路上で狂言に出会って…

特集 | VISIONMAP | 1 路上で狂言に出会って… “芸どころ名古屋”の「やっとかめ文化祭」で活躍する、黄色い法被のやっとかめ大使

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やっとかめ文化祭実行委員会

2021.12.23

名古屋のまちで繰り広げられる、文化・歴史・伝統芸能の祭典「やっとかめ文化祭」(主催:やっとかめ文化祭実行委員会、助成:文化庁 文化芸術創造拠点形成事業、一般財団法人地域創造)。9年目を迎えた2021年は、10月23日から11月14日まで約3週間にわたって開催され、盛況のうちに幕を閉じました。

伝統芸能の公演やまち歩きツアーなど、多彩なプログラムを展開

江戸時代、尾張徳川家のもとで花開いた、名古屋の芸能。「やっとかめ文化祭」では、“芸どころ名古屋”に根差した多彩な文化を、気軽に体感できます。ちなみに、「やっとかめ」とは、名古屋弁で「久しぶり」という意味を指す言葉。ぜひ覚えてくださいね。

まちの広場や道端、お寺の本堂、大学のキャンパス、劇場、名古屋城、料亭など、市内のあちこちが文化祭の舞台。狂言やオリジナル歌舞伎などをまちなかで上演する「芸どころまちなか披露」、伝統芸能の舞台公演「芸どころ名古屋舞台」、歴史や文化を学ぶ「まちなか寺子屋」、名古屋好きのガイドが案内するツアー「まち歩きなごや」など、プログラムも盛り沢山です。2021年はオンライン配信も織り交ぜながら実施されました。

やっとかめ文化祭を活気づける「やっとかめ大使」

そんな、やっとかめ文化祭に欠かせない存在が、黄色い法被をまとった「やっとかめ大使」のみなさんです。「名古屋が好き」「もっと名古屋のことを知りたい、盛り上げたい」などの思いから一般公募で集まったボランティアで、運営のサポートや発信を担っています。

過去開催時の「やっとかめ大使」集合写真

やっとかめ大使の活動スタートは2014年。やっとかめ文化祭の立ち上げ2年目に、まちの人たちも一緒にイベントに関われる仕組みとして始動しました。“スタッフ”ではなく“大使”と名付けたのは、ただお手伝いをするだけの役割にはおさまらないから。一人ひとりが文化祭の主役です。毎年夏頃に募集をしていて、2021年は46人が参加しました。

文化祭の開催前には、大使限定で参加できる企画も用意しています。伝統芸能や文化に親しめるようにと、能楽師から能を学んで体験したり、ういろうを食べ比べてチャート化したり。コロナ禍においては、オンラインで大使同士の交流を深める機会を設けてきました。

楽しみながら参加できる“関わりしろ”は、新たな興味・関心の発見にもつながるはず。なかには、ここでの出会いを“きっかけ”に変え、フィールドを広げて活躍している人も。やっとかめ大使として活動することの面白さとは? 大使さんに会って、生の声をインタビューしました。

「まちが好き」を入り口に、芸妓から和菓子まで

「やっとかめ大使」制度が発足した2014年当時から活動している大使の一人が、脇⽥佑希⼦さん。8年間もの活動期間にはきっと、たくさんの思い入れが詰まっているのではないでしょうか。脇⽥さんはまちの散策が好きとのことで、この日もぶらりとお寺や史跡を歩きながらお話を聞くことに。

——まずは、活動参加の経緯から教えてください!

「2013年にパンフレットやウェブサイトで開催情報を見かけ、狂言のストリートライブに足を運んだのが、やっとかめ文化祭との出会い。こんなにカジュアルに、ふらっと伝統芸能を楽しめるなんて! とすごく新鮮でした。翌年も開催情報をチェックしていたら、“やっとかめ大使”の募集を知って。以前からウォーキングイベントの運営スタッフをするなど、まちに関わることに興味があったので応募しました」

伝統芸能=「鑑賞のハードルが高い」というイメージを払拭する、狂言のストリートライブ「辻狂言」

——やっとかめ大使になってからは、具体的にどんな活動をしているのでしょうか?

「イベント当日の受付係・カメラ係・レポート係など、その時々で役割分担をしています。私は文章を書くのが好きなので、レポート記事の作成を積極的に担当することが多いですね。知っているようで知らない名古屋のまちの魅力を発見できて、自分の学びになることがモチベーションにつながります。普段は踏み入ることのできない世界を覗けるのも、大使の特権。たとえば、料亭で芸妓さんのお座敷芸に興じる『お座敷ライブ』というプログラムでは、芸妓さんの舞台裏での気遣いや手先の所作まで間近で見られたのが印象的でした」

「お座敷ライブ」で見られる、名古屋の芸妓の名物芸「金のしゃちほこ」

——今年は、どんなプログラムで大使として活動しましたか?

「まちなか寺子屋で、『お米トークと和菓子づくり体験』というプログラムのお手伝いをしました。和菓子の材料である“お米”についての話を聞いた後、おはぎや練りきりの和菓子づくりを体験する内容です。運営のサポートをしながら、大使も一緒に体験させてもらえて面白かったですね」

「参加者の方とお話しする機会があるのはもちろん、大使同士で交流できるのも楽しみ。『どんなことに興味があるんですか』『このプログラムが面白かったです』と共通の話題が尽きず、盛り上がるんです」

「やっとかめ大使」から、コーディネーターやガイドにも!

——やっとかめ大使の活動を続けるなかで、何か挑戦をしたことはありますか?

「活動を続けるうちに、やっとかめ文化祭の企画側に回るチャンスをもらいました。2017年に、まちなか寺子屋の企画をやっとかめ大使から募るアイデア会議があって。私もいくつかアイデアを出したのですが、そのうちのひとつが“瓦”をテーマにした講座でした。実は私、お寺や古い建物にある瓦が好きで。とはいえ、そんなマニアックな趣味をさらけ出したら、引かれちゃうんじゃないかと思っていたんです。でも、恐る恐る発表してみたら、意外にも『面白い!』という反応が返ってきて。その企画が採用され、寺子屋コーディネーターに挑戦することになりました」

——目の付け所がユニークですね。“瓦”のどんなところが好きなのでしょうか?

「特に、屋根の軒先にある軒丸瓦が好きです。地元のまち歩きイベントに参加したときにボランティアの方が『瓦に字が書いてあるよ』と教えてくれてから、行く先々で瓦に目が行くようになって。建物によって文様が異なり、毎回発見があります」

「まちなか寺子屋の講座は『瓦にみる名古屋の歴史』と題し、名古屋のまちの成り立ちを瓦から紐解く内容に。準備から開催当日まで初めてのことだらけでしたが、なんとか無事に終了しました」

——2021年には、「まち歩きなごや」のガイドとしてお名前が掲載されていますね。

「2020年から声をかけてもらって、2年連続でガイドを務めました。まちなか寺子屋では考古学の分野で瓦を研究されている先生に講師をお願いしたのですが、まち歩きなごやでは、自らナビゲートする立場。座学ではなくツアー形式での実施ということで、難しさを感じることも。見どころの多いエリア選びから適切な距離のコース設計まで、いろいろと悩みました。調整に時間をかけた甲斐あって、予約枠がすべて埋まり、反響をいただけたのは嬉しかったですね。今後も、ガイドやコーディネーターとして新たな企画にチャレンジしてみたいです」

——やっとかめ文化祭に関わってきて、特に「良かった」と思うことは何ですか?

「自分の好きなことを、堂々と『好き』と言っていいんだと気づかされたこと。Instagramで瓦の写真だけを載せるアーカイブをつくっているのですが、はじめのうちはただの“蓄積”だったのが、最近では観察ポイントも添えるなど“発信”を意識するようになりましたね」

大使の活動が「好きなこと」「やりたいこと」のきっかけになった人たち

脇田さんに限らず、やっとかめ大使のみなさんは自分なりの活躍の場を見つけている様子。それぞれのアクションを、少しご紹介しましょう。

大使でカメラ係として活動したことを経て、広報用素材の撮影チームでも素敵な写真を撮ったり…

やっとかめ文化祭で初めて見た狂言に魅了され、和泉流 狂言共同社 鹿島俊裕先生の教室で狂言を習い始めたり…

はたまた、金春流 名古屋春栄会の金春穂高先生の教室で能を習い始めたり…

やっとかめ大使の活動に参加した理由も、楽しみ方も、興味・関心の広がりも、人それぞれ。伝統芸能への新たな入り口になることもあれば、まちとの接点が生まれるきっかけにもなることも。「やっとかめ文化祭」はみんなでつくる、まちの文化祭。いろんな人がいるからこそ、いろんな文化が育まれ、まちを元気にするエネルギーが湧き起こります。次の秋にはぜひ、その現場を目撃してください。

ちなみに、2022年にもやっとかめ大使の新規募集が行われる予定。“芸どころ名古屋”の底力を間近で感じられる絶好の機会です。今後の続報をお楽しみに!