地域によって、味も具材も異なるお雑煮。でも自分が今まで食べてきたお雑煮が他の家庭・地域とどう違うのか、比べることって意外と少ないのかなと思います。今回は県内に9種類ものお雑煮が存在するという、島根県のお雑煮文化について紹介します。ぜひあなたの地域のお雑煮と比べながら読んでみてください!
9種類のお雑煮も、基本は同じ
島根県HPに掲載されていた島根PR情報誌「シマネスク」(2018年冬 No.11)には、島根のお雑煮として5種類のお雑煮が紹介されています。
私も島根出身ですが、まさかそんなにお雑煮の種類があるとは全く知らず・・・。比べたり聞いたりしないと知らない地元の文化って、まだまだたくさんあるんだなと痛感しました。
そこでさらに調べてみると、実は島根県には5種類よりもっと多くのお雑煮が存在することが判明!
ある論文によると、島根県のお雑煮は9種類もあるそうです
その9種類とは、小豆雑煮・海苔雑煮・五色雑煮・黒豆雑煮・椎茸雑煮・豆腐雑煮・貝雑煮・野菜雑煮・鮎雑煮です。
そのうち上記論文によると、
しかし、島根の雑煮の主流は、分布の大きさからみて、出雲の海側の小豆雑煮、山側の海苔雑煮および石見の黒豆雑煮の3種であると思われた。
(引用:長澤善子・小松原紀子・野村和香子.島根の雑煮の分布と変遷(1).島根女子短期大学紀要,1998,p20)
と書かれています。実際に私の周りの島根出身者または島根在住者に聞いてみても、この3種類が多かった印象です。
でもどのお雑煮も共通するのは、丸餅を使うことやすまし汁仕立てであること。切り餅を使ったお雑煮や、みそ仕立てのお雑煮はありませんでした。
高級岩のりを使用した「海苔雑煮」
では9種類のうち、いくつかのお雑煮を簡単に紹介します!
まずは県東部(松江・出雲など)でよく食べられている「海苔雑煮」です。
ここで言う海苔とは「岩のり」を指し、地元で獲れる十六島海苔(うっぷるいのり)という高級海苔を使う場合が多いようです。
十六島海苔を取り寄せて自分でも作ってみたところ、まず一番驚いたのがその食感!初めて食べた十六島海苔はシャキシャキで、「そう言えば海苔って海藻だった」と感じるほどでした。
作り方はかつお節と醤油が効いた出汁に丸餅を入れ、柔らかくなったら十六島海苔を入れるだけ。味もさっぱりしているので、豪華なおせち料理に疲れた時にぴったりだなと思いました。
ぜんざいと違う?「小豆雑煮」
次は「小豆雑煮」です。
こちらも県東部でよく食べられていて、出雲がぜんざい発祥の地ということもあり、見た目はぜんざいとほぼ同じです。
島根県在住の知人に紹介してもらったレシピを参考に作ってみると、やはり小豆雑煮とぜんざいは別物なのかなと感じました。小豆雑煮は小豆の形が残る程度に煮るので、ぜんざいと比べて、豆を食べている感覚が強いお雑煮だなという印象でした。
食べ方にもいろいろなスタイルがあるようで、家庭によっては、砂糖を加えていない小豆雑煮を食卓に並べ、食べる直前に自分で砂糖を加え、甘さを調節するそうです。甘さの好みは家族内でも違うでしょうから、確かにこういう食べ方もアリですね!
食べていて飽きない!「五色雑煮」
次は県中央部(大田市)で食べられているという「五色雑煮」です。
上に乗っているのは、錦糸卵、かまぼこ、青菜(今回は三つ葉を使用)、かつお節、海苔の5種類。具材も多いので、一杯食べただけでかなり満腹感のあるお雑煮でした。
シンプルなお雑煮が多い島根県において、食べ進めても飽きない、楽しいお雑煮だなと思いました。
ただ錦糸卵を用意したり、青菜は下茹でしたりと結構手間はかかる印象。年末に具材を用意しておけば、ゆっくりしたいお正月にもさっと食べられるのかもしれません。
超シンプル!「黒豆雑煮」
最後は県西部(石見地方)でよく食べられている、「黒豆雑煮」です。
名前の通り、おせち料理にも欠かせない黒豆をのせた雑煮です。
かつお節と醤油ベースの出汁で煮たお餅に、黒豆を乗せるだけ。作り方はかなりシンプルです。
ただ正月用の黒豆は甘い味付けが多いと思うので、味の好みは分かれるかもしれません。黒豆好きな方はぜひ食べてみてほしいです!
その他こんなお雑煮も
その他のお雑煮についても、簡単にご紹介します!
- 椎茸雑煮:隠岐諸島に分布。椎茸や海苔、かつお節などを乗せる。出汁はあごだし。
- 豆腐雑煮:広島県境沿いの山間部に分布。焼豆腐、こんにゃく、野菜を使用。
- 貝雑煮:広島県境沿いの山間部に分布。餅の上に殻付きのハマグリを乗せる。
- 野菜雑煮:山口県境に近い地域に分布。里芋や大根、白菜などの野菜を使用。
- 鮎雑煮:鮎が獲れる高津川流域に分布。干鮎を用いる。
個人的には鮎雑煮を食べてみたかったのですが、なかなか鮎が手に入らず、今回は断念しました。
でもこの記事を通して、いろいろな地域の方と「うちのお雑煮はこんな感じだよ」「こんな作り方だった」と話し、多様なお雑煮文化を知ることができて、とても興味深かったです!
またお雑煮それぞれに歴史があり、そして時代とともに少しずつ具材や分布も変化しているように感じました。食文化が変わったことで消えてしまったお雑煮も、残念ながら全国にはあるのかもしれません。
この冬は、地域のお雑煮話に花を咲かせる年越しもなんていかがでしょうか?もしかしたら意外な発見が見つかるかもしれません。