列車移動をしながら仕事と観光を楽しむ「トレインワーケーション」は、売上が減少する鉄道業界の活路になるかもしれません。全国から30名程の参加者が集まっただけでなく、県内からの参加者が街づくりのために意欲的に参加者と交流を図るなど、一次的なイベントに留まらない新たなワーケーションの可能性を明示しました。今後全国の鉄道会社や自治体でも同様のイベント開催による売上創出に貢献すべく、千曲市ワーケーション体験会で行った実証実験の結果・ノウハウをオープンにしています。
今回が5回目の開催となる千曲市ワーケーションは、株式会社ふろしきや(所在地:長野県千曲市/代表:田村英彦 ※以下ふろしきや)と、千曲市、信州千曲観光局、長野県、しなの鉄道が提携をして実現に至りました。
働き方ニューノーマルの時代に新しい鉄道資源の活用を
2021年2月24日~26日、長野県の千曲市でワーケーション体験会が開催。1日目はしなの鉄道「ろくもん」を貸し切り、観光列車の持つ個性豊かな空間をワークスペースとして利用できるトレインワーケーションを実施しました。
県内外から30名程の参加者が集い、集中作業・個室を使ったウェブ会議・参加者同士のコミュニケーションを楽しむなど、列車から望む景色と美食を楽しみながら、それぞれのワーケーションを満喫。「移動自体が特別な体験になっているので、そこで仕事をするだけでリフレッシュを伴うワーケーションが実現できています」と参加者が言うように、働き方ニューノーマルの時代に鉄道資源の活用は新たな市場を生む可能性を秘めています。
多くの観光列車は、食事を提供するなどのために比較的大きなテーブルが備え付けられていることが多く、ワークスペースとして有効です。「ろくもん」は、「個室スペース」「カフェと展望スペース」「オープンスペース」など車内のデザインも多様で、働くスタイルに合わせてスペースを選ぶことも可能。ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)との親和性が高いことは、ほかの移動体によるワーケーション体験と比較しても観光列車の有利な点です。
低迷する鉄道業界の活路、観光列車によるワーケーションの可能性
全国各地で運行される観光列車では、それぞれが個性を持ち、地域色を反映した内装デザイン、地域文化との連携による車内・停車駅によるイベント、車内で提供される食事、大きな窓や車窓に対面する座席による眺望など、独自の取り組みを進められていますが、基本的に観光客向けの運行で週末・祝日を中心に運行。鉄道会社が投資して導入した貴重な資産の活用は半分程度となっています。
トレインワーケーションでは、こうした平日の遊休資産を活用することができ、鉄道会社の資産を有効活用することができます。列車という特性上、列車運行とともに車窓に沿線風景が流れ、トレインワーケーション参加者には、流れる風景で気分転換を提供し、また沿線の観光地との連携を図ることで休憩時間にあわせて沿線の特産品を提供することで、その地域の魅力を参加者にアピールすることも可能。今回のトレインワーケーションでは、戸倉駅を発車し、軽井沢を経由して豊野駅まで運行。豊野駅からは飯綱町・小布施の交流拠点を選択し来訪、夜には日本遺産「月の都千曲」にも認定された月と夜景で有名な姨捨をガイドしました。
2泊3日の体験会:2日目からは市内を巡る温泉MaaSワーケーションプログラム
初日のワーケーショントレインに続き、2日目はワーケーション中の移動の円滑化に注目。参加者で開発した「温泉MaaS」と題したオリジナルのタクシー配車システムを、地元のタクシー会社と協力して試行しました。千曲市内のワークスペースを選んでの自由行動は好評で、3日目は瞑想とワーケーションに対するアイデアソンも行いました。
参加者の声:ワーケーション参加を機に世田谷から移住する夫婦も
これまでに100名以上が参加した千曲市ワーケーション体験会。リピーターも多く関係人口の創出につながっています。これまで約90%の方が、5段階評価アンケートで「5」の満足度を示しています。
【参加者の声】
▼千曲市 70代 農家運営
あんず農家をやっており、参加者と交流をしたかったんです。列車の中で地酒を酌み交わしもらった若者からのアイディアは斬新でした。
▼渋谷区 30代 会社役員
自社サービスのペルソナとの交流で今まで気が付かなかった学びがあった。
▼調布市 40代 建築会社代表
列車から望む自然と共存する建築美をみて空間設計の参考になった。
▼千曲市 50代 女性
ゲストハウスを計画していて、どんな宿が欲しいか参加者に聞けてよかった。
千曲市ワーケーション参加を機に移住を決めた夫婦は、2021年3月に千曲市で仕事ができるカフェをオープン予定。「千曲市のあたたかい人々、自然や温泉、恵まれた資源の中でなら快適な時間をすごせると思い、夫婦で移住を決めました。街の魅力を知ってもらいながらゆっくり集中できる場所を提供したいと思い、今回『まちの書斎』のコンセプトでワークスペースとしても利用できるカフェをオープンします。」というように、プロジェクトの成果も出始めています。
次回「ワーケーション・ウェルカムデイズ」は、5/22(土)〜5/29(土)に開催決定
体験会を通じた出会いの連鎖は働き方だけではなく生き方さえも変えるインパクトを持つかもしれません。次回はワーケーション・ウェルカムデイズとして、千曲市を中心に昨今話題の「ゼロ・カーボン」といった社会的関心の高い話題や、地域の文化・暮らしの体感といった信州の資源を活用しながら学びを体感できるコンテンツを予定しています。5/22(土)~5/29(土)での開催も決定し、詳細は4月中旬に公開する予定です。