おしゃれな港町のイメージが強い神戸。実は中心部から車や電車で30分ほどで、緑美しい里山や茅葺き屋根の農家が点在する風景に出会えるのも魅力です。そして「自然環境を守りながら、訪れる人に里山ならではの体験を提供したい」――こうした取り組みが、今、広まっているのです。この地域を自転車で見て回る「神戸農村サイクリングモニターツアー」も開催されていて、〈もうひとつの神戸〉として注目を集め出したエリア。さあ、でかけてみましょう!
神戸里山MAP
目次
神出山田自転車道 - ファミリーでも気軽に楽しめるサイクリング体験
神戸里山地区の西側・西区神出町と、東側・北区山田町を結ぶ19.3キロの自転車道。30年以上前に開通した、まさに時代を先取りした歴史あるサイクリング道で、2019年により走りやすいようにと全面リニューアル。コースの大部分が自転車・歩行者専用道で、風光明媚で気持ちよくサイクリングが楽しめます。特につくはら湖沿いにある「BE KOBEモニュメント」や「つくはら湖展望台」は眺めのいいポイントなので、ぜひ訪れてみたい場所です。
年に数回、期間限定ですが、コース上4ヵ所(つくはらサイクリングターミナル、谷上駅前駐輪場、栄駅駐輪場、兵庫楽農生活センター)でレンタサイクルが可能です。里山地区すべてをサイクリングするのはちょっとハード、というファミリーやサイクリング初心者は、ぜひレンタサイクルにトライしてみましょう。
●神出山田自転車道
https://www.city.kobe.lg.jp/a83166/20200720_kandeyamadabicycleroad.html
神戸咲く咲くHarmony - 規格外の野菜や果物をヘルシーなチップスに
規格外の大きさ、キズがある……そうした理由で流通に乗らなかった地元の野菜や果物を、真空フライという技術を使い、ヘルシーで味わい深いチップスにして販売しています(果物などは地元以外の規格外品も使用)。
社長の鯛かおるさんが「廃棄される規格外の農産物をチップスにして商品化できれば、廃棄物を削減できるし農家の人の生活も潤う」と考えたことがきっかけで開発されたもの。もともと油濾過装置、真空フライヤーの機械メーカーであったことでその技術をフル活用して、生まれました。
「学校給食でさえ、加工できる野菜に大きさの規格があり、廃棄される野菜が出てしまい、もったいない」――こうした鯛さんの思いから、神戸市の給食用に大切に育てられたものの規格外となったジャガイモやにんじんを真空フライチップスにして「給食野菜チップス」として商品化。2017年に農林水産省のフード・アクション・ニッポン・アワードを受賞しています。
鯛さんは、かつてアフリカの飢餓問題などがメディアで大きく取り上げられていた頃に、規格外農産物はお金をかけて商品化するよりも捨てた方が安いという話を聞き、「はたしてそれでいいのか」と思い悩んでいたそうです。油濾過装置、真空フライの技術を持つ今の会社の社長に就任した際、真空フライの技術はあまり見向きもされていなかったそうですが、エコやリサイクル、SDGsなどの気運の高まりで、やっと世の中がその価値に気づいてくれたと喜んでいます。
神戸咲く咲くHarmonyの周りは田園や畑が広がっており、目の前には自社の温室もあります。温室内ではサイクリングで訪れた人などにプチトマト摘みを楽しんでもらったり、バナナやパイナップルなど南国の果物がどのようになっているかを見てもらったりできるようにもなっています。
神戸の里山で美味しいチップスを食べ、新鮮な空気を吸いながら、少しでも農家の方の努力や大変さを感じてもらえたら、そして何より楽しんでもらえたら――それが鯛さんの願いです。
●神戸咲く咲くHarmony
https://www.kobe3939.jp/
神戸ワイナリー - 神戸の土壌が生み出すワインに舌鼓
神戸市西区の緩やかな丘に建つ神戸ワイナリー。敷地内と神戸市内の契約農家を合わせ約40ヘクタール(甲子園球場約11個分)もの広さのブドウ畑を持っており、赤ワイン用のカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、白ワイン用のシャルドネ、リースリング、信濃リースリングが栽培されています。実は2019年のG20大阪サミットの際、首脳夕食会で振る舞われた唯一の赤ワインは、同ワイナリー自慢のベネディクシオン・ルージュ2016であったほど高品質。
ワイン造りの工程を見学したり、ワインショップで試飲やワイナリーならではのおみやげを探したり……。サイクリング途中やドライブで立ち寄っているときにはワイン用ブドウから作ったブドウジュースを飲んでみるのもおすすめです。またブドウ畑を望むワイナリーカフェがあって、サイクリング途中のランチにも最適。
現在ワイナリー全体の大規模リニューアルに向けて、神戸市が再整備計画を取りまとめているとのこと。都市と農村が近接した立地と県内有数の農業生産を活かし、この場所が神戸の食と農をテーマにした「新たな食文化の創造拠点」になるように取り組みを進めています。
●神戸ワイナリー
https://kobewinery.or.jp/
六甲のめぐみ(JA兵庫六甲)-神戸里山の新鮮な農産物が大集合
神戸ワイナリーの隣りにあるJAの農産物直売所。六甲山系の澄んだ水と空気、そして温暖な瀬戸内気候が、全国屈指の農産物を育んでいます。全国のJA直売所の中でトップ10に入るほどの売上を誇り、館内には地元の人から観光客まで大勢の人たちが新鮮な野菜を求めてやってきています。
●六甲のめぐみ(JA兵庫六甲)
https://www.jarokko.or.jp/food/fmarket_store/megumi.html
太山寺珈琲焙煎室 - 必要なときに、必要なだけ焙煎して美味しいコーヒーを届ける
国宝 太山寺の参道にひっそりたたずむ古民家を改築した珈琲焙煎室。木漏れ日が差し込む庭先では、誰もが幸せそうな顔をしてテイクアウしたコーヒーをゆっくり味わっています。古民家をお店とする機会を得て改築することになった時、庭にある木々はすべて残し雰囲気をそのまま維持することを心がけたと言います。鳥のさえずりが聞こえ、田んぼを吹き抜ける風を感じられるこの場所で、コーヒー豆を焙煎してゲストに提供するのがうれしいと、オーナーの横野貢司さんが話してくれました。
お店のモットーは〈美味しいと思ったコーヒー豆だけを厳選し、焙煎してコーヒーを淹れる〉ということ。「さらり」「ほどよし」「あまにが」と、誰もが名前を見て味が想像できる3つのブレンドと、常時10数種類の単一農園の豆を用意。
「オーガニックやフェアトレードという言葉にこだわらなくとも、本当に美味しいと思える豆は、必然とそうした環境で育てられ、取引されているんですよ」
と横野さんが話してくれました。里山めぐりのひととき、ここでコーヒーを楽しんだり、テイクアウトして観光に出かけたり。おみやげにお気に入りのコーヒー豆を買うのをお忘れなく。
●太山寺珈琲焙煎室
https://www.taisanji-coffee-works.jp/
湯~モアリゾート 太山寺温泉なでしこの湯 - 里山めぐりで疲れた体をほぐす
太山寺近くにある天然ラジウム温泉。温泉ソムリエがいて、ラジウム泉質の温泉効果を最大限引き出せるよう考え、露天風呂やマッサージ効果のある滝湯などいくつかのお風呂を用意しています。特に日本ではここだけと言われる、天然ラジウム温泉を使ったロウリュウサウナは、微量な放射線で免疫効果が高められるホルミシス効果が得られ、美容や健康に効果が大きいと言われています。またサイクリングなどで疲れた体をリフレッシュできる酸素カプセル設備もあります。
日帰り温泉施設が充実していますが、里山めぐりで1泊するときにもおすすめの場所。客室はいくつかタイプがありますが、どれもゆったりした雰囲気。寝具はエアウィーヴが使われているなど快適な眠りへのこだわりも……。さらに宿泊客は自由に温泉施設が利用できるほか、宿泊施設内にも大浴場が完備されています。また夕食は、地元の野菜や肉、明石の海で採れる魚介を使った地産地消で、美味と評判です。
●湯~モアリゾート 太山寺温泉なでしこの湯
https://www.nadeshikonoyu.com/
三身山 太山寺 - 奈良時代から続く古刹でこの地の歴史に触れる
716年、藤原鎌足の孫、藤原宇合によって建立されたと言われる太山寺。現存する本堂は鎌倉時代(1300年頃)に建てられたと言われる国宝で、入母屋造、銅板葺きで堂々としており、かつての栄華を今に伝えています。太山寺参道入口に建つ国・重要文化財の仁王門、石畳の参道、参道沿いの枯山水の庭園をもつ安養院庭園や成就院庭園、境内内には国の重要文化財である阿弥陀如来座像を安置する阿弥陀堂(1688年建造)、兵庫県指定有形文化財の三重塔(1688年)など、ほかにも見逃せないポイントがいろいろ。また太山寺周辺は「太山寺風致地区」として指定されており、自然景観が守られています。秋の紅葉、春の桜が本当に見事。ゆっくり時間をかけて散策しましょう。
●三身山 太山寺
http://www.do-main.co.jp/taisanji/
淡河宿本陣跡 - 江戸時代から続く宿場の雰囲気を味わう
神戸市北区淡河町は、江戸時代、参勤交代の大名行列や有馬温泉への湯治客が通る湯山街道の宿場町だった場所。そして淡河宿本陣跡は大名行列一行が宿泊する場所として江戸時代中期から利用されていた建物です(2階部分は明治時代に建て増しされています)。淡河が宿場町として栄えた当時の面影がそのまま残る建物で、いくつかの大座敷や茶室、納屋、白壁の土蔵などと手入れの良く行き届いた庭、広々とした中庭からなる施設です。
50年以上空き家として放置されていたこの由緒ある建物を2015年、地元の有志が中心となって補修を行い、地域の人はもちろん、観光客も集えるようなスペースとしての活用が始まりました。保存状態の良さから2021年公開の映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』の撮影にも使われました。
現在は大広間と納屋を利用したカフェレストラン本陣なな福、「モノに新しい未来を」をモットーとし、新品・中古品を問わず素敵な雑貨やアクセサリーを販売するフリーバザールRe・Eraがあります。本陣なな福の名物ランチ、肉厚の蒸し鯖寿司をメインにした味比べ定食や各種釜飯は、里山めぐりの途中でぜひ味わいたい一品です。
●淡河宿本陣跡
https://www.ogo-honjin.com/
神戸農村サイクリングモニターツアー開催中
2021年12月4日まで、土日・祝日に本格的なサイクリングツアーから、個人サイクリスト向けサイクルトレインなどの実証実験が行われています。
●神戸農村サイクリングモニターツアー
https://kobe-nosoncycle.jp/