【ソトコト×ヤモリの空き家エコノミー連載】第5回目(後編)。日本の各地域を再生して、地域を活性化、関係人口を推進していくプロジェクトが「ソトコト×ヤモリの空き家エコノミー」。毎回ゲストを迎えてソトコトと一緒に対談。
日本の築古戸建ての再生賃貸事業を手掛ける株式会社ヤモリ代表の藤澤正太郎さんが毎回、ソトコトと一緒にゲストを招いて、日本の各地域の空き家から推進する地域化、関係人口作り対談。
第5回目(後編)。第5回目の最後となる後編では、東大など大学で教鞭を取る吉田二郎教授に、さらに深掘りしていきます。空き家を取り巻く税制をテーマにリテラシーの必要性から今後の研究の展望まで徹底的に対談。
空き家をほったらかしにしていることで、実は計算すると、かなりの損失に…
吉田 ようやく近年、一部の「特定空き家」に対して税負担を上げる制度が導入されましたが、対象はごくわずか。実質的にはほとんど意味を成していません。もっと一般的に他の空き家にも適用すべきだと思います。利用していない分の税コストを上げるなど、空き家に関する制度の徹底が必要だと思います。
藤澤 私たちも全国で空き家を見ていますが、「特定空き家」に認定されるレベルの物件はごく一部。実際にはほとんどの空き家が、「放置に近いけど、まだ倒壊していない」タイプ。土地だけの不動産よりも、建物が建っているだけで不動産の税負担が軽い…という目に見えるメリットの裏側で、空き家をほったらかしていることで何も生まない…資産価値の機会ロス=見えない損失が年々積み上がっているわけです。
吉田 まさにそうなんです。価値の減少や金融的な「機会費用」…つまり、空き家を運用していたり、空き家を売却したお金を他で運用していれば得られたはずの利益や固定資産税を合わせて可視化すると、驚くほど大きな損失になります。

ヤモリが所有する空き家の収支事例。
空き家には高い収益性を生み出すポテンシャルが!
空き家問題は「持ち主の理解不足」も大要因! 使わない家を持ち続けることは経済的に非合理
吉田 多くの人は「借金していないから、金融的な損失はない」と考えがちですが、実際には空き家や空き部屋のほたらかしなど「眠っている資金」があるだけで、金融的な機会損失が生じています。例えば、空き家を売却して株式や債券に投資していれば、年5〜6%のリターンが得られたかもしれない。この15〜20年で見ても、株式のインデックス投資だけで資産が3倍以上になりましたから。
それを考えれば、「使わない家を持ち続ける」ことがどれだけ経済的に非効率か、よくわかると思います。
藤澤 本当にそうですね。相続対策や税負担を考えると、現金化して再運用した方が遥かに経済的に合理的。結局、経済リテラシーや不動産リテラシーを高めることが、空き家問題の根本解決につながるんですね。
吉田 はい! 空き家問題は、税制だけでなく「持ち主の理解不足」も大きな要因です。不動産のリテラシーは、買い手だけでなく、売り手、相続人側にも必要です。今後は、制度面と教育面の両輪で、空き家問題を改善していくことが重要だと思っています。

売却益で株式や債券に投資していれば
リターンを得られていた可能性も!と力説。
吉田教授の新刊とヤモリ×ソトコトの新刊が出たら、ぜひ一緒にセミナーを!
藤澤 今日はこれまで、空き家問題…中古住宅市場にえける学術的な観点から実務のヒントまで幅広く伺いましたが、最後に先生ご自身の今後の研究テーマについてもお聞かせください。
吉田 現在は日経BPと協力して「不動産の金融と経済」に関する教科書を執筆しています。実務家でも学びやすく、かつ理論の基礎から応用までを一貫して理解できる教材を作っています。今回お話した容も盛り込んでいます。2026年春から夏くらいに刊行予定ですが、入門書としても使えますし、より高度な研究、実務へつなげる橋渡しのような本にしたいと思っています。
藤澤 ヤモリとソトコトでも、私たちなりの実践的な空き家エコノミーの書籍を現在作っており、吉田教授の教科書が出版されたら、ぜひ並べて紹介したり、出版セミナーを一緒にやりたいです! 不動産を学問とビジネスの両側面から正しく伝えることは、これからますます重要になると思います。今日はお忙しい中、本当にありがとうございました。
前編
日本の「新築志向」が市場を硬直させる…「アメリカのような制度を見習うべき⁉」と、そこで、東大の吉田教授登場!【空き家エコノミー⑬】
中編
吉田教授、大いに語る! 中古住宅市場の歪みをなくせば、きちんと空き家が評価されるようになる時代がやってくる⁉【空き家エコノミー⑭】
【吉田二郎プロフィール】
1970年岩手県生まれ、1992年東京大学工学部卒業。MIT 修士、カリフォルニア大学バークレー校修士、博士号取得。現在、ペンシルベニア州立大学教授と東京大学大学院経済学研究科特任教授を兼務。MIT客員教授、日本銀行客員研究員、政府審議会委員など歴任。国内外の不動産学会でも要職を務める。
【藤澤 正太郎プロフィール】
株式会社ヤモリ代表取締役。2011年に慶應義塾大を卒業後、三菱商事株式会社に入社。インフラ事業の海外案件とアセットマネジメントに従事。南米チリに4年間駐在。その後、NY本社の不動産ユニコーン企業であるKnotel IncのJapan GMを務める。2018年に株式会社ヤモリを創業し、日本の中古戸建て市場の活性化を通じた地方創生を目指す。












