車の運転中、あるいは街を歩いているとき、めずらしい名前の付いた歩道橋を見かけたことはないでしょうか。特に名古屋市内では、「ごまたまご歩道橋」や「Ⓜ三ヶ日みかん 千種歩道橋」といった“愛称付き”の歩道橋がよく目に留まります。なぜ、こんな変わった名前が掲げられているのでしょう…?
名古屋では歩道橋のネーミングライツ(命名権)が人気!
実はこれ、歩道橋の命名権を売る「歩道橋ネーミングライツパートナー事業」による、企業の広告の一種。ネーミングライツパートナーになると、歩道橋の桁部分に企業名や商品名を入れた名前を付けられるのです。
名古屋市では、2021年6月1日時点で102橋の歩道橋に愛称を標示。全国の自治体の中でも最多の契約数を誇ります。
冒頭で名前を挙げた「ごまたまご歩道橋」があるのは、名古屋市東区古出来。出来町通と名古屋環状線が交わる、古出来町交差点です。
関東の人なら、東京土産のお菓子を思い浮かべる名前かもしれません。しかし、名古屋で「ごまたまご」といえば、鶏卵のブランド名のこと。飼料にごまを使用して育てられた、栄養豊富な卵です。地元のスーパーでは定番商品として販売されています。
また、ラジオの時報CMでもおなじみ。「ごまたまごの中部飼料が●時をお知らせいたします」という時報を聴けば、アレか…!とピンとくる地元民も多いはず。
千種区千種にある「Ⓜ三ヶ日みかん 千種歩道橋」もなかなか印象に残るネーミング。静岡県浜松市の特産品「三ヶ日みかん」をPRする歩道橋です。また、南区道徳本町にも同じく、「Ⓜ三ヶ日みかん 豊田歩道橋」が存在します。
信号待ちで「なにこれ?」と思わず二度見 → 後から検索して調べたり、SNSに写真を載せたり…と広告効果は十分ありそうです。
東京でも大阪でもなく、なぜ名古屋が1位?
事業の主な目的は、(1)民間の資金を活用して道路施設の維持管理を行うこと、(2)企業等の地域貢献の場として活用してもらうこと。名古屋市では、月額25,000円以上(税抜)の支払い、契約期間3年以上などの条件を設けて募集をしています。
そもそもなぜ、関東・関西の都市を抑え、名古屋が歩道橋ネーミングライツの契約数1位となったのでしょうか。
名古屋市 緑政土木局 路政部 道路利活用課に理由を聞くと、「他の都市に比べて、名古屋は広い道路が多く、車移動を考慮した都市構造となっています。そのため、歩道橋での広告効果が高いと期待されるのではないでしょうか。また、地域貢献活動に対して積極的な企業・団体が多いことも要因だと考えています」との回答が。
トヨタのお膝元として知られる愛知県は、車の数も多いまち。県全体での「乗用車保有台数(※1)」は全国1位です。
さらには、横断歩道橋・地下横断歩道橋の数を表す「立体横断施設数(※2)」でも、愛知県は過去に1位だったとの記録があります。愛知・名古屋が“車社会”であることから、歩道橋の数も必然的に多くなったのかもしれませんね。
※1:2020年6月末時点で420万4454台/(一財)自動車検査登録情報協会HP「都道府県別・車種別保有台数」より
※2:2013年立体横断施設数より
まだある!名古屋に来たら“渡りたい”、ユニークな歩道橋
名古屋市内にあるユニークな愛称付きの歩道橋を、写真とともに紹介します!
レインボーブリッジといえば、東京・お台場の大きな橋が有名。某映画では「レインボーブリッジ封鎖できません!」という名セリフが生まれ、多くの人の記憶に残りました。そんなレインボーブリッジが、名古屋にも…!?
こちらは、北区田幡にある「東海カッター レインボーブリッジ田幡」。東志賀町線第3号にある大きな歩道橋です。コンクリート切断工事などを行う道路カッター工事業者、東海カッター興業株式会社が命名権を購入しています。
ここを歩けば、「レインボーブリッジを渡ってきた」と言っても嘘にはなりません!
続いては、大手予備校の横に架かる栄光への架け橋…!?千種区今池にある「河合塾千種ビクトリーブリッジ」。
河合塾は、名古屋市を本拠とする大手予備校です。特に、この歩道橋に直結している千種校は、名古屋の予備校の大定番。数々の地元民の、受験生時代の思い出が詰まった場所だと言えるでしょう。塾生たちは日々、勝利への橋を渡っていたというわけですね。
この他にも、医療・福祉法人、建設業、飲食店、大学など、ネーミングライツパートナーの業種は多種多様。市の事業として、今後もアピールに力を入れていくようです。
名古屋に来たら、少し上を見上げ、名前の付いた歩道橋を探しながら歩いてみては?