【ソトコト×日本ワーケーション協会連載】ソトコトと日本ワーケーション協会がコラボして、各分野、各地域で活躍するワーケーション推進者をゲストに迎えて、毎回対談。ワーケーションにおける現在地や未来の展望を語ります。
第1回目(後編)。前回の第1回目(中編)に続いて、今回は後編。ゲストは、親子ワーケーションを推進するソトエ代表の児玉真悠子さん。親子ワーケーションの企画を作っていく上で大切なことをヒモ解いていきます。
サイト立ち上げで、親子ワーケーションの輪がどんどん広がっているのを実感
ソトコト 現在、「親子deワーケーション」のサイトは、地域の情報が満載ですね!
児玉 初期の頃は情報を集めたり、企画を作るのに、四苦八苦していました。しかし、今では、いろんな地域の方から企画や情報をいただけるようになりました。継続的に日本各地域の企画や情報が集まるようになりました。
ソトコト 親子ワーケーションのプラットフォームとして認知されたんですね!
児玉 はい! 親子ワーケーションのサイトが認知され、マーケットが広がり、新しい企画がどんどんサイトにアップされています。このサイトが親子ワーケーションのナレッジ共有の場になっていくことも目指していましたから、うれしい限りです。

徳島県神山町の宿泊施設「WEEK神山」に滞在する児玉さん。
山の景色を見ていると、企画が浮かんでくるのだそう!
ソトコト サイトが親子ワーケーションのナレッジ共有の場になっていく…具体的に聞かせてください。
児玉 地域で新たに親子ワーケーションを始めたい人がいたら、この「親子deワーケーション」のサイトに載っている他のいろんな企画を見て参考にして、自分自身で企画できるようになる…。そうしたら、全国各地でオートマティックにどんどん企画が増えていって、親子ワーケーションの輪が広がっていく!と思いました。これは書籍編集者の経験が生きているのかもしれません。マーケットが広がる時期は、事例集のニーズが高いことを実感していたので…。
親子ワーケーションの企画を増やしていくには、既存のリソースを活用することが重要
ソトコト 親子ワーケーションを企画する上で、大切なことは何ですか?
児玉 親子ワーケーションを企画するにあたり、新たに場所を借りたり、新たにゼロからプログラム作ったりするだけでなく、既存のリソースを活用して企画することも、企画推進していく上で大切なことです。そうしないと親子ワーケーションの企画は継続的に増えていきません。企画が自動的に増えていく仕組みがなければ、サイトは自走して活性化しません。
ソトコト なるほど! 確かに!
児玉 既存のリソースを活用する…つまり、既存の施設を使ったり、地元の子どもたち向けに既に実施されているプログラムを再活用したり、アレンジして企画を作る…。そうすれば、企画側も運営側も手間や負担が減り、企画を実行しやすくなります。実行しやすくなれば、企画は増えていき、サイトは自走します。地域に新たな経済圏が生まれれば、活性化します。親子ワーケーションで三方良し、Win-Winの仕組みが生まれます。
ソトコト どのような既存の施設が使われているのですか?
児玉 一番わかりやすい例で言うと、地元の保育園や学校施設を利用することです。地域の小学校との連携企画の具体例を挙げると、サイト立ち上げ期に企画された新潟県糸魚川市の「シーユーアゲインプロジェクト」があります。
新潟県新潟県糸魚川市の「シーユーアゲインプロジェクト」の、超興味深い事例
ソトコト 興味深い事例ですね! さらに詳しくお聞かせください。
児玉 新潟県糸魚川市の「シーユーアゲインプロジェクト」とは、毎学期1週間、市外の子どもたちを受け入れるプロジェクト。1学期の1週間だけ会って「さようなら」ではなく、「また次の学期に会おうね」と言って別れる。子ども同士の継続的な交流を促し、子どもの頃から糸魚川の関係人口になっていく…。1学期、2学期、3学期、それぞれ1週間、全学期通います。そうすれば子ども同士の交流に加えて、四季折々の糸魚川の1年間の魅力を3週間で触れることもできます。

夏でも溶けない万年雪や磁石にくっつく石も。
地球の不思議を感じられる場所。
ソトコト 素晴らしい企画ですね。小学校の受け入れは、ハードルは高くなかったのですか?
児玉 教育委員会の同意を得るなどいくつかハードルはありましたが、「受け入れ側の地元の子どもたちのため」にという思いがとても強く、今も続いています。小学校全体の人数が少なく、6年間みんなずっと同じクラスで、2学年が1クラスで学ぶ複式学級だったり…すると外部からの刺激や新しい出会いがない…。同学年に同性の友人がいない、ということもあるそうで……。
ソトコト 小学生の時期は、新たな友達や出会いが欲しいですよね!
児玉 男の子ならキャッチボールしたりサッカーしたり、女の子ならグループを作ってでかけたり、お泊り会したり、たくさん一緒に友だちと遊びたい時期ですよね! 同性の友だちとも遊びたい…。そんな時に、たとえ1週間でも、毎学期、新しい友だちが来てくれるのは、地元の子どもたちにとって何よりもうれしいことで、刺激になる。1学期1週間の転校生となる子どもたちもいつもとは違う学校体験ができる…下校途中に桑の実を食べたり、体育の時間にスキーをしたり…。地元の子どもたちにとっては当たり前の日常を、1学期1週間の転校生となる子どもたちは感動してくれる。地元の子どもたちも、地元に誇りを持うようになるそうです。
ソトコト 素晴らしい小学校活用プロジェクトですね!
児玉 もう1つ小学校活用の事例を挙げると、徳島県神山町のオルタナティブスクール「森の学校みっけ」があります。この「森の学校みっけ」の面白いプロジェクトを紹介します。夏休み、冬休み、春休みは小学校はお休みになります。その休みの期間だけ、小学校を活用した「森の学校みっけ」の企画。地域外の子どもたちを受け入れてプロジェクトを実施したら大好評。毎回、たくさんの子どもたちが参加する人気企画として継続しています(次に続く)。

前編
仕事×バケーションだけでない、親子ワーケーションという概念がステキすぎる!【ローカル×ワーケーション①】
中編
もっと親子ワーケーションを推進するために、情報サイトを立ち上げるまでの苦労とは⁉【ローカル×ワーケーション②】
【児玉真悠子プロフィール】
株式会社ソトエ代表取締役。2004年に慶應義塾大学を卒業後、ダイヤモンド社等での編集経験を経て2014年に独立。以降、子どもの長期休暇中に自身の仕事を旅先に持っていく生活へ。現在、編集の仕事の他「親子deワーケーション」の運営を通じて、仕事と子育てをどちらも大切にできる暮らし方を普及中。
【一般社団法人日本ワーケーション協会プロフィール】
ワーケーションを通した「多様性が許容される社会実現」を目指し、2020年7月に発足。300を超える会員(自治体・企業・個人)とともに、様々な取り組みを行っています。