山中の伝統漆器に新風。四季の移ろいがモチーフの気分も華やぐカップ

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2022.04.01

新たな生活が始まる春は、ワクワクと一緒に不安や緊張も伴うもの。うまく息抜きしたいから、お気に入りのカップを見つけておく、というのはいかがでしょう。お茶やコーヒーでちょっと一服するとき、リラックス効果を高めてくれるのでは?

石川県の四季をモチーフにした「うつろいカップ」

匠の技が冴えるデザインとは?

並べて置くだけでも、気分を上げてくれそうな浅田漆器工芸の「うつろいカップ」。石川県の移ろう季節と、新たな伝統の継承にちなんで“うつろい”と名付けられたカップは、精緻なフォルムと華やかなメタリック塗装が印象的。2022年3月に終幕したドバイ国際博覧会では、日本館によるVIP記念品のひとつに選ばれたという逸品です。

安土桃山時代から受け継がれてきた伝統的な技術こそが可能にしたデザインとのことで、浅田漆器工芸の浅田明彦さんに詳しく教えてもらいました。

浅田漆器工芸の四代目、浅田明彦さん。商品開発や広報、SNS運用を担う。

浅田さん:「木地の山中、塗りの輪島、蒔絵の金沢」と呼ばれるように、石川県の漆器は各産地の技術的な特徴を強みに発展してきました。私たち山中漆器はろくろ技術による木地づくりを得意としています。「うつろいカップ」には山中漆器ならではの縦木取り、薄挽きといった技術が生かされています。年輪に逆らわず縦に木地を取るので強度が高く、極限まで薄くくり抜きながら歪みが許されないデザインを実現しています。

「うつろいカップ」はS、M、Lと3サイズの展開。サイズ違いで揃えれば、マトリョーシカのように入れ子式に収納することができます。
欅を薄くくり抜いた繊細なカップの厚さは、なんと1.5ミリ。陶器で同じ薄さであれば熱い飲み物を入れたら持てないところですが、木製のため熱を伝えにくく、飲み物の温度も保ちやすくなっています。

浅田さん:カップの内側は拭き漆という技術で仕上げています。木地師にルーツのある山中漆器らしい、木目を生かす漆の塗り方です。

伝統とトレンドの融合を目指して

「うつろいカップ」の商品開発に着手したのは2017年。流行語大賞だった「インスタ映え」を意識し、2年ほど試行錯誤を繰り返した末にようやく完成したといいます。

浅田さん:それまでは従来の黒や朱の塗りしかなく、売り上げは低迷。そこで現代の暮らしに必要とされる、伝統的な技巧とトレンドを融合させた新たな商品が必要だと考えました。完成までは決して平坦な道のりではありませんでしたが、『全国伝統的工芸品公募展 経済産業省製造局長賞』や『OMOTENASHI Selection 欧米選定員賞』など高評価をいただき、そうした受賞が今回のドバイ万博にもつながりました。

山中漆器の伝統技術に現代のメタリック塗装を掛け合わせた「うつろいカップ」。スタイリッシュな新商品の発売とともに、初めてのプレスリリース配信やSNS運用などマーケティング戦略も一新し、従来品より3倍ほど販売数を増やしたそうです。
「漆器のイメージが変わった」「一目惚れした」など幅広い年齢層のお客様から次々に届く感想が何より嬉しいと浅田さん。伝統漆芸に新しい風を吹かせた「うつろいカップ」、新年度の慌ただしい暮らしにも彩りと元気をくれそうです。

コンパクトに収納できて軽量なのでアウトドアにも

うつろいカップ
容量:Sサイズ/約160ml、Mサイズ/約200ml、Lサイズ/約270ml
材質:欅、漆・ウレタン塗装
価格:5500円(税込)〜
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文/時津 木春