新たな生活が始まる春は、ワクワクと一緒に不安や緊張も伴うもの。うまく息抜きしたいから、お気に入りのカップを見つけておく、というのはいかがでしょう。お茶やコーヒーでちょっと一服するとき、リラックス効果を高めてくれるのでは?
匠の技が冴えるデザインとは?
安土桃山時代から受け継がれてきた伝統的な技術こそが可能にしたデザインとのことで、浅田漆器工芸の浅田明彦さんに詳しく教えてもらいました。
欅を薄くくり抜いた繊細なカップの厚さは、なんと1.5ミリ。陶器で同じ薄さであれば熱い飲み物を入れたら持てないところですが、木製のため熱を伝えにくく、飲み物の温度も保ちやすくなっています。
浅田さん:カップの内側は拭き漆という技術で仕上げています。木地師にルーツのある山中漆器らしい、木目を生かす漆の塗り方です。
伝統とトレンドの融合を目指して
浅田さん:それまでは従来の黒や朱の塗りしかなく、売り上げは低迷。そこで現代の暮らしに必要とされる、伝統的な技巧とトレンドを融合させた新たな商品が必要だと考えました。完成までは決して平坦な道のりではありませんでしたが、『全国伝統的工芸品公募展 経済産業省製造局長賞』や『OMOTENASHI Selection 欧米選定員賞』など高評価をいただき、そうした受賞が今回のドバイ万博にもつながりました。
山中漆器の伝統技術に現代のメタリック塗装を掛け合わせた「うつろいカップ」。スタイリッシュな新商品の発売とともに、初めてのプレスリリース配信やSNS運用などマーケティング戦略も一新し、従来品より3倍ほど販売数を増やしたそうです。
「漆器のイメージが変わった」「一目惚れした」など幅広い年齢層のお客様から次々に届く感想が何より嬉しいと浅田さん。伝統漆芸に新しい風を吹かせた「うつろいカップ」、新年度の慌ただしい暮らしにも彩りと元気をくれそうです。