柚木沙弥郎の「染色作品」をはじめとした民藝品を展示する『柚木沙弥郎と仲間たち』を、9月6日(水)から9月25日(月)まで日本橋高島屋S.C.本館8階ホールにて開催。
展示概要
本展では、柚木の染色作品を中心に、ともに切磋琢磨してきた陶芸家の武内晴二郎(1921~1979)や舩木研兒(1927~2015)、柚木に熱意を込めて民藝の本義を伝えた工芸家・鈴木繁男(1914~2003)の作品をあわせ紹介します。また柚木の師である染色家・芹沢銈介(1895~1984)を中心に結成された染色家の団体「萌木会」に集った仲間たちも取り上げます。
彼らは、日本民藝館の創設者・柳宗悦(1889~1961)はじめ濱田庄司(1894~1978)や河井寬次郎(1890~1966)、バーナード・リーチ(1887~1979)、芹沢ら初期の民藝運動を推進した作家たちに影響を受け、民藝運動に参画し、制作に励んだ工芸作家たちです。「いつでも気持ちの中に今日の我々の生活をもっと健全で快適なものにしたい」という思いにあふれた柚木と仲間たちの作品は、見るものに日々生きる 喜びを与えてくれるでしょう。
柚木沙弥郎
柳宗悦の民藝の思想と芹沢銈介の型染カレンダーに出会い感銘を受け、染色家の道に進む。型染による染布、染絵などの作品を制作し、国内外で数多くの個展を開催。
絵本の仕事や立体作品、グラフィックの仕事にも取り組む。
女子美術大学名誉教授。
第1回宮沢賢治賞、2021毎日デザイン賞受賞。
展示構成
~第1章 出会いとはじまり~
そして、大原美術館の売店で目にした染色家・芹沢銈介の型染カレンダーに感銘を受け、染色に関心を持つようになりました。
潔真の紹介で初めて日本民藝館を訪れた柚木、民藝運動を担う次世代としてのあゆみの始まりです。
●ひびきあう仲間たち
柚木より5歳年下の陶芸家・舩木研兒も柚木と親交を深めたひとりです。舩木は島根県松江市の宍道湖のほとりにある布志名焼舩木窯の5代目として生まれ、伝統的な仕事を受け継ぎました。英国スリップウェアの技法にならいスポイトを使用して描いた動物文様がよく知られています。
また日本民藝館では、柳の唯一の内弟子であった工芸家の鈴木繁男との出会いがありました。柚木より少し年上の鈴木は、弟分のように柚木に目をかけ、柳の思想や民藝美について熱のこもった話を聞かせてくれたといいます。柚木が日本民藝館で「これ以上は望めない幸せなめぐり逢い」だったと語る三河万歳衣裳裂を初めて紹介したのも鈴木でした。
工藝への道を歩み始めたころに出会い、切磋琢磨しながらものを作る喜びを共有してきた柚木、武内、舩木、そして鈴木。作品を通して交わされる彼らの語り合いをお楽しみください。
武内晴二郎
復員後、倉敷市で作陶を開始。その仕事には、民藝運動を牽引した柳宗悦、河井 寬次郎、濱田庄司らの大きな影響がありました。1960年には柳の勧めと大原總一郎の援助を受け酒津堤に築窯。57歳で没するまで、型物を中心にスリップ(化粧土)や型押・象嵌・練上などの技法を用いて、重厚かつモダンな作品を生み出しています。
1967年にはイギリスにわたり、リーチ・ポタリーならびにリーチの長男デヴィットの 窯場で修業、国内外で個展を開催します。さまざまな作品のなかでも、英国スリップウェアにならったスポイト技法で動物文様を描いた仕事がよく知られています。
~第2章 生活を彩る色・かたち・もよう~
展覧会前に開かれる出品者を対象とした講評会でも繰り返し「使いたいと思われる布」、「生活に必要なものを」「使うことを第一の目的に」と述べているのが印象的です。この布をどう活用しよう、どんな洋服を作ろうか、などと想像するだけでも心躍る布。手にした人が味わう喜びと相まって、柚木の布の魅力は最大限に引き出されていきます。作品を用いる使い手たちもまた 柚木の「仲間」といえるかもしれません。
本章では、柚木の染色作品の中でも、特に生活に根差した作品群に注目し紹介します。柚木の服地を用い、家族が仕立て、実際に着用されていた服も特別に展示。また、柚木から日本民藝館に寄贈された 武内や舩木らの作品や、柚木家の食卓で実際に用いられている品々を特別展示します。柚木が民藝に魅了される契機となった武内家の食卓風景。そして柚木もまた「我が家の食卓に彼の食器の出ないことはない」というくらい武内の器を自らの食卓で愛用しました。長年使い込まれ愛され続けた実用の布、実用の器が、ものとの向き合い方を教えてくれるようです。
~第3章 ひろめる ひろげる -萌木会の活動~
メンバーには、三代澤本寿(1909〜2002)、小島悳次郎(1912〜1996)、立花長子(1913〜2007)、岡村吉右衛門(1916〜2002)、大橋豊久(1917〜1993)、長沼孝一(1922〜1985)、四本貴資(1926〜2007)、柚木沙弥郎、山内武志(1938〜)ら芹沢銈介の 弟子が参加しており、誰か一人が突出するのではなく、それぞれの染色の特徴を生かしつつ協働して仕事にあたりました。彼らの多くは国画会にも所属し、教職につくものも多く、当時の染色界で指導的役割を担っていました。中でも柚木は、1990年代に会が消滅するまで中核メンバーとして活動を続けました。柚木は、「40〜50歳の頃は 萌木会で頭がいっぱいだった」と当時を振り返ります。
萌木会の活動を通して染めの仕事をより広める「頒布」を意識するのと同様に、柚木の仕事の幅も徐々に広がっていきました。ガラス絵、絵本、本の装丁やポスターのデザインなど、形は変わっても普遍の魅力を宿しています。こうした仕事の広がりには、萌木会での「燃えに燃えた」精力的な仕事が、大きく影響を与えたと言えるでしょう。
本章では、萌木会メンバーとして活動した作家の中から、芹沢、三代澤、小島、岡村らの各作品を紹介するとともに、萌木会染紙見本、年賀状、 展示会の案内状などを展覧します。
開催概要
■会期:2023年9月6日(水)→ 9月25日(月)
■入場時間:10時30分~19時00分 (19時30分閉場)※最終日は17時30分まで(18時00分閉場)
■会場:日本橋高島屋S.C.本館8階ホール
■入場料 : 一般1,200円(1,000円)、大学高校生 1,000円(800円)、中学生以下無料
※( )内は前売り料金。前売り券はイープラス、ローソンチケット(Lコード 36593)、セブンチケット(セブンコード 100-413)にて9月5日(火)までお求めいただけます。
※当催しについては「障がい者手帳・デジタル障がい者手帳」をご提示いただいたご本人様、ならびに、ご同伴者1名様まで入場無料とさせていただきます。
■主催:NHK財団、日本民藝館
■協力:日本民藝協会
■出品作家:柚木沙弥郎(染色家)、武内晴二郎(陶芸家)、舩木研兒(陶芸家)、鈴木繁男(工芸家)、
芹沢銈介(染色家)、萌木会所属染色家(岡村吉右衛門、小島悳次郎、三代澤本寿、柚木沙弥郎ら)
■特設サイト:https://www.takashimaya.co.jp/store/special/yunokisamiro/index.html
【関連企画】
日本全国の民藝の品が髙島屋に集結する販売会を3年ぶりに開催します。
2023年9月6日(水)~18日(月・祝):13日間 日本橋高島屋S.C. 本館8階特設会場