環として、広小路通の堀川に架けられた納屋橋。大正2年に完成し、5月5日には渡り初め式が行われました。家業が3代夫婦で続いている縁起の良い家の者が最初に渡るという習わしのもと、式典の代表に選ばれたのがまんじゅう屋の「伊勢屋」とうどん屋の「三輪辨(みわべん)」です。

これを機に、「伊勢屋」は「納屋橋饅頭」へと改名。「三輪辨」は当時の市長から「長命」の名を授かり、「長命うどん」という名前が誕生しました。

毎朝4時から仕込みをする、手打ち・足踏みのうどん

「長命うどん」外観
地下鉄「中村日赤」駅・「中村公園」駅・「中村区役所」駅の各駅より10〜15分ほど歩いた場所にある本店。

創業以来、名前通りに長く愛されている長命うどん。本店は、昭和32年頃に現在の場所へと移転しています。

「長命うどん」内観

本店の営業時間は10:00~19:30で年中無休。早朝から働いている人が午前中に食事に来るなど、開店直後から次々とお客さんが入店します。

うどん
本店では毎朝4時から汁・天ぷら・麺の仕込みをしています。

そんな長命うどんの麺にはどんなこだわりがあるのでしょうか。長命うどん本店(有限会社 長命商事)の神野明美さんに話を聞きました。

「うどんの生地には手打ち作業が欠かせません。また、生地は足で踏み込んで“ちぎりだし”という作業で層をつくり、まるめて、のばして…と、何回もの工程を経てコシを出します」。

うどんの麺はやや細く、コシがありつつも柔らかめ。つるっと喉越しが良いのが特徴です。「子どもからお年寄りまで食べやすく、食欲がないときにもおいしく食べられるとよく言っていただけます」と神野さん。

天ぷら
店頭にずらりと並んだ天ぷら。

トッピングの天ぷらは、どれも大きめで満足感たっぷり。つゆが染みたときに衣が程良く溶けておいしくなるよう、粉の配合を工夫しているのだそう。「だからこそ、そのまま食べるよりつゆに浸して食べるのがおすすめです!」とのこと。

自分好みにカスタマイズを楽しもう!

メニュー

長命うどんでは、「麺の種類」「食べ方」「トッピング」を選べることから、なんと100通り以上の組み合わせを楽しめます。

<麺の種類>

店名に「うどん」と付きますが、実はうどん以外の麺も充実しています。6種類の中から選びましょう。

●うどん  ●中華そば ●そば
●きしめん ●冷麦   ●そうめん

<食べ方>

食べ方は5種類。冷たいものから温かいもの、ぬるいものまで温度もお好みで。

ちなみに、「ころ(香露)」とは愛知県・岐阜県周辺で食べられる、麺に冷たいつゆをかけた料理。「ぶっかけうどん」に似ていますが、岐阜県多治見市のうどん店が発祥です。

●かけ・・・温かいつゆで。
●ゆつき・・・湯ごと盛り付けた麺をつけ汁とともに。
●ぬる・・・ぬるめのつゆで、熱いものが苦手な方に。
●ころ・・・冷たいつゆで。
●冷やし・・・冷やした麺をつけ汁とともに。

<トッピング>

本店で食べられる天ぷらは10種類あり、一番人気は「やさい」。玉ねぎとにんじんを一緒に揚げていますが、「かきあげ」とも少し違う優しい味です。

●やさい ●さかな ●かきあげ
●いも  ●いか  ●ごぼう
●ちくわ ●なす  ●エビ
●長命草
(入荷状況により提供できない場合もあり)

長命草
店名にちなんだトッピングが「長命草」。沖縄で育つセリ科の植物で、栄養価がとても高いのだとか。

種類の違う麺を一度に味わえるミックスメニュー

さらに、長命うどんの独特な注文方法として知られるのが、「う中」「うそ」「うそ中」などのミックスメニュー。うどん・そば・中華そば・きしめんであれば、ひとつの器に“合い盛り”が実現できるのです。

う中
「う中(小盛)」の「かけ」に「えび」の天ぷらをトッピング。

「う中」とは、うどん&中華そばのミックスの略称。異なる麺を交互に味わったり、同時に啜ってみたりと、飽きずに楽しめます。

麺の量も、「小盛(1玉)」「大盛(2玉)」「二半盛(2.5玉)」「特盛(3玉)」と選択肢豊富。小盛が通常の一人前の量です。2種類の麺をミックスで注文する場合、小盛なら「うどん半玉」&「中華そば半玉」になります。

うそ
「うそ(小盛)」の「ころ」に「やさい」の天ぷらをトッピング。

では、「うそ」とは…もうお分かりでしょうか。そう、うどん&そばのミックスです。

ダシの効いたつゆは、不思議なくらいどの麺にも合います。うどんのつゆにしては少し濃い目でコクのある味。しかし、中華そばにしてはあっさりめの和風味。絶妙なバランスです。

さらには、うどん&そば&中華そばの「うそ中」など3種類の麺をミックスすることも可能。その場合は1玉×3種類の特盛でのみ、注文ができます。かなり量が多くなりますが、食べ切れる自信がある人にはおすすめです。

「食べたい」に応え続ける、サービス精神旺盛な老舗店

ミックスメニューが誕生したきっかけは、「うどんとそばを一緒に食べたい!」というようなお客さんの希望に応えるようになったことから。名古屋名物のきしめんを食べに行きたいけど、気分的にはラーメンもいいな…なんてときにも長命うどんなら叶えてくれるのです。

メニュー
天ぷらの他、「わかめ」「生卵」「とろろ」のトッピングもあります。

ユニークな注文方法が特徴的なのはもちろん、昔ながらの懐かしい雰囲気や、アットホームな空気感も魅力。長年続く老舗である本店では、親子三代にわたって通ってくれるお客さんもいるのだそう。近所にあったら絶対に通ってしまうような、まさに、地元で愛される名店です。


▼長命うどん本店
名古屋市中村区下中村町1-3

▼長命うどん公式サイト
http://www.chomeiudonhonten.co.jp/

文・撮影/齊藤美幸

■ライタープロフィール
齊藤 美幸|まちと文化が好きなライター。広告制作会社での勤務を経て、2020年からフリーランスとしてソトコトオンライン他で執筆中。地元・名古屋を中心に、都市の風景や歴史、地域をつくる人の物語などを伝えている。

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