箱根駅伝といえば5区の山上り!という方も少なくないはず。箱根駅伝のコースのなかでも随一の難所と呼ばれる5区は、往路順位が決まる重要な区間でありながら、寒い年は雪による転倒、温かい年は脱水症状がランナーを襲う、精神的にも環境的にも非常に過酷な区間です。しかし、小田原から箱根神社大鳥居を結び、豊かな自然と歴史情緒あふれるこのルートは、観光地としての見どころもたくさんあります!
5区スタートの地、小田原中継所。
5区のスタートとなる小田原中継所から北へ約200m、歩いて3分ほどの場所に箱根登山鉄道の「風祭駅」があります。普段は1日の乗降客数が1000人にも満たない小さな駅ですが、箱根駅伝があるお正月には、小田原中継所の最寄り駅ということで毎年多くの人で賑わいます。2008年に改修され、現在はかまぼこメーカーとして有名な“鈴廣”が運営する「鈴廣かまぼこの里」直結の駅になっています。
小田原名物のかまぼこは、漁獲量の多かった小田原の魚を保存利用するため、西日本で作られていたものを参考に作られたのが始まりなのだそう。そして交通が不便だった江戸時代、宿場町として栄えた箱根へ鮮魚を届けることが難しかったために、保存性の高いかまぼこが盛んに作られるようになりました。当時、箱根〜小田原間を通る参勤交代の大名にもその味を称賛されたことで味や技術が向上し、さらに発展していったといいます。
そんな歴史もあり、小田原といえば“かまぼこ”を思い浮かべる人も多いと思いますが、箱根駅伝の小田原中継所は「鈴廣かまぼこの里」の敷地内にあります。毎年、駅伝当日も営業しており、沿道に集まる観客たちとともに箱根駅伝を盛り上げます。今年(2021年)は新型コロナウイルス感染防止のため各中継所や沿道での観戦はできませんが、「いつか箱根駅伝を見に行きたい…!」と思っている人は、要チェックの場所です!
もちろん、箱根駅伝に関係なく観光で訪れるのもおすすめ。小田原かまぼこの直売をはじめ、かまぼこの歴史や製造方法を見学できたり、かまぼこやちくわの手づくり体験もできます。そのほかにも地元の食材を使った会席や割烹料理が楽しめる食事処や、地産地消のバイキングレストランもあり、小田原の魅力を存分に感じられるはずです。
箱根のシンボル、箱根神社大鳥居。
そんな小田原中継所から20km弱。ランナーたちは箱根のシンボル、箱根神社の大鳥居をくぐります。ひときわ大きく、そして神々しくどっしりと佇む朱い柱。選手たちがこの大鳥居をバックに往路のゴールへ向けて走る姿は、箱根駅伝のおなじみの風景でもあります。
突然ですが、ここでクイズです。箱根神社大鳥居は、正式には「箱根神社第一鳥居」といいます。箱根神社には、そんなふうに名前のついている鳥居が複数存在しています。全部でいくつあるか知っていますか?
正解は……なんと、6つです! 第一から第五までの鳥居と、「平和の鳥居」と呼ばれる鳥居の合計6つが存在しています。なかでも有名なのが、先ほど紹介した第一鳥居と平和の鳥居です。
平和の鳥居は、芦ノ湖の湖上にあります。湖にひっそりと浮かぶ鮮やかな鳥居は、とても幻想的。鳥居の朱色と水面の青色が生み出す美しいコントラストは、見た人の心を一瞬で奪ってしまいます。
ちなみに、箱根神社の第二から第五までの鳥居も周辺に点在しており、歩いて見て回ることができます。参拝とあわせて、ぜひ各鳥居も巡ってみては?
歴史ある、箱根の山のぼり。
箱根駅伝を見ていると、自分がランナーなら「5区だけは避けたい」と思ってしまいます。電車や車で箱根へ行くと、この5区の過酷さを実感しますよね。あの山を自分の足で登るだなんて気が遠くなります……。
しかし、かつては“雲助”と呼ばれる運送屋が宿場町として栄えた箱根まで荷物を届けたり、人を乗せた駕籠をかついで箱根の山を越えていたそうです。当然、当時は人力で登るしかありませんから、箱根の山を越えるには今よりも相当な苦労があったはずです。
ですが、そんなふうに簡単に山越えできなかったからこそ、箱根神社は古くから多くの人びとの信仰を集めましたし、小田原ではかまぼこが発展してきました。城下町や宿場町として栄えたこの5区は歴史も古く、観光地として楽しめるスポットが数多くある区間でもあります! 機会があればぜひ現地を訪れて、歴史ある小田原・箱根のまちや箱根駅伝の空気を感じてみてはいかがでしょうか。