「ライク・ア・バードokitama」第2弾 建築家の成瀬友梨さんと尋ねる、新緑が芽吹く飯豊町

「ライク・ア・バードokitama」第2弾 建築家の成瀬友梨さんと尋ねる、新緑が芽吹く飯豊町

「ライク・ア・バードokitama」旅のその先へ。

― イザベラ・バードのように、軽やかな一羽の鳥のように。自分らしい価値観に出会う映像の旅。

19世紀末、明治初期の日本にひとりの英国人女性旅行作家が訪れました。 彼女の名前はイザベラ・バード。海外旅行が一般的ではなく、女性の自由が今より遥かに制限された時代にもかかわらず、軽やかにしなやかに世界中を飛び回った女性でした。 その道中を記録した『日本奥地紀行』の中で「東洋のアルカディア(理想郷)」と称賛された山形県・置賜(おきたま)地方を舞台に、「現代のイザベラ・バード」と呼びたくなるような、新しいライフスタイルを歩む女性たちが旅します。

大自然の豊かさと厳しさを伝え、先人たちの知恵が色濃く残る飯豊町

飯豊町(いいでまち)の白川ダム上流部に、雪解け水が流れ込んで水没林になる一帯があります。ダム湖が満水となる1カ月だけ現れる、新緑と桜の山々を背景に朝霧に包まれた水没林の風景はまさに絶景。
豊かな自然に囲まれた「日本の原風景」というイメージがぴったりな飯豊町を、「シェアする場をつくること」をコンセプトに場のデザインを行う建築家・成瀬友梨さんが訪れます。
今も自然と共生するこの町で、成瀬さんと一緒にシェアすることで生まれる価値について考えていきます。

―「ライク・ア・バードokitama」では山形県外からやってくる女性が、とまり木を渡る鳥のような旅をします。

第1弾のテーマをそのままに、今回のイザベラ・バードとなる成瀬友梨さんが飯豊町を訪れ、その先で出会う女性たちは、観光で訪れるだけなら会うことのできない、地域に根ざした活動をしている方々。
飯豊町は最上川の源流部に位置し、飯豊連峰の山懐をはじめとして総面積の約84%が山林で、田園散居集落に代表される平坦な水田地域と中山間地の山里地域、源流地域の山間地に大別することができます。気候は、寒暖の差が大きい内陸性の特徴を有し、県内でも有数の豪雪地帯です。点在する屋敷林に囲まれた家々には、この地域で暮らす人々の知恵が凝縮されています。
建築・造園・土木の知識は、町の景観を作る上でも重要であり、土地の人が「当たり前」だと思っている情景に、建築家として活動する成瀬さんの視点が、地域資源の骨格を見出し、飯豊町の新しい魅力を引き出していきます。

「ライク・ア・バードokitama」第2弾 建築家・成瀬友梨さんと尋ねる、新緑が芽吹く飯豊町


成瀬さんが飯豊町を訪れたのは2021年5月15日から16日。4月にはまだ荒涼としていた大地が目覚め、新緑が山々や平地を彩りはじめる季節です。成瀬さんが出会った女性たちをご紹介します。
加藤絵美さん(飯豊町 地域おこし協力隊 アウトドア体験実施及び指導等)
舩渡川葉月さん(雪室熟成珈琲 珈琲豆販売 農家レストランこしゃる運営)
伊藤信子さん(農家民宿いろり店主)
小林志津可さん(株式会社伊藤造園土木 一級造園施工管理技士)
皆川亜紀さん(clueアクセサリー作家 理容師)
動画と合わせて、旅の模様をお届けします。

ー 2021年5月15日

飯豊町地域おこし協力隊 加藤絵美さん

旅の始まりは、朝もやの中の水没林から。
山間部にある白川ダムには、この時期、平地にある水田に流すための水を蓄えています。この時期がダムの水面の位置が一番高く、普段は湖底に生えている木々が水没するため、現在ではその絶景に魅せられた多くの人が訪れる観光スポットとなっています。水没する木々は白柳。一時的に水没しても枯れることがないことから、この風景が生み出されます。
加藤さんはこの湖の案内人のひとり。1年前に地域おこし協力隊として飯豊町に着任してから、カヌーガイドの資格をとり、アウトドアの魅力を伝える役割を担っています。

加藤さんは前職で美術館のキュレーターをしていたという経歴もあり、「場を提供する」「人をつなげる」ことの難しさを知る成瀬さんと会話が弾みます。

雪室熟成珈琲 舩渡川葉月さん

次に訪れたのは、白川ダムのある中津川地区で暮らす舩渡川さんのお宅。空き家になっていた古民家を再生し、家族と生活しています。夫とともに自家焙煎している「雪室熟成珈琲」を販売しています。農家レストラン「こしゃる」も運営していますが、現在は休業中。自ら薪割りもこなし、昔ながらの暮らしを実践しています。

成瀬さんも薪割りを体験。背景に写るご自宅の窓には、冬の豪雪からガラスを守る雪囲いのための金具が付いています。生活の至る所に、雪国の知恵が凝縮されています。

農家民宿「いろり」 伊藤信子さん

伊藤さんは、70歳になる直前に、中津川地区の川側に郷土料理を提供する農家民宿「いろり」を立ち上げました。ここは飯豊町の中でも一番の豪雪地帯。現在は白川ダムに沈む村の歴史をも知る地域の生き字引的存在でもあります。
観光地として知られるようになった水没林のある白川ダムも、水害が多かったために40年ほど前に建設されたという理由があります。車すらなかった時代にこの場所に生きてきた知恵や、伊藤さんが得意とする「昔語り」を聴くことができる貴重な場です。

春になってから採れる山菜や川魚、そして冬からの保存食をふんだんにメニューに取り入れた郷土料理を味わうことができます。

株式会社伊藤造園土木 一級造園施工管理技士 小林志津可さん

小林さんは、飯豊町の原風景である屋敷林のある家々を、現代の形で残していくために模索し仕事を通じて実践している造園家です。ドイツで修行もしていたという小林さん。散居集落を一望できる展望台で、成瀬さんと小林さんの専門的な話題が飛び交います。

平地の田畑の中に家々が点在し、そこに生えている木や草花一本一本には全て役割があり、そこに暮らす人々が生きるための工夫があります。

集落を一望できる展望台からは、田植えを待つ鏡面のような水田を眺めることができ、朝焼けや青空を映すさまは、この時期の観光資源のひとつでもあります。

ー 2021年5月16日

clueアクセサリー作家 理容師 皆川亜紀さん

前日の行程を終え、飯豊町にある「HOTEL SLOE VILAGE(スロウビレッジ)」に宿泊した成瀬さん。この日は、スロウビレッジのロビーにて、飯豊町で活動するアクセサリー作家の皆川さんとお話をします。

「creema」など有名な作家が名を連ねるネットショップを検索すれば皆川さんの作る繊細なアクセサリーに根強いファンがいることがわかりますが、彼女の飯豊町での本業は、実は理容師。
父が理容師、母が美容師という家に生まれ、アトリエは両親が運営する店の一角にひっそりとあります。
ここ数年で「副業を持つこと」は当たり前の価値観となっていますがその両立は簡単なことではありません。
ショップなどの販売する実際の「場」を持たずに活動する皆川さんは理容師の父、美容師の母、両親の価値観の全てのバランスをとる形でさらに自分のアクセサリー作家としてのアトリエを作り地域で唯一無二の空間を作り出しています。
待合室は、父の趣味のDVDコレクションがひしめく喫茶室でもあり、成瀬さんは「専門的な知識で見ても、居心地のいい空間」であると興味が尽きない様子でした。

飯豊町の旅を振り返って

理美容室のある場所から一歩外に出ると、そこは一面の田園風景。
春は菜の花の一面の黄色が、田植えが終われば緑の絨毯となり秋には稲が黄金色に輝き、冬が近づき白鳥が舞い降りる頃、雪が降れば一面の雪景色で真っ白になる。
この記事で紹介したのは、飯豊町で出会った女性たちと、風景で言えば春の一場面でしかありません。
「春夏秋冬、全ての季節に訪れてほしい」
今回成瀬さんと出会った全ての女性が、口を揃えて語ります。
厳しい冬があるからこそ、春夏秋冬のきらめくような美しさをぜひ見にきてほしい、とのことです。

「ライク・ア・バードokitama」第2弾 建築家・成瀬友梨さんと尋ねる、新緑が芽吹く飯豊町


成瀬さんが出会った皆さんは、やまがたアルカディア関係案内所のWebサイトでもご紹介しています。


さいごに。
成瀬さんと、飯豊町に住む女性たちとを旅で引き合わせ、スケジュールや場所の段取りなどの全てを調整してくれたのが、飯豊町商工観光課 観光交流室の二瓶綾さんです。

動画に登場していただいた女性たちは、ふらりと町を訪れただけでは普段なら会うことができない方たちです。地域の深いところにいて活動を続ける女性たちに、限られた時間の中で会いに行けたのは、二瓶さんのご案内があってこそ。
地域を行き来して緩やかにその土地と関わる人たちを、ソトコトでは「関係人口」と表現しています。地域との“関わりしろ“を作る関係案内人とは、二瓶さんのような方をいいます。
外からやってくるイザベラ・バードのような人を受けとめ、そこに暮らす人とつなげることができる役割の方がいるからこそ、今回のような旅が実現します。

人に会いに行ける旅。
それが「ライク・ア・バードokitama」です。

次回はグランドレベルの田中元子さんが、暑さ忘れる長井市を旅します。
第3弾もお楽しみに。

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